仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#16 写真

「ねー河森君、こないだの怪物の動画見た?」

 

 楓らが通う大学の写真サークル。河森と呼ばれた青年、後にライダーとラフムの戦いに巻き込まれる彼は、自らの愛用している一眼レフカメラを手入れながら呼ばれた方を向く。

 彼を呼んだのは同じく写真サークルの同輩である少々派手な出で立ちの女性、境であった。

 

「ああ、あれか。俺も見たぞ」

「すごかったよねぇ、例のヒーロー。あたしもあのヒーロー撮ってみたいわ~」

 

 境があの時のヒーロー、巷で言われる仮面ライダーの姿を思い出して恍惚する。それを見た河森はばつが悪そうに肩をすくめる。

 

「何よ、ヒーローに憧れちゃ駄目っての?」

 

 勝気な性格の境は、気に触れるといつも高圧的な態度を見せる。それが災いして写真サークルには境と河森しか残っていない。かく言う河森も彼女の態度に不満は募るが、彼女の写真への愛は本物だ。河森も写真に対する情熱は彼女に引けを取らない。故に河森らはたった二人でサークルを運営しているのだ。

 

「それより境。今日はウチの大学で総理の会見が開かれるんだってな」

「ホント!?」

 

 境が食い付く。彼女はまごう事無くミーハーである。無論、河森もミーハーだ。二人はその情報に嬉々としながら講堂に向かう。

 

 二人が講堂に着く頃には辺りは多くの報道陣で込み合い、中の様子さえ見えない。

 

「これじゃ総理の姿が分かんないじゃない! 取材も撮影もあったモンじゃ無いわよ!」

「しょうがない。声だけ録音してくか」

 

 肩を落とし落胆する二人だったが、取り敢えず様子だけ伺う事にした。しばらく総理の話をマイクで録音する。と、慌ただしく叫ぶ青年の声が聞こえて来た。

 

「みんなー! 今すぐ逃げろーッ!」

 

 逃げろ? 姿の見えない彼の言っている事が分からない。が、政府の人間であろう黒服の男女達がそこにいる人々を安全な場所へ誘導し始めている。河森らも人の流れに飲まれてしまう。

 

「あっ、ちょっと、撮影が! 特ダネの予感がするのに!」

「境、何だか分かんねえけど逃げなきゃ」

「河森君は写真サークルとしての意地が無いの!?」

 

 境のその言葉に河森は心を打たれた。そうだ。自分達にも矜持がある。だが、境を巻き込む訳にもいかない。河森は腹をくくってよし、と呟く。

 

「俺が撮ってくるから境は逃げてくれ!」

 

 そう言うと境は少し不安そうな顔をするが、覚悟を決めた表情の河森を見て首を縦に振ると、人混みに入って避難する。

 

 

 河森はやっと空いた講堂の席に隠れて事の始終を撮影する。

 彼の握り締めるカメラのレンズに写っているのは、怪物と相対する青年二人。

 

(あれは教育学部の火島勇太郎…!? と、誰だ?)

 

 片方の青年はともかく、大学の有名人である勇太郎が怪物と戦っている。しかも、彼の目の前で、怪物に変貌したのだ。もう一方の青年も体に緑の鎧を纏う。

 

「こいつは大スクープだぞ」

 

 小声で呟きながらカメラをさらに回していく。

 が、その戦いが激化するにつれ、こちらにも衝撃波や瓦礫が飛んで来る。それにも構わず撮影していた河森だったが、目の前に瓦礫が飛来して来た。

 思わず退いた河森だったが、それが仇となって物音を立ててしまった。

 気付いて物陰に隠れたが時既に遅し。怪物に目を付けられた。

 青年らの抵抗も虚しく、二体いた怪物の内一体が目にも止まらぬ速さでこちらへ向かって来る。

 

「うわあああああ!!」

 

――

 

「まずいッ! 民間人が!!」

 

 勇太郎が叫ぶも惜しく、ジェミニBはカメラを持った青年に飛びかかる。

 楓と勇太郎が手を伸ばす。青年が目を瞑る。

 

 その刹那だった。

 

