仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#17 会見

 総理による発表から五日後。バディ幹部、楓を除く実動部隊は緊急会見を開き、記者達の質問攻めに合っていた。この難しい質疑にバディ長官、長良は言葉を詰まらせながらも答えていく。

 

「―――ジブンジャーナルです、先日も例の怪物? ラフムと戦闘していた様なのですがその中で民間人に被害が出たとお聞きしたのですがどうなのですか?」

 

 一人の記者の質問。それは全くのデマであり、尾ヒレのついた情報であったが、明るみになったラフムの存在が人を混乱させ憶測を肥大化させているのは想像に容易い。が、そのデマを真実に修正するのは容易ではない。

 

「民間人に関しては戦闘の際、巻き込まれる事があるのは事実です。ですが、我々バディはその状況も想定し、負傷者を可能な限り減らせる様、細心の注意を払っています」

 

 長良が丁寧に説明する。

 

「逃げ遅れた方を保護する為の人員を配置し安全な誘導を徹底しています。絶対に無関係な人に危険を及ばせません」

 

 その言葉に嘘は無い、つもりだった。

 

「では、こちらの件はどの様に説明するのでしょうか?」

 

 先程の記者が手元のパソコンを操作し、全員にとある動画を共有する。

 それは、二人がジェミニと戦闘している映像であった。

 ジェミニが河森を襲撃するその瞬間が切り取られて流され、十秒と無い映像にその場の全員が唖然とした。

 

(そんな…偏向ってレベルじゃねぇぞ!)

 

 勇太郎が心の中で言葉を挟む。

 マスメディアは真実を伝える為の手段だ。だが、真実の為に虚偽を伝えるのが今目の前にある現状だ。勇太郎はラフムが許せないが、人々の不安を煽る様な事しか出来ない事もまた許せない。故に勇太郎は、不安を払拭出来ないでいる自分達にも嫌気が差す。

 

(こんな時に楓はどこ行ってるんだよ……)

 

――

 

 時を同じくして。バディの記者会見に出席していなかった楓は藤村と共に東城大学へ向かっていた。

 

「まさか霧島君と相乗りする事になるなんてね」

「しっかり掴まってて下さいよ、藤村さん。こちらも時間との争いなんです。僕だって家族以外で人を乗せるのは初めてなんだから」

 

 周りの車を避けながら”ただのバイク”を走らせる。

 

「ライドサイクロン、まだ直らないんですか?」

「焦らないの。今強化改修中なのよ」

 

 道中の暇つぶしと言わんばかりに藤村は現在修復しているライドサイクロンの状態を伝える。

 

「今までの霧島君の戦闘データとライドサイクロン制作時に培われた簡易イ―トリッジの技術を組み合わせて、仮面ライダー及び機動隊員の機動力と攻撃力を増加させる為のパワードスーツを作っているのよ」

 

 それ、バイクの話ですか? と楓が言葉を挟む。それに対して藤村は首を縦に振ってみせる。

 

「じゃあライドサイクロンはパワードスーツになっちゃうんですか!?」

 

 思わずバイクのブレーキを踏んで楓が問う。バイクが路肩に止められた事でようやくと言わんばかりに藤村が一息吐く。

 

「そこまではまだ試作段階だから分からないわ。ただ、ライドサイクロンを砲火攻撃可能な代物にするのは明白よ」

「うわあ……」

「まあ不服そうにしないで。貴方の意見も極力取り入れるから、ね?」

 

 楓は溜め息を吐くと、再びバイクを発進させる。

 

――

 

 東城大学、エントランス。

 

「…それで、ラフムと戦っている事と民間人を守っている事の証人として俺を呼んだと。状況は理解しましたよ」

 

 藤村と楓が大学に来た理由、それは先の戦いの証人である河森に会う事だった。追求を免れられないバディを擁護する意見、そして情報があれば記者らも無茶な暴論を慎むだろう。

 この事を伝えると河森は写真サークルに二人を案内すると境を呼ぶ。

 

「何よ、河森君。まだ写真の現像が終わってな…ええええええ!?」

 

 昔のカメラを入手し、嬉々として現像を進めていた境がエプロン姿で出て来たが、目の前に立つ仮面ライダー、楓に驚き、尻餅をつく。

 

 

「え? え? なんであの、仮面ライダーさんが?」

「俺は昨日の戦いに巻き込まれたからな、その時の情報と”擁護”が必要らしい」

 

 はーん、と境が目を細めて河森を睨む。まるでそれは羨望の様であった。

 

「ずるいわよ、河森君! あなただけ仮面ライダーと関わっちゃってさ!」

「…は?」

 

 河森の開いた口が塞がらない。境が何を言っているのか理解出来なかった。…いや、”理解した”。

 

「お前本当に羨ましいと思ってんのか?」

 

