仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#8 敏捷

 仮面ライダー・ロックフォーム。

 それが楓の新たな姿。強靭な体を持つラフムに対抗する術。

 

「おお…! これがライダーの新しい力!」

 

 楓が感嘆しているところで、またもやタックルラフムが突進攻撃を仕掛ける。が、そのまま楓はタックルを受け止める。

 先程とは打って変わってラフムの重圧に耐え切れず吹き飛ばされる訳も無く、摩擦で地面を抉りながら敵の動きを止めた。

 

「―――――ッ!!」

 

 ライダー・ロックフォームによって動きを封じられたラフムが怒りの雄叫びを上げる。

 

「全く、深夜にそんな大声を上げやがって…」

 

そう楓は呟きながらタックルラフムを投げ飛ばし、ブートトリガーの引き金を二回引く。

 

《Rock・Crash》

 

 その電子音声と共にライダー・ロックフォームの腕を肥大化する様に展開するとその腕を振り下ろして反動によって空中に跳ぶ。そして、先程の攻撃で宙に舞い上がっていラフムの直上を望む。

 

「いけぇぇぇえ!!」

 

 真下で浮かび続けるタックルラフムを”睨んで”、その大きな拳をラフムに叩き付けた。

 その力と、重力が加えられてタックルラフムは地面へと落下、爆散した。

 そして爆散した炎と煙は細かな粒子となって収束し、消える。

 抉られた地面にはタックルラフムになっていたと思われる女性と”タックル”のイートリッジが転がっている。

 

「藤村さん、救護班を。戦闘が終了しました」

 

 変身を解除した楓がインカムを使用して伝える。と、藤村から待って、と返事が届く。

 

「東京都小金井市、小金井公園付近の民家にシソーラスラフムが出現したわ。今すぐ向かって!」

「”シソーラス”?」

 

 効き慣れない単語に楓は首を傾げながら藤村に問う。

 

「シソーラス、チョウバエね。昆虫の。その名の通り今度のラフムは素早い機動力でこちらを翻弄しているわ。民家が襲われているわ、急いで」

 

 緊迫した声色で要請する藤村に了解、と一言告げて楓らは小金井市へ急行する。

 一方で楓は民家が襲われているとの情報に自分の過去と照らし合わせた。

 

「僕も前、ラフムに家を襲われて…皆を失いました」

 

 藤村との通信の最中、ふと楓が口漏らす。最初はえ?と聞き返した藤村だったが、咄嗟にええ、と答えた。

 

「あ、その、何か伝えたい訳じゃありませんがただ、僕と同じ思いをする人はいて欲しくないなってだけです」

 

 楓が素っ気無く言うとライドサイクロンのスピードを上げる。

 

「バイクなら早いです、急ぎましょう!」

 

――

 

 一方その頃民家では―――。

 

「ひ、ひぃぃいぃ!!」

 

 機動隊を蹂躙し、ドアをこじ開けて侵入してきた怪物(ラフム)に、民家に住む家族らはただ怯える事しか出来なかった。

 母親と父親は幼い子供の顔を抑え、被さる様に子供を守る。

 

「お願いです、この子だけは…!」

「頼む…頼むから……」

 

涙を飲んでそう呟く父母を見て月光を浴びた虹色の光沢を輝かせる怪物、シソーラスラフムはシャシャッ、と不気味な笑みを浮かべて笑う。

 

「子供を助けようなんて涙モンだねぇ~~~。俺の趣味だぜそう言うの、いつまで”ダイジナヒト”を守ってられるか勝負をするのが大好きなんだよ、俺さぁ」

 

 自らの悪趣味を露呈させたところでシソーラスラフムは自身の腕から生える体毛を針の様に尖らせ、父親の足を刺す。

 

「うっ、ぐぁぁぁあああッ!!」

「良い叫びだ、涙モンだねぇ~~~」

 

 もういっちょ!とシソーラスが高ぶった声色で言うと再び鋭利な体毛を家族らへ向ける。

 

「そこまでだ!」

 

 その声に気付きシソーラスが体を玄関の方向へ向けると、そこには楓が立っていた。

 

「ラフム…また家族を、誰かの幸せを奪うのか……」

「なんだ、テメェ?」

「仮面ライダー。人の幸せを守る者だ!!」

「…邪魔するならお前から殺すぜぇ~~~?」

 

 シソーラスが楓目掛けて飛翔する。と、楓はそれをしゃがんで回避する。

 勢い余ったシソーラスは玄関を破壊してそのまま外へ出る。

 

「好都合だぜ…(やっこ)さんよぉ!」

 

 上空に舞い上がるシソーラスを捉えると、手に持っていたライドツールのアタッシュを開き、中のライドツールを次々と装着していく。

 

《Account・Winning》

 

 ウイニングイ―トリッジのスイッチを押す。

 

《Winning》

 

 イ―トリッジをロインクロスにセットし、ブートトリガーを装填し、引き金を引く。

 

「変身!!」

 

《Change・Winning》

 

