仮面ライダーと同じ力、ライドシステムを駆る謎のラフム、サンダー。
彼は植物人間と化した妹を救う為にティアマトの刺客として立ちはだかった。
猛烈なサンダーの電撃と、限界を超えた力の解放によって、ライダーはその身を滅ぼしながらも撃退に成功したのだった。
――
病院の患者や医師に多数の犠牲者を出し、人類の希望であった仮面ライダーを失った。
その影響は大きく、世間は不安を募らせていた。仮面ライダーをヒーローとして祭り上げた結果、敗北の報が多くの国民の耳に届いてしまった。
ラフムに対する恐怖、バディと国に対する不信感、バーンへの期待。人々の気持ちが交錯している。
一方、話題の中心にあるバーンラフム…勇太郎は―――。
「火島君。霧島君の体は回復に向かってるみたいだから治療室を移すわ。貴方も昨日からずっとここにいるのだから少し休んで頂戴」
親友・楓の敗北と負傷に勇太郎は大きなショックを受け、飲まず食わず、眠らずで緊急治療室そばのベンチにずっと腰かけていた。
勇太郎もそうだが、ラフムの回復力は常軌を逸する程であり、気力によってその回復速度を上げる事すら可能である。その恩恵を受け、サンダーによる攻撃を受けた筈の勇太郎は最早傷などの影響が残らない程回復し、楓も複雑骨折した脚が繋がり始めている。が、彼の回復力をもってしても治らない物があった。
サンダーの力を連続解放した必殺攻撃による帯電。全身を異常な電気が覆っており、これを取り除かない限り彼の意識は戻らない”らしい”。
らしいと言うのは、現代の医学ではこの帯電を取り除く手段は解明されておらず、似た症例の患者からの経験則でしか判断が出来ない為だ。
この帯電が邪魔をして医療用器具が故障してしまう為、多くの医師が匙を投げているのが現状だ。今はその似た症例の患者を受け入れている病院での保護とした。
楓が運ばれていく姿を見て、勇太郎は自分の無力さに打ちひしがれる。やつれる勇太郎に対して藤村に出来る事は少なかった。だが、勇太郎にはまだやるべき事がある。藤村は何とかして彼を奮起させまいと深呼吸をする。
「火島君。こんな状況だけど、貴方にはまだやる事が残っているの。霧島君に続く人類を守るラフムとして、彼の意思を継いで戦って欲しいの」
「……俺が、楓の意思を継ぐ?」
「そうよ。霧島君は皆の為に戦ってくれていた。彼が守ってくれたモノを、私達は守らなければならないわ」
「―――霧島君は、貴方と会うまで、貴方が死んだと思っていたわ。それでも、私達や、多くの人々の為に立ち上がってくれた……彼のその勇気を、今度は私達が守りたいの」
「楓の、勇気……アイツが守ったモノ」
「火島君。貴方にまだラフムと戦う気持ちがあるなら、私についてきて。霧島君の倒れた今、新たなヒーローが必要よ」
自分が無責任な事を言っているのは分かっている。自分に出来ない事を勇太郎に押し付けている。それも分かっている。それでも、この日本を守る為に誰かの力を借りなければいけなかった。
藤村は、自分の内から溢れる無力感を押し殺しながら、勇太郎に頭を下げた。
「まだ若い貴方にこんな重責、大人として背負わせたくなかったわ。でも…やらなくちゃいけないの。ごめんなさい火島君。どうか、どうかこのひ弱な人類に力を貸して」
藤村の懇願に勇太郎は溜息をつくと、自らの平手に拳をぶつけ、打ち鳴らした。
「大学生にもなりゃ大人ですよ。俺の事は俺が決める。俺の責任は俺が取る。だから、藤村さん、頭を上げて下さい! それにこれは頼まれてやる事じゃない。俺が俺の意思で人を助けるんです。楓がそうした様に」
先程の疲弊した顔付きから一変した勇太郎は、不敵な笑いで己を鼓舞する。
「そうと決まれば新たなヒーロー、いいえ…仮面ライダー第二号の誕生に当たるわよ」
藤村と勇太郎は頷き合うとバディ研究室へと向かう。
――
バディ研究室。そこにはライダー複製の為の多くの資料や工具が散乱し、まるで空き巣にでも入られた様だった。
「アシッド、サンダー両ラフムとの戦闘前のままね。貴方もそこにいたけれど、直前までバーンイートリッジの解析を行っていたものね。解析率は八〇パーセント。アーマーも用意出来ているわ。途中だった所を続けましょう」
勇太郎からイートリッジを受け取ると、内部データを書き換えながら動作をシミュレートする。
「こんなに難解な作業を行っているけど、正直な話ライドシステムって気合いでどうにかなっちゃったりするのよね。理系としては頭を悩ませるけど」
「気合いっすか?」
「霧島君が初めて変身した時は、本当に気合いでどうにかなってしまったのよ。ライドシステムについて不可解な部分はまだ多いから、解明できていない部分の作用と私は考えているけど、兄さんの創ったモノである事から考えると、奇跡とか神の領域の仕組みがあったとしても不思議じゃないと思えて来るわ」
「神って…あのお兄さんそんなスゲー人だったんすね」
「確かにスゲーとしか言い様が無いわね」
藤村が少し笑うと、作業の手を早める。
「私も兄さんに負けてないわよ? これで解析完了……ライドシステムとの接続を始めるわよ」
イートリッジを別の装置に移すと、ケーブルを装置と、赤い鎧に繋げる。
この工程は、仮面ライダーのアーマーを呼び出す為のシステムをイートリッジに施すものである。これによりイートリッジの力をロインクロスから解放した際にアーマーを装着させる事が可能となる。
データの構築と実際に変身の動作を行ってのチェックを交互に繰り返す手筈だが、勇太郎は藤村の言っていた事を思い出していた。
(ライダーって気合いで変身出来るんだっけな…楓が気合いでやり遂げたってんなら、それを受け継ぐ俺だってやってみせるさ!)
以前藤村が見せたもう一つのロインクロス。勇太郎がそれを腰に巻き付けると、彼の体から粒子を吸い込み、バックル右下の個別認識表示である”クレストカラー”が赤い炎のマークに染まる。
《Account・Burn》
《Burn》
藤村からイートリッジを受け取り、起動させるとロインクロスに装填する。
勇太郎は目を瞑ると深呼吸をしながら、変身のイメージを浮かべる。
(俺は…楓の思いを守る……絶対に!)
「変身ッ!!」
楓が教えてくれたその響き。誰かを守る為のヒーローへと自分を変える言葉。
ブートトリガーを引き、バーンの力を解放する。
《Change・Burn》
結果から言えば、実験は成功。勇太郎の全身を鮮やかな赤き鎧が包む。
鎧が展開され、仮面が素体の頭に合体する。
「変身…成功ね」
藤村が安堵の息をつく。勇太郎も喜びの雄叫びを上げる。
「よっしゃー! これで俺も仮面ライダーだー!」
「ええ、火島君。今日から貴方は、そうね…”仮面ライダーバーン”として活動して頂戴。霧島君が帰った時の為に名称は差別化させて貰うわ」
バーンラフムの性質たる炎と、勇太郎の心の中の情熱を表す赤き戦士―――仮面ライダーバーンが遂に誕生した。
時代が求める時、仮面ライダーは必ず甦る。
楓が倒れた今、その親友たる勇太郎が人々を守る使命を果たしていく。