 ―――だとしたら筋違いだ。仮面ライダーはヒーローだ。間違い無く皆を守る戦士だ。

 しかし。目の前の彼は決してヒーローショ―をしている訳では無い。ましてや皆からもてはやされる為に戦っている訳でも無い。仮面ライダー、霧島楓の顔を見れば分かる。彼は楽しくて仮面ライダーと名乗っている訳ではない。

 彼には何か計り知れぬ思いがあって仮面と鎧に身を包み恐ろしい怪物と戦っている筈だ。それを境は、彼女は察する事が出来ずに芸能人か何かと勘違いした様な事を”ほざいている”。河森は考えれば考える程に苛立って来た。

 

「境、お前が俺を羨ましいと思ってんならそれはおかしい。お前は仮面ライダーを何も分かっちゃいない!」

「何よ、アンタは目の前で戦う所見てたからってさ―――」

「僕はそんな格好良いモノじゃないッ!!」

 

 サークルの部屋に静寂が走る。楓の怒号で空気が一気に静まる。

 

「……」

 

 境が押し黙ると、急に部屋を飛び出した。

 

「おい境!」

 

 彼女を止める河森の声も届かず、強くドアを閉める音が響く。しばらく誰も言葉を発さず、まるで時間が止まった様だった。この静まり返った空間を打ち破ったのは、楓が装着していたインカムからの通信だった。

 インカムの通信、それは即ちバディからの連絡だった。

 

「二分前にラフム出現! 場所は東京都文京区駒込、駒込公園! 今すぐ急行して下さいッ!」

 かなり緊迫した様子だ。しかもその場所はここからすぐ近く。楓は持ち運んでいたライドツールを持って

部屋を後にしようとして立ち止る。

 

「藤村さんは河森先輩を連れて会見へ行って下さい!」

「待ってくれ! 今ラフムがいるところに多分アイツが…境がいる」

 

 楓の息が詰まる。飛び出していった境は気が沈むと必ず駒込公園に行くそうだ。

 

「…分かりました、全力で助けます。勿論そこにいる全ての人を」

「頼んだぞ、”仮面ライダー”」

「―――つか仮面ライダーお前、後輩だったのかよ!?」

 

 楓が苦笑いしながら頷くと、すぐに走り出した。

 

――

 

「今回現れたラフムはコードネーム”ローズラフム”!(いばら)状の(ムチ)を使います!」

「現在重軽傷者二十二名、死者は出ていません!」

 

 逐一ラフムの情報がインカムを通じて流れて行く。

 

「絶対に助けるッ!」

 

 楓がライドツールのアタッシュを走りながら開き、ライドツールを放り投げる。

 空中に四散したライドツールをロインクロス、ホルダー、バレットナックルの順に装着していく。

 

《Account・Winning》

《Winning》

 

 ロインクロスとウイニングイ―トリッジを起動させ、ロインクロスに装填するとバレットナックルの持ち手を兼ねた起動パーツ、ブートトリガーを取り外し、掲げる。

 

「変身!」

 

 ブートトリガーをロインクロスに装着、引き金を引く。

 

《Change・Winnig》

 

 粒子が楓を包み、フレームボディを形成、さらに発生した緑の鎧が重なり、仮面となる。

 マフラーが風を拾い、体中に力がみなぎる。

 

 ラフムの暴れている駒込公園に到着した仮面ライダーは、逃げ遅れた境に鞭を伸ばすローズラフムの間に挟まり、その攻撃を防ぐ。

 

「正義を叫びライドする仮面の戦士! その名をまさしく、仮面ライダー!」

 

「これ以上人を傷付けるな…!」

 

 ローズに対峙するライダーの背中を見て、境は言葉を失う。

 河森の予想通りここに来ていた境は、恐怖の余り動けなくなっていた。

 

「か…仮面ライダー……」

「境先輩、無事で良かった。なるべく遠くに逃げて下さい」

「足が…動かない……」

 

 言葉の詰まる境を見て、ライダーはローズの鞭を振り払って蹴りによって退けると、彼女を背負って全速力でその場から離れる。風の力を持ったウイニングフォームはその敏捷性が特徴である。その機動によって境を逃がす。が…。

 

「ぐあああっ!!」

 

 折角の獲物を逃さんとするローズの鞭がライダーの鎖骨周辺を背中から一直線に貫いていた。目の前で傷付き、砕け散った装甲の粒子が噴出する光景に境は甲高い叫びを上げる。

 

「ッ……大丈夫だから、境先輩も勇気を出して、逃げて…」

 

 ライダーは茨状になり周囲に棘が配置された鞭を引き抜く。棘が引っかかり抜くだけで体力と精神力が奪われる。

 

「ライダー…どうして……」

「例え傷付いても、人々を守る…それが仮面ライダーだからッ!」

 

 鞭を引き抜いたライダーは境を庇う様にしてローズに立ちはだかる。

 

「ここは絶対に行かせない!」

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