「……」

「お、オイ……」

 

 舞台でジェミニAと交戦していた二人が手を止めて絶句する。

 武蔵が青年を庇い、ジェミニBを押さえつけていた。

 言葉を発さないジェミニだが、ラフムの力を諸共せず立ち向かう武蔵に慄いている様だった。

 

「まるで俺の事怪物だって思ってるみたいじゃねぇか…」

 

 武蔵は歯を食い縛ってジェミニBを押し上げる。力負けしたジェミニBは、首を上下左右に振り回しながら暴れる。

 

「でもなぁ、怪物は…お前らの方だぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 その絶叫と共に武蔵はラフムを放り投げる。呆気に取られたジェミニBは、成す術無く舞台付近の椅子に落下し、転げ落ちる。

 目の前で怪物を”投げた”武蔵を間近で目撃した河森は、口を大きく開けてその場で縮こまっている。彼の存在を思い出した武蔵は避難を促す。それを受けた河森は流石に危ない為、体をふらつかせながら講堂から離れる。

 先程の背負い投げで疲労した武蔵が片膝をつく。その姿にジェミニAが仲間の仇と言わんばかりに襲い掛かる。再び交戦する体力を残さない彼に対してさらにジェミニBも再起して飛び立つ。

 

「大護さんッ!!」

 

 今度こそ武蔵の身が危険だ。ライダーは飛び出してブートトリガーの引き金を引く。

 

《Winnig・Attack》

 

 ウイニングイ―トリッジの内包する風のエネルギーを足に集中させ、跳躍する。

 一気に空中へ舞い上がると、二体のラフム目掛けその両拳を振るう。

 

「おりゃあああっ!」

 

 雄叫びとともにジェミニに風を纏った鉄拳を見舞う。その攻撃を食らった二体は地面へ落下する。が、自らの翼で浮上し、体をひねらせながら方向転換、武蔵に飛び掛かる。

 が、武蔵は待ってましたと言わんばかりの不敵な笑みで二体を待ち構えていた。その両手には念の為に携帯していた二丁の拳銃、その引き金を引く。

 繰り出された二発の弾丸は、丁度ジェミニA、Bの胸の中心に当たった。それによって二体は苦しむ様な嬌声を上げて勢い良く落下し、その場に転がり込む。

 

「!? さっきまでうんともすんとも言って無かった連中がいきなりやられた……」

 

 銃撃した武蔵ですらその光景に驚いているが、ライダーと同じくしてやって来たバーンが状況を推理する。

 

「こいつは多分…”同時に攻撃を受けたから”だ。このジェミニ共は二体同時に受けた攻撃しか受け付けない特殊なラフムなんだろうぜ。文字通り二人で一人か」

「そっか! そうと分かれば、やる事は一つだね」

 

 納得したライダーが手槌を打つと、バーンと拳同士を合わせる。

 と、ブートトリガーを二回引く。

 

《Winnig・Crash》

 

「ってオイ! 俺必殺技とかねーんだけど!?」

 

 バーンが戸惑うが、気合いで体の全身に炎を巡らせる。

 そして、二人が同時に飛び上がると、身動きの取れなくなったラフムへ、飛び蹴りを食らわせる。

 

「うおりゃーーーーーーーーーッ!!」

 

 ジェミニラフムへの同時攻撃。ライダーとバーンの絆が織り成すダブルキックが敵を殲滅する。

 

 ラフムとの戦闘で疲弊した武蔵だったが、立ち込める黒煙の中に入り、ジェミニラフムとなっていた人間を救出する為歩を進める。と、そこから人影が現れる。

 二人の男女を背負った楓と勇太郎。二人は作戦の成功に歓喜の笑みを浮かべていた。

 

――

 

 翌日。総理によるラフムとバディの概要について公表する会見が改めて行われ、”仮面ライダー”の存在が明るみに出た。それと同時に、大学の写真サークルの撮影した写真が掲示板に貼り出されていた。その周囲に多くの人だかりが出来ている。

 

 ”正義の味方仮面ライダー!”そう銘打たれた一枚の写真にはバーン、そしてウイニングの姿が映っていた。

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