十二月八日。
日本報道社―――日本におけるテレビ報道の要たる公共放送団体である。
そこへある学生が招待されていた。
「河森クン、君がバディで聞いた…近い内に決戦がある、って情報は嘘じゃないんだな?」
「はい、このケースが証拠です」
「バディとティアマトの決戦を報道して欲しいと俺が直々に頼まれました。このライドツールを使えばどの様な危険があっても生還し事実を伝えられると」
「”信頼の青年”の功績あっての事だな……そうだな、その情報も装備もこっちで買い取って取材したいトコだったが」
報道部長が大きな溜息をつく。そうした妬みを言われるのを承知で河森も来ていた為、何も言わずに神妙な面持ちを浮かべた。が、一転して報道部長は笑みを浮かべた。
「コイツはバディから君に託された仕事だ。日本トップのマスコミの意地に賭けて君の報道を応援する。頑張れよ、”ライダー番記者”」
あれから程無くしてティアマトラフムが復活し、人類の威信を賭けた戦いが始まった。
事態を理解していた河森はバディより貸与されたライドツール、即ちアイアスを用いて決戦の場へと立ったのだった。
「…俺が、この戦いを…仮面ライダーの勝利を、日本どころか世界に伝えてやる」
河森の報道根性によって世界中のネットワークで共有された映像は、多くの人々の目に映り、仮面ライダーインテグラ誕生の瞬間を映像と言う形で残したのだった。
そしてその映像から伝わるライダーの勇気は、多くの人々の心を動かし、同時に不安も与えていた。
緊迫する戦いの中、不安を隠せずにいた人々は神に祈った。ライダーの勝利を、人類の明日を。
「―――聴いたか愚神共よ、人々の願いを」
「…あぁ、確かに聴いた、それにインテグラと言う未知の存在も思い知らされた…我々は人類の強さを認めよう。だが、今の我々は行動の祖たる天命の書板を失い、どうすれば良いか…」
「ハ、やはり貴様らは騒々しくて愚かな阿呆共だな…どれ、最初に天命に背いた原初の愚神が手本を見せてやる」
人々の誇りが、祈りが、巡り巡って
――
人類全てを殺害し、神の稚児であるラフムへの進化を強制する敵、ティアマト。
周囲の建造物にも匹敵する巨大さを持った彼に立ちはだかるは、最強の戦士。
―――仮面ライダーインテグラ。
「……」
今まで天命の書板から得た情報で未来を予測していたティアマトが、自らの知り得ない存在と相対し、絶句する。
輝くマントをはためかせ、インテグラが歩き出す。
その勇壮なる姿は、見る者全ての心を惹き付けた。
「…仮面ライダーインテグラ、だと? 確かにそれは僕らの知る未来には存在しなかった。だが! 天命の書板はティアマトの勝利を明示していた…君がどう足掻こうと結果は既に決まっているのだ!!」
動揺しながらも、先に手を打ったのはティアマトであった。
自らの体を液状化させ、全質量をインテグラに加え、そのまま体内へ吸収する。
(このまま窒息死させてしまえば―――いや、待て…待て!)
異変が起きたのはティアマトの攻撃からすぐの事だった。
インテグラが消えている。先程確かに体全体で包囲した筈のインテグラが、いないのだ。
体内でインテグラがドライバーのトリガーを何度か引いていたのを見たが、その影響なのだろうか。
「インテグラ……一体何処に」
「あなたの後ろだ」
背後からの声にティアマトが振り向くと、インテグラがその拳を見舞う。
…が、ティアマトには全く効いていなかった。
「何だ、この威力…ヒトと何ら変わらないだと?」
あまりの弱さにむしろ驚いたティアマトだったが、インテグラは焦る事無く首を縦に振った。
「試してみたけどやっぱりだ、仮面ライダーインテグラとなった僕は身体能力が常人レベルになっているんだ。つまりインテグラとしての能力を使わなければ基本人と変わらない」
「何? …ふざけているのか!」
自分を舐めているとしか思えないインテグラの様子にティアマトは憤慨し、その体を締め上げた。
「君の身体が人と相違無いと言うのならば、このまま全身の骨をへし折る!!」
窮地に立たされたインテグラだったが、彼はインテグラドライバーのトリガーを引くと、インテグラの性質を能動的に発生させる。
《Elemental Power・Active》
「バーン!」
インテグラの叫びに呼応し、ドライバーを中心に彼の全身が燃え上がる。その熱によってティアマトの体が蒸発し、無事インテグラが脱出する。
「くっ!」
と、今度はティアマトが両腕でインテグラを挟み込む。その衝撃でインテグラは腕を粉砕される。
「ぐわああああッ!!」
「仮面ライダーインテグラだと? そのトリガーを引く事でしか力を使えなくなった君は逆に弱くなっている! 腕を粉砕してしまえばもう力は使えまい!」
両腕が使えなくなったインテグラを前に、ティアマトは今までの戸惑いを振り切る様に止めを刺しに前進する。
「戦士としての見てくれに拘った結果自らの首を絞めようとは……ここで死ね、霧島楓ッ!!」
《Elemental Power・Active》
「アイアス!」
その刹那、ティアマトの攻撃が巨大な盾によって守られた。
先程の音声は、腕を破壊し使えなくなった筈のインテグラドライバーの物だった。
砕けて消滅した巨盾の先で待ち構えていたインテグラの両腕は、既に再生されていた。
「なっ…まさかそのベルトを介さずとも力を扱えるのか…?」
「いや、今の僕にそう言う神秘的な力は残っていない。ただ、あなたの体内にいた時少し仕込んどいたんだ」
”
「ティアマト、あなたはさっき僕の姿を見てくれに拘ったと言った…それは正しい。この姿は僕の想い全部を統合させて生まれたから……でも、それだけじゃない。人として、仮面ライダーとして僕は戦う事を決めたんだ」
ティアマトの乱雑な攻撃をかわすと、自らの誓いを叫ぶ。
「ラフムなんて過ぎた力が無くても人々が幸せに生きられると証明する為に! 僕はインテグラの力を全部このベルトに託した! 僕は人として、神の力を使う最後の変身としたんだ!!」
「綺麗事を! 現に神たるインテグララフムの力を以てして私と対峙する君が人であろうとするなど!!」
ティアマトの腕が何本にも増え、それぞれの腕がインテグラ目掛けて連撃を放つ。
インテグラは攻撃によって体が傷付く度修復されるが、その痛みは残る。
「ぐぅううっ!!」
「結局神の力に頼らなければ人類は存亡し得ないのだ! だから私が叶えて見せる!」
「バカ言うなッ! まるで人類代表みたいな事言って、自分の中だけで決めた結論で…人の可能性を縛り付けるなーーーーーーーッ!!!」
インテグラの叫びも虚しく、ティアマトの攻撃に耐え切れなくなっていく。そして最後の一撃が、目の前に迫る。
「これで終わりだ…仮面ライダー」
ティアマトが腕を鋭利な槍状に尖らせ、インテグラの体を貫く。
―――筈だった。
「大丈夫か、楓…やれやれ、人類とは本当に弱く、面倒も見切れん。が、今回ばかりは手を貸してやろう」
「……淡路島さん!?」
インテグラの前に立ち、ティアマトの攻撃を凌ぎ切ったその姿はまさしく淡路島勇魚であった。
が、どうも様子が違う。
「今は勇魚ではなく―――」
形状を変化させていたティアマトの腕を弾き飛ばし、その水飛沫と共に勇魚の姿をした彼は振り向いた。
「”アプスラフム”だッ!!」