耽美公演『Black Rose ~聖なる闇の薔薇伝説~』 作:ストレンジ.
黒薔薇の国だからといって、なにも黒薔薇ばかりが咲いているとは限りません。ここ黒き薔薇の古城の庭園では、薔薇だけでも
そんな壮麗な花たちを受ける花器たる庭園を、花にも人にも心地の良いように維持するのは庭師の生涯の命題と言っても差し
この果てのない大仕事を一手に──いえ、両手いっぱいに請け負うのは黒薔薇の国随一の庭師、『ユミ』と『アイコ』の美少女ふたり組でした。
ユミとアイコ──はじめふたりは自然を愛で、花や風景にふれながらお散歩を楽しむだけのどこにでもいる美少女でしかありませんでしたが、そうやって毎日自然に触れていくことで、もともと強力な潜在能力を秘めていたふたりの魔力はみるみる力を増していき、やがて独特の成長を遂げることになりました。
まず花が大好きなユミは、いつしか花と意思の疎通が可能になりました。花の状態を他ならぬ花自身に直接教えてもらうことによって、成長や健康維持に必要なものや育成環境を迅速に整えられるようになりました。加えて彼女は魔界の植物とも仲が良く、有事の際には闇植物を召喚して魔物退治にあたることもできる優秀な魔術師でもありました。
いっぽうアイコは日課のお散歩daysの積み重ねによって
つまりふたりは特殊な才覚をもつ傑出した庭師であると同時に植物魔法のスペシャリストでもあり、それよりなによりとにもかくにも美少女であり、その美貌は魔法云々への評価を二の次にせざるを得ないほどでした。とはいえやはり優れた魔術師であることにも疑いようはありません。いやでもやっぱり美少女ってほうを推したいかな。『優れた魔術師』と『美少女』なら美少女のほうが断然、良いし。例えば、世界が崩壊するまさにそのとき。『優れた魔術師』と『美少女』、どちらに隣にいて欲しいか。『美少女』に決まっている。この問いは世界が滅ぶ前提で為されているから優れた魔術師がいても世界の終わりを回避することはできない。だったらとりあえず美少女にいてもらいたい。だってそのほうが心がポカポカすんもん。世界の終わりそっちのけで彼女(具体的にイメージしやすいよう、ここでは仮に藤本里奈ちゃんとしておきます)をあたたかく見つめる。幸福。もし彼女もこちらを同じだけのあたたかさをもって見つめてくれたなら──。そのとき、言葉はいらない。ふたりは空間を越えてふたつの熱い光の玉となってどこか知らないところを揺蕩うでしょう。つまり、世界が滅んだあともふたりは永遠となる。ゆえに美少女一択。しかし本題に戻ると彼女たちは優れた魔術師でもあり美少女でもあるわけで、She's a ハイブリット・ヒューマン。それはそれは凄まじい訴求力を放つ存在なのです。Flowery最高!
そんなふたりを『常に前かがみの詩人』が知らぬはずはありませんでした。ある日ふたりの圧倒的美少女ぶりにいてもたってもいられなくなった詩人は悶々としながらも前かがみの姿勢のまま時速3.6ノットの速度を維持した足取りで帰宅。鬼のような勢いでポエムを書きなぐり、翌朝、彼女たちからインスピレーションを受けた詩集『やすらぎとやさしさのシフォンケーキ、雲の上でふんわり華やぐミルクセーキを添えて』を電撃発表。3週間後には刊行され『このポエムがすごい!』ランキング13位を記録して、詩人は食洗機とキャベツ太郎を買いました。
しかし詩人にそれほどの狂気を与えたユミ・アイコのふたりでも黒薔薇城の庭園を造りあげるまでの道のりは決して容易なものではありませんでした。自然というのは常に人間の予測・思惑を越えるものです。それは花や大地の声を聴ける力をもつふたりの前でも等しくそうでありました。嵐が起こり豪雨が降り、冷害があれば酷暑もあり……庭師の日常にはさまざまの試練がなにげなく襲いかかってきます。ですが彼女たちはどんなときも花や大地を、つまり自然を、そして互いを、
『藍子ちゃんと夕美ちゃんの緊密なコミュニケーション』
──この言葉だけは忘れず持ち帰ってください。先生からみんなへの宿題……いや、祝福です……。
さて、そうした日々の積み重ねが彼女たち間を取り持てば、当然そこにはひときわ熱く
*
『藍子ちゃんと夕美ちゃんの緊密なコミュニケーション』
「藍子ちゃん……いくよ?」
「…………はい」
