仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#25 雷鳴

 バディ本部内駐車場に機動隊が終結する。ラフム出現の報を受け楓が勇太郎と彼らと合流する。

 

「楓! 相手は酸を使うヤツだぜ! 今回は俺の炎に()があるからサポート頼む!」

「オッケー。それに、今回はペイルと仲間だって言うティアマトのラフムも患者の護衛に入ってくれるらしい、あわよくば協力を持ち込もう」

「マジかよ…まぁ楓がそこまで言うなら、信じて良いんだよな」

 

 機動隊は全国に張り巡らされた地下通路網”レイライン”で、楓と勇太郎は射出コンテナで各々目的地に移動する事となる。

 

《Account・Winning》

《Winning》

 

《Burn》

 

「「変身!!」」

 

《Change・Winning》

 

 二人の声が重なると、イートリッジから放たれる粒子が体を包み、ライダーとラフムへと変身する。

 

「目的地は東京だから遠くは無いけど、サイクロンの調整と出撃を含めても射出の方が早いわ。二人は射出コンテナ内にてサイクロンに乗って待機、後はこちらで操作するわ」

 

 藤村の指示と共にコンテナを牽引するトレーラー内のオペレーター陣が調整と喚呼の手順を始める。

 

「こちら霧島、準備完了」

「こちら火島、準備完了ォ!」

 

「了解。仮面ライダー、バーン、両名の発進準備完了。ライドサイクロン整備済、システム異常無し」

「座標指定完了、座標までの到達ライン演算開始…演算完了。ノードオンライン」

「発進システムスタンバイ」

 

「仮面ライダー、発進許可します!」

「バーンラフム、発進許可するぜ!」

 

 コンテナが展開すると、サイクロンを固定していたレールも上空へと向く。

 

「発進軸固定、ブースターオン。ライドサイクロン、発進します!」

 

――

 

 長官が二人の飛び立つ瞬間を固唾を飲んで見守る。そんな彼の横から成程、と気品のある声と共に、スーツ姿で眼鏡の中性的な容姿をした男性が現れる。

 

「あれらも全て政府の補助から出ていますから、けして無駄遣いの無い様に。長官」

「はは、分かっていますとも。何にせよ出撃の最終承認ですが、実は私が出していますから…何かございましたら私の責任として下さいね」

 

 長良が椅子を回転させ、横の人物と目を合わせる。まるで二人は睨み合う様にじっとお互いを見つめる。と、長官が不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「―――総理によろしくお伝え下さい。”内閣府査察官”殿」

 

 

 

――

 

 ライダー、バーンが上空から病院に着陸する。付近の警察の協力によって医師や看護師は避難できたが、患者はまだ避難が完了していない。酸を使うラフムは非常に危険な為、早急な救助が求められる。

 と、三階の病室から酸と思わしき液体が溢れ出し、窓を突き破る。

 その光景に現場の人々全員が戦慄する。あの攻撃に巻き込まれた患者がいる可能性に避難中の医師らは顔を青くしている。

 

「楓ッ! 一緒に来い! 俺はラフムの捜索、お前は救助だ!」

「うんッ!」

 

 バーンとライダーが三階へと跳躍し、酸によって開けられた穴から突入する。

 その場には酸を命からがらかわし、倒れている患者の男性と、紫と黄緑の毒々しい怪物が立っていた。

 

「バディだ! 観念しろラフムめ!」

「お出ましか、ライダーとバーン……」

 

 コードネーム、アシッドラフム。どうやら一階から襲撃したらしく、片っ端から破壊と殺人を繰り返している。もう既に犠牲は出ている。この異形に酌量の余地は無い。ライダーとバーンが全力で挑む。つもりだったが。

 

「俺には探しているヤツがいんだよ! お前らなんかと遊んでられっか!」

 

 アシッドが二人に背を向け、逃げ出す。探していると言うのは恐らく淡路島の恋人であろう。病室の壁を溶かして突破し、一目散に走り出す。

 

「お前らをドロドロにすんのはこちらの目的を達成してから―――」

 

 追いかける二人を見ながら走っていると、前にいた人影にぶつかる。一般人へ激突したにしては反動が重たい。バディの機動隊員にぶつかったのだと警戒しながら前を振り向くと、そこには黄色い鎧に腰布を巻いたライダーの様な戦士が立ちはだかっていた。電撃の様なとげとげしい装甲の意匠と、目を覆うバイザーが威圧感を醸し出す。

 

 

 

「なッ…お前は……」

「俺の事すら知らねえか、おい雑魚ラフム。誰の指示でここに来た? ここは俺が監視してるって言われなかったか?」

「知らねーよ! 仮面ライダーみたいなコスプレしやがって、いきなりグチャグチャ言いやがっ―――」

 

 状況を把握出来ずに戸惑うアシッドの頭を、黄の鎧が掴む。もがくアシッドだったが、彼を掴んだ黄の鎧の手から雷撃が視認出来る程の威力の雷が放たれる。

 頭に落雷を受けたに等しい電撃により、アシッドは全身を黒焦げにし、黄の鎧の手から離れ倒れる。

 

「ビルダーとは言え、ラフムなら無事だな。それよりも……救出を優先するか」

「―――”(ひびき)”は地下だから大丈夫、だよな」

 

 黄の鎧が物音に気付き、ゆっくりと振り返ると、ライダーとバーンが立っていた。

 

「仮面ライダーとバーンラフムか。このラフムは俺が倒した。ペイルからどこまで聞いているかは知らねえが―――」

「お前がサンダーラフム、だな。淡路島さんから話は聞いている。状況にもよるけど君の協力を得たい」

 

