仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#29 初戦

 十一月二十七日。東京都新宿区西早稲田。火炎に飲み込まれた住宅街で、怪物とライダーの激闘が繰り広げられていた。

 

「誰も見てないだろうが、仮面ライダーバーン、見事お披露目だぜ。来いよラフム! 燃えながら暴れるのも楽じゃないだろ、すぐに解放してやるからな!」

 

 炭化しながらも戦うウッドラフムを挑発して相手の攻撃を誘う。俊敏な機動を見せ攻撃の手を止めないウッドだが、単調な連撃をバーンはかわし続けながら間合いに入り、パンチを見舞う。が、木の性質から生み出される何層にも重なった装甲によって有効な打撃は加えられない。

 

「火島君、攻撃に特化したイートリッジに換装して!」

 

 藤村の指示を受け、バーンは楓の戦い方を思い出しながらベルトを操作する。

 イートリッジホルダーからディア―、鹿のイートリッジを取り出し、起動。

 バーンから入れ替えてロインクロスに装填、取り付けられたままのブートトリガーを引きフォームチェンジを行う。

 

《Deer》

《Form・Change・Deer》

 

 すると、バーンの胴体から鎧が外れ、ディアーの鎧が装着される。鋭利な鹿の角の様な腕の突起、跳躍力が増し身軽になった脚部。鹿を模した角の仮面がバーンに被さり、その姿を大きく変える。

 

「これがフォームチェンジ…! 行くぜ!」

 

 大きな跳躍力でウッドの想定を上回る立体的な機動で、民家の壁を上りながら蹴り上げ、上空からウッドの体をその鋭利な腕の突起で斬り付ける。圧倒的なリーチと速度でウッドが怯んで倒れ込む。

 

「なんてパワー&スピードだ…このまま決めるぜ!」

 

 バーンが必殺技を決める為ブートトリガーに手をかける。と、その瞬間ウッドがまたしてもその枝を伸ばし攻撃する。が、バーンはその攻撃を見切っている。何の躊躇いも無く攻撃を回避する。

 しかしバーンが回避した先にはウッドの枝が更に突き出しており、回避し切れず攻撃を食らう。

 

「ぐおっ!」

(コイツ、強くなったのか!?)

 

 バーンが体勢を整える暇なく再び枝が伸びる。何とかバーンは避けるが、枝から更に枝が伸び、追加の攻撃を仕掛ける。回避不可能のトリッキーな攻撃にバーンが押され始めた。

 

(バーンの火力なら相手の攻撃に関係なく戦えるが打撃に難あり、ディアーを使えば攻撃に対応出来ねえ…他のイートリッジも分が悪いな)

 

 バーンは再び基本形態であるバーンフォームに変身し、ウッドの攻撃を燃やしながらさばいていく。ウッドの体は火に弱い筈なのに平気で動き続けている。それだけの装甲の強さを誇っているのだ。しかし表面はずっと燃焼している事から脆くはなっている。層を構成しているならば一点に集中して崩していけばいつかは内部が露出するだろう。

 その予想に全てを託し、バーンはブートトリガーを3回引く。

 

《Burn…Impact!!》

 

 バーンの能力を最大解放し、全身から炎を発生させる。

 

「うおおおおおおッ!! パワーが足りねえなら……無理くり引き上げてやるよ!!」

 

 思考を放棄した様にも取れるこの行動だが、現状はそれが最も有効だった。勇太郎の予想は正しく、底上げされた攻撃力と火力は一気にウッドの体を燃やし、腹部を集中的に殴り続ける。その結果修復に時間を要するレベルのダメージをウッドに与え、その体制を崩す。

 

「これで終わりだ―――!?」

 

 とどめを刺そうとしたバーンだったが、体の熱が高まりすぎて身動きが取れなくなっていた。

 

「火島君! どうやらバーンの炎の性質が冷却しきれなくて熱暴走を起こしている様よ! 周りの消火も進んでいるから後は機動隊に任せて退避して!」

 

 藤村が通信で言った”退避”が気になるが、体を何とか動かして送られてきた目標地点へと移動する。ウッドは未だ身動きをしておらず、安堵する。

 

「藤村さん? なんとか逃げてきましたけどラフムは倒せるんすか」

「ええ、一発でカタを付けるわ」

 

 藤村がそう言うと、上空からヘリコプターの音が近付いてくる。その中から対戦車誘導弾を持った大護が出て来て、ウッドに照準を合わせる。

 

「ATM-5、発射!」

 