庭師の職務に就いてから一緒に住んでいる、やや広めの丸太小屋。月の隠れる曇り空の未明の下、恋を知ったばかりのふたりはその唇を恐る恐る相手の唇にはじめて重ねました。緊張で震えた湿り気のある桃色の唇から、吐息とともにお互いへの愛がこぼれていきます。
「ぁ、藍子ちゃん……も、もっと、強くしても…………いい、かな?」
「…………ん。いい…………じゃなくて……」
「え…………?」
「……そう、して……。強くしてくれなきゃ……イヤ……」
「…………ッッ!」
依然空は分厚い雲に覆われ、月はふたりの蜜月を知るよしもありません。ユミは欲望に突き動かされるがまま、ぎこちないながらも舌をそっと伸ばしアイコの舌に絡めます。アイコも一瞬、反射的な抵抗を感じつつも、やがて自らの意志で積極的に絡めていきます。そっと、でもやがて、強く、強く……。
「藍子ちゃん…………いいよね?」
「うん…………私たち、イケナイ女の子になっちゃうんだね……」
「……ごめんね。でも、もう……我慢なんて、できない」
「……私だって同じだよ。……夕美ちゃんとなら、イケナイ女の子になっちゃっても……いい。ううん、なりたい…………です」
「藍子ちゃんっ……!!」
ふたりの欲望は、いよいよ自制の利かない禁断の高みにまで昇りつめてゆきます。ユミは自分に吸いつくように重なった汗ばむアイコの──愛する人の身体がこんなにも熱いことをはじめて知りました。もちろん、それはアイコも同じでした。
──このような深き
眠らぬ草木のささめきを聞いたか
若草の蔦絡め、百合の花弁に夜露の垂れるを見たか
陽だまりに浴し
このような深き闇夜に……
(『やすらぎとやさしさのシフォンケーキ、雲の上でふんわり華やぐミルクセーキを添えて』所収「
生温い春の嵐の一夜が明け、手折られぬ絆を互いの体温から探し求め見つけ合ったユミとアイコ。心が通いあってしまえばあとは一直線。それからというもの、ふたりは互いの体温のあたたかさを、みずみずしい肌の柔らかさを、ある日はアイコから、またある日はユミから、それはもう毎日のように求め、貪り、ありとあらゆる快感の樹海をふたりきりで幾度も幾度も
*
そんな愛ある日々を重ねた彼女たちから放たれる強大な尊みオーラを、“女の子どうしの恋をサイリウム振って全力で応援したい勢”、通称『
暗号の完成は一夜にしてならず。マッチ棒で大聖堂を建てるような至難の試みでした。暗号製作班の誰もが、『マリみて』の乙女たちが繰り広げるハチャメチャ・パニックdays & 胸キュン・はにかみdaysによる愉快さ、尊さ、リリカルさ、『大技林』の脱衣麻雀ゲームの裏ワザ紹介欄に掲載されている脱衣シーンのエッチさ(ただし乳首は『☆』になる)の虜になってしまい、作業は遅々として進みませんでした。
「このままじゃダメだ! みんな、もっと集中しよう!」
あまりにも気だるい空気の漂う現場に、暗号製作班リーダー『一万円札の福沢諭吉とにらめっこしていつも必ず負ける男』の激が飛びます。これを契機に心機一転した製作班は、飲み干したエナジードリンクに水道水を入れたものをグビグビ飲みながら作業に励みました。
そのような労働環境の劣悪さにもめげず暗号を完成させた彼らの軌跡はDVD『スパルタンX 冒険者たち ~常識という名の魔物を疑え カレーライスに熱湯入れてかき混ぜてもカレーメシにはならないことに気づいた男たち~』の特典映像に6分ほどのダイジェストとしてまとめられて収録されているので、あの感動の物語をご家庭で何度でも楽しむことができます。興味のある方は全国のCD・DVD販売店にて『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 14 情熱ファンファンファーレ』をお求めになってはいかがでしょうか。楽しいとき、辛いとき、落ち込んだとき、どんなときでも聴けば心が癒されて、前向きになって、燃え上がる。まさに
カップリング曲には、サイキックエスパー美少女アイドル・堀裕子ちゃんによる2ndソロ曲『サイキック!ぱーりーないと☆』と、高垣楓さん、川島瑞樹さん、松永涼ちゃん、速水奏ちゃん、新田美波ちゃんたちによるGONINヴァージョンの『Nocturne』を収録。パッションをメインにしつつクール成分もしっかりin、そしてアイドルは誰もが