 ライダーは彼がサンダーだと分かると、協力を促す為に手を差し伸べるが、サンダーはその手を振り払う。

 

「勘違いするな。俺はティアマトの監視執行役、つまりラフムの暴走を食い止める立場ってだけだ」

「食い…止める……? おい、今までラフムが暴れ回って人を襲ってたのにその間お前はどうしてたんだよ!?」

 

 ライダーは激昂してサンダーの胸倉を掴む。淡々と言い放つ言葉の冷徹さにライダー―――楓は怒りのあまり我を忘れてサンダーを追求する。が、バーンは冷静にライダーの肩を叩いて叱責する。

 

「落ち着け楓、俺達が今やるべき事はここの人の救出だろ! 幸いアシッドはブチのめされてるんだからイートリッジを回収してさっさと皆を避難させるぞ! サンダー、お前の役目はおしまいって事だろ? 俺達と戦うつもりが無いなら今日は見逃してやるから帰れよ!」

「―――懸命な判断だな、バーン。それと一つ言わせてもらうが……俺の仕事はもう一つあってな、お前の回収だ」

 

 は? とバーンが問う。が、サンダーはそれに答えずに彼の首を掴む。

 

「お前を電撃で行動不能にしてティアマトのアジトまで運ぶ。そもそも霧島家を襲撃したのも火島勇太郎の才能に目を付けたかららしい。お前がラフムと化した為にこちらの人間として運用したいんだと」

「そんな勝手が許されるか! 俺は人の命を守るヒーローになるって決めたんだよ! お前ら人殺しの道具になんて死んでもなるもんかよ、バーーカ!!」

「そうかよ―――なら死ね」

 

 サンダーがその手から凄まじい威力の電流を発する。その電力が周りの電気類と反応し廊下の蛍光灯が明滅する。

 

「やめろッ!!」

 

《Winning・Attack》

 

 ブートトリガーによる力の解放で強化されたライダーの鉄拳をサンダーに見舞う。予想外の攻撃にサンダーがその場に倒れると、ライダーは好機と言わんばかりにサンダーを引きづって諸共外に飛び出る。

 

「なっ、何すんだテメェ!」

「病院には電気を使って生命維持をしている患者が大勢いる……その中でそんな電撃を放っていたらどうなるか分かるよなっ!?」

 

 三階から落下した二人は、サンダーを下敷きにして地上に激突する。その衝撃でサンダーが唸りを上げるが、ライダーはそれに構わずその顔面にもう一発を食らわせる。

 

「淡路島さんが恋人を守ってくれると信頼していたからお前は話が分かると思っていたけど、残念だ。どうやら予想外の間抜けだった様だな」

「間抜けだと……? こっちの事情を知らないクセにッ!」

 

 サンダーが更に放電し、上に乗っかっていたライダーを怯ませ、突き飛ばす。

 

「お前にとってバーンが大切なのは分かってる……だけど俺だって大切なヤツを助けたいんだよ! 俺は…俺の大切な人の為なら全てを犠牲にすると決めた!」

 

 態勢を整えたサンダーがライダーに蹴りを食らわせ吹き飛ばす。

 

「そこまでの決意をしながらどうしてティアマトなんかに手を貸すんだ、サンダー!」

「あの悪魔共の力が無ければ俺は”響”を助ける事なんて出来なかった! 今はアイツらの言葉に従うしか……無いんだ」

 

 ライダーが溜息をついて肩をすくめる。この状況に既視感と飽和を感じ、苛立ちを隠せないでいた。

 

「これは淡路島さん…ペイルにも言ったが、バディで働けばお前の大切な人を助けられる筈だ。どうせなら人殺しじゃなくて世界を守って大切な人も守りたいだろ?」

「な―――そうやって言っておけば(ほだ)されると思いやがって、俺は大人の言う事なんか信じない! ガキだからってバカにして、俺から全てを奪おうとするんだ!」

 

 大人? ガキ? サンダーの言葉の節々から、彼がまだ子供である事が察せられる。そんな彼が鎧を纏ってライダーと戦い、人殺しに加担する―――ここまでやらせるティアマトに怖気が立った。

 

「サンダー、お前いくつだ?」

「いくつでも良いだろ!」

「まあ歳は関係無いか……でも、一つだけ言わせて欲しい。僕は、僕達は助けを求める人を利用したりなんてしない。僕に出来る事があるなら協力するから、もう悪事で誰かを助けようとしないで欲しい」

 

 途端に語気を弱め、説得を始める楓に、サンダーが狼狽える。楓の言葉に自分の覚悟が揺らいでいく気がした。本当は人を傷付けたくない。そう思っている自分の良心が自分の行動を抑制する。

 サンダーの葛藤に終止符を打つ為に楓は変身を解除する。

 

「もし君がバディに協力するなら、僕は君とは戦わないし、君の為に戦う事を約束するよ。一緒に行こう、君ならきっとバディでも大切な人を守れる筈だ」

 

 バディにいても大切な人は守れる。楓の言葉にサンダーの心が傾く。

 楓の言葉に従う様に一歩を足を踏み出した瞬間だった。

 

 

「大人の甘言に聞く耳は持たないんじゃないのか? サンダー」

 

 黒い霧の中から死神の様なオーラを醸し出しながら黒い鎧、藤村金剛が現れる。

 

「お前に都合の良い言葉を並べ立ててお前を使い潰して結局君の妹は助けない。そんなもんだろ大人って? サンダー、お前が従うべきなのは、お前に真に寄与する悪か、口だけの正義か。果たして……どっちだ?」

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