 その叫びと共に、光の粒子が楓を包むアーマーとなり、そこへ強化装甲が装着されていく。

 強化装甲のマスク部分が装着された瞬間に主眼となる部分、センシングアイと額部に設置された視覚増強センサー、ブーストアイが発光する。その紅い輝きが、ラフムを捉える。

 

「はは~ん、お前が音に聞こえし仮面ライダー。成程、面白くなってきた」

「こっちは何も面白くない! お前らラフムのせいで僕は大切なモノを奪われた! 父さんも、母さんも、勇太郎も! 全て!!」

 

 楓は怒りに任せてブートトリガーを装着したバレットナックルで空中のシソーラスを射撃する。が、その弾丸はすべて回避される。

 

「ダッセー! おめーの攻撃なんざ当たんねーよ! バーカ」

 

 不快な羽音を立てながらシソーラスが煽り立てる。

 

「うるせぇぇぇぇぇ!!」

 

 楓が咆哮しながらバレットナックルを乱射する。

 

「だから…効かないっつってんだろうがよォ!」

 

 再び弾丸を回避したシソーラスがウイニングに向かって飛来する。

 ―――その時だった。ウイニングに藤村からの連絡が届いた。

 

「霧島君、民間人の救出が完了したわ! 時間稼ぎは必要無いわ、好きにやっちゃって!!」

 

それを聞くと、ウイニングはフフ、と不敵な笑みを浮かべてシソーラスの前に立ち塞がる。

 

《Winning・Attack》

 

 ウイニングがブートトリガーを一回押した事によって電子音声と共に肉体強化が発動、目の前に飛んで来たシソーラスを全力で叩き落とす。

 

「ふごッ!?」

 

 地面にめり込んだシソーラスを見てウイニングが吐き捨てる。

 

「手加減しないとこれか。まるで飛んで火に入る夏の虫……終わりだ」

 

《Winning…Impact!!》

 

 ブートトリガーを三回押す事によって発動する、ウイニングの必殺技。アーマーの全体から緑の粒子と共に風が放出され、空中へ浮かぶと、体を回転させ、足をシソーラスへ向ける。

 そして、体の上部からブースターの様に風が噴出し、思い切り勢いを付けながらシソーラス目掛けて飛んでいく。その加速を受けたキックによってシソーラス諸共周囲の地域が爆風によって破砕される。

 

「シソーラスラフム、撃破。戦闘終了しました」

 

 爆炎の中からシソーラスイ―トリッジと、ラフムに変貌していた人物を回収して出て来たウイニングが呟く。

 

――

 

 翌朝。二体のラフムを倒し終わったバディの指令室では、今回の戦闘で殉職した三名の黙祷が行われていた。

 黙祷を終えると、バディ長官の長良衡一がマイクを手にして、職員らに宣言する。

 

「―――ラフムによってまた、犠牲者が増えた。その事に対して皆は遺憾に思うだろう……」

 

 そう言うと、多数の職員が頷いたり、返事を返す。

 

「だが、私は違う」

「私は、残念だとか悔しいなどとは思いたくない。私は…私達は失った命の思いを受けて多くの命を助けていくんだ!」

 

 長官はここまで言うとマイクを下げる。が、再びマイクを口元に近付け、宣言を再会する。

 

「あの怪物らを打破する為に、我々バディは、本日より極秘の、では無く正式に、政府直属の防衛組織として活動する!」

 

 長官の宣言で場が一気にざわつく。

 

「これによって国家による直接的支援、海外からの技術派遣、そして私達が守るべき人々からの信頼が確かなものになる……皆、どうかこれからのバディに、力を貸してくれ!」

 

 長官が述べ終わると、一斉に拍手が上がる。

 すると、長官の後ろから老年の男性がやってきて長官に会釈をする。

 それを見た長官は深々と礼をして、老年の男性にマイクを手渡す。

 老年の男性は咳払いを軽く済ませると、話は聞いてくれましたね、と始めた。

 

「今長良長官が言った様に、これからバディは国家に直属するものとなります。そして私がその国家の長、内閣総理大臣、清瀬です。君達が日夜戦う異形成体ラフム、その恐ろしさは私も知らぬ所ではありません。国民の命の為、皆の安寧の為、我々に出来る事は限られていますが、バディへの支援は惜しむ事無くさせて頂きます」

 

 そして総理は職員らへ礼をする。と直後に拍手が起こる。

 

「…成程。見た? 霧島君。これよりバディは国からの支援を可能な限り受けられるって訳よ」

 

 バディ施設の最下部。ラフムとなった人間が収容されている場所。

 そこにある管理室でモニターから先程の映像を見ていた藤村がコーヒーをすすりながら楓に説明する。一方の楓は俯きながらはい、と答える。

 

「それは良いんですが、重要なのはそれによって今までよりラフムに対抗出来るかどうかです」

「勿論そうよね。そうでなくっちゃ、だわ。皆そう思ってる」

 

 再び楓ははい、とだけ答えると、別のモニターに顔を向ける。そこには、ロックラフムに変身していた男が取り調べを受けている様が映っていた。

 

「……勇太郎、父さん、母さん」

 

 楓は非常に深刻な面持ちでモニターを凝視していた。

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