 軽々と放って見せたその一撃が、ウッドに直撃し、爆発する。その衝撃で民家の残火が吹き飛ぶが、コンクリート壁の崩壊も招いてしまった。

 

「撃った後で悪いが、先生……これラフムとは言えブッ放して良かったのかよ?」

「防衛大臣と陸上幕僚長からのハンコは貰ってるわ」

 

 ヘリから降りた大護がウッドの元の人間と、変身を解除した勇太郎を回収する。

 

「一先ずはこれで任務完了だな、火島」

「やっと人類がラフムにトドメ食らわしましたね…人間の初勝利だ」

「お前らが協力してくれたその日から、”人間”が勝利しなかった日なんて一度もねーよ」

 

 ヘトヘトになりながらも、勇太郎は大護に笑いかけると、大護から良くやった、と激励の言葉を貰った。

 

――

 

 十一月二十八日。

 バディ研究室。熱暴走した勇太郎が回復したとの報を受けて藤村は安堵しつつ、バーンの調整をしながら考え事をしていた。

 

 ウッドラフムの元となったのは、以前病院で被害を受けた患者の一人であった。事情聴取によりオリジン個体である事が発覚し、ラフムへの変貌に時間差がある事が明らかになった。

 確かに、以前から藤村金剛の襲撃を受けラフムになった人物の話から、ラフムに変貌してから人間に戻り、普段と変わらぬ生活を送っていると突然ラフムになる、と言った状況がある事に藤村は固唾を飲んだ。

 

(ラフムになったら一旦人間に戻って、それから暫くしてラフムに変貌する……変貌時に近くにいた人は皆襲われてしまって死亡か重傷でその”瞬間”を知る人がいなかったから不確定要素ではあったけれど)

「……これまで襲われた人々はみんなラフムになる可能性を孕んでいた訳ね」

 

 人がラフムになる確率は定かでは無いが、今までの被害者とオリジン個体ラフム出現の比率から、おおよそ千人に一人の犠牲者がラフムになる、と言う事となる。

 

「……だとしたら、火島君と霧島君はどんな風にラフムになったのかしら…現状ラフム被害を受けてから人間としての意識を保ったままラフムになれているのも彼らだけだし」

 

 しかしただ考えてもしょうがない。取り敢えず勇太郎にラフムに命を落とした日の事を聞こうと連絡を取る。

 

「もしもし火島君? 少し聞きたい事があるのだけれど、今どこ?」

「今…そのー、長官とおやつ食ってます」

 

 思わず藤村の口からは? と言葉が出る。だが勇太郎は言葉通りの状況であるが故にそうとしか答えられなかった。

 

「すんません藤村さん!」

「長官と一緒にいるなら大丈夫よ。ゆっくり休んで頂戴、火島君」

 

 藤村からの電話を終えると、勇太郎はテーブルの向こうに座る長官に体を向ける。

 

「電話は終わった?」

「ええ。すみません、お食事中に」

「こちらこそすまない。忙しい上に病み上がりの君に来てもらっちゃって」

 

 いえ、と勇太郎は返すと、和菓子が来るのを待ちながらそわそわと体を揺らす。

 バディの全部門を管轄する長官、長良衡壱。勇太郎が彼と改めて会するのは初めてで緊張していた。

 

「やはり気まずかったか。許してくれ火島君、君と話したかったんだ」

 

 そう言って照れ臭そうに笑う長官に勇太郎はやはり固くなりながら言葉を返す。

 

「……ところで長官、何で和菓子屋なんすか?」

「はは、やはりちょっとおかしかったか。お菓子だけに」

「……」

「……」

 

 お菓子だけにおかしい人なのか、と勇太郎は突っ込みたくなる衝動を抑え、沈黙する。この空気に、流石に長官も自重する。

 

「昔ね、家ではお菓子なんて食べられなかったんだ。とても貴重な物だったから。だから今になってお菓子を食べたくなってしまって…それが理由と言うのもどうかと思うだろうが、人と話をする時はいつもココなんだ」

 

 菓子が貴重だった家庭に生まれたと言う長官に勇太郎は少し違和感を覚えた。見た目は30代位なので普通の家庭なら菓子はさほど貴重な代物では無かった。恐らく特殊な生まれなのだろうかと考えて自分を納得させた。

 

「それで、何で俺を呼んだんですか?」

「ああ、そうだね、さっき君と話したかったと言った通りなのだが、その話って事なのだけれど―――直接、長官として君のライダーとしての任について相談しておきたかったんだ」

「―――相談?」

 

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