『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 14 情熱ファンファンファーレ』は、チューニ大陸全土で3005兆2枚を売り上げ、世界遺産に登録されました。
*
「高森藍子ちゃんと相葉夕美ちゃん……いいね……尊い」
吉報を感知した、神々の住まう超次元空間『輝け! 僕らの廃墟』のなかに存在する彼の支配領域『セゾン・谷間の百合』の四畳半で手作りママレードジャムを煮詰めていた秀吉の心の
Floweryのふたりに、よく晴れた日の丘の上で恋する人に想いを寄せながら春風に髪をなびかせのんびり野良猫と散歩をしている少女を見たときのような気持ちにさせられた秀吉はその尊みのお礼として、かなり神ってる永続性の魔法をふたりにかけ、
*
そのような愛と祝福に満ちた庭園で、今日もランコ姫は48色のクーピーを駆使して思いつくがままスケッチブックに絵を描いておりました。なんの変哲もない、いつもの一日。
「おはようございます、姫様。今日はなにを描いていらっしゃるんですか?」
うえきちゃんに水やりを終えたばかりのユミとアイコがランコ姫に話しかけました。うえきちゃんは現在の生育状態の良し悪しが一切見た目に出ない特殊な植物なのですが、ユミの能力と観察眼をもってすれば気難しいうえきちゃんの世話もなんのその。ただし時折いたずらに飛ばす花粉には注意しましょう。
「ユミ、アイコ、煩わしい太陽ね。我が
†(ユミちゃん、アイコちゃん、おはよう! 今日もとってもいいお天気ですね。あそこで眠っている黒猫さんを描いてるんです! あと少しで終わるからちょっと静かにお願いしますね)†
驚かせてしまったでしょうか? 実はランコ姫はこのように平静から呪文の詠唱文のような文言を用いて話す癖があるのです。町の者たちはこれを「偉大なる魔術師になる器を持つことの証左」として姫を崇め奉り、女王ルミに内緒で城下町すべてのお店で使うことのできるギフトカードをプレゼントしたりお年玉をたくさんあげたりしていましたが、実際のところランコ姫は、「そのほうがカッコいいもん」という理由でこのような言葉づかいを好んでしていただけなのでした。しかし闇の女王の一族だけあって大いなる魔力をその身に宿しているのは事実ではあります。こないだもランコ姫はギフトカードを使い、クーピーのビリジアンだけを56本大人買いしてホクホク顔で城下町を歩いていました。姫様のあどけない美少女ホクホクスマイルを見た住民たちもホクホクが止まりませんでした。それらすべてを神のゾーンで見守っていた秀吉も悶絶しながらホクホクでした。その日作ったラズベリーパイのソースはほんの少し焦げててその香ばしさがいいアクセントになっていたそうな。
「あっ、本当。黒猫さんが気持ちよさそうにお昼寝していますね~」
少々ボリュームを絞った声で言ったアイコの目の先にあるシロツメクサの花壇の目の前に、ランコの言ったとおり体を丸めて可愛らしげに眠る一匹の黒猫がいました。
あたたかな日差し、日光で輝かしく彩られる木々の葉、風に吹かれて踊り香る花々、黒猫、美少女たち、うえきちゃん──黒薔薇城の庭園の、あまりにも穏やかでいとおしい時間がゆるやかに流れていきます。
ですがそこに、カツカツカツ──と、小気味の良いテンポではっきりと鳴り響く
「ごきげんよう姫様。アイコにユミも」
「あっ……」
凛としたアイの
「……あの猫を描いておられたのですか。申し訳ありません。ですが、今日は姫様に大事なお話があるのです……スケッチブックを閉じて聴いていただけますか」
ふわりとした場の空気を声ひとつでキュッ、と引き締めると、アイはランコのほんの少しだけひきつった顔を見つめました。
その目は優しく、頼もしい。いつもどおりの、タレ目が柔らかい印象を与えるアイの瞳。そのはずなのに──
「……いいわ。話して」
ランコは、今だけはアイの瞳に大いなるなにかが動きだすようなものを感じ取って、閉じたスケッチブックを抱える手にちょっぴり力が込もってしまうのでした。
──ざわめき立つ美少女たちの胸の内など知るよしもなく、少し離れたところでその光景を眺めていた黒猫があくびをしました。そこまで含めた光景を、うえきちゃんはただ見ていました。動けないから。動かないから。植木だから。
それらすべてやその他すべても含めた世界の光景を、尊み秀吉も焼き上がったカスタードクリーム入りメロンパンをお皿に盛りつけながら静かに見守っていました。