仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#34 遊戯

 十一月二十九日。午後八時。

 都内某所、雑居ビル。

 バディの歓迎会を終えた雷電が殺風景な鉄筋コンクリート造の柱にもたれる。

 

「バディはどうだった? サンダー」

 

 柱の影から金剛が出現し、雷電に問う。

 

「パーティーまでしてくれたぜ」

「まさかお前がバーンを後ろから”バッサリ”やる為の人員とは知らずにな」

 

 金剛が高笑いを浮かべながら雷電の周りを回りながら歩く。

 

「くれぐれも(ほだ)されるなよ、サンダー。どちらが確実に妹を治してくれるのか、今までの行動を見れば一目瞭然だろ?」

「ああ、ハッキリと分かっている」

「それなら良い。明日にはアントに暴れて貰うからな…この東京は地獄と化すぜ」

 

 金剛がフロアに設置されたマイクやカメラを確認すると、顎に手を当て笑う。

 

「お前の電気の力は本当に便利だな、電波まで操れると来た。ここの映像を東京中に流す事まで容易いからな……テストはスマホのテレビ機能をハッキングした程度だが、後は範囲を広げるだけだ」

「明日はよろしく頼むぜ、サンダー」

 

 金剛が影に消えると、雷電もその場を立つ。

 

 自分はバディの人々を騙している。仲間になったフリをして内部破壊を目論んでいる。

 その作戦に加担している後ろめたさはあるが、自分にはやらなければならない事があるのだ。

 罪悪感を振り払う様に強い意志を決めながら、雷電は強い眼差しで月を見上げる。

 

――

 

 十一月三十日。東京都運命の日。

 その午前九時八分。

 東京都杉並区荻窪―――JR西荻窪駅。

 

「こっちは準備オッケーよ」

「始めてくれ」

 

 サングラスに大きいつば広帽子、赤いドレスと非常に目立つ姿の美麗な女性が携帯で金剛の合図を受けると、手持ちの小さなバッグから”アント”のイートリッジを取り出す。

 

《Ant》

 

 イートリッジを起動させ、胸元に触れさせると、女性の姿は煽情的な肢体を持った小柄な蟻の怪物へと変貌した。

 その姿を見て周囲にいた人々は絶叫しながら逃げ惑う。アントはその光景に高笑いを浮かべる。

 

「さぁ…ゲーム開始よ!!」

 

――

 

「午前九時八分、JR西荻窪駅にラフム出現! コードネーム、”アント”と呼称!」

 

 バディ指令室に早速ラフム出現の知らせが入る。その場に出くわした民間人による通報だった。

 

 以前の戦力強化でバディは緊急通報局番を発番していたのだ。全ての電話回線において、”555”の番号を入力する事で直接バディに接続され、電話がなされた位置情報からその地点のカメラを通じて状況を把握する仕組みである。

 

 久し振りの休暇で学校の予備補講を受けていた勇太郎にも連絡が入り、教室を飛び出す。

 

「藤村さん!? 今出てるんでこっちから一番近いレイラインから西荻窪に直接向かいます!」

 

 勇太郎が自家用として使用していたライドサイクロンを駆り、付近の大通りへ出る。と、街頭テレビに人が集まり、皆が釘付けになっている。思わず勇太郎もその方向を見ると、驚愕の映像が映し出されていた。

 

「やぁやぁ、東京都民諸君。俺はラフムを総括するティアマトの幹部、藤村金剛だ。今日からお前ら都民にゲームをして貰うぜ。ルールは簡単だ…お前らがラフムに殺されない内に仮面ライダーを殺せ! 時間制限は無し、仮面ライダーを殺せばゲーム終了、人間の勝ちとしてもうラフムは出現しないぜ? さぁ、ひ弱な人間共の健闘を祈ってゲーム開始だッ!」

 

 金剛の言葉に、映像を見ていた人々は辺りを見回し始めた。

 

「見ろ! 仮面ライダーだ!」

 

 一人がそう叫ぶと、何人かが勇太郎に近付き、段々と速度を上げる。

 

「お、おい! やめろ! 何考えてんだ!?」

 

 人々に囲まれ、勇太郎は戸惑いつつも人の少ない道から逃走する。

 

「ど、どうなってんすか藤村さん!?」

「私も今映像を見たわ! それと同時に西荻窪を中心にしてアントラフムが増殖して人に襲い掛かっているの! 最初に見た個体とは形が違うから、女王が兵隊を生み出していると考えて良いわ…現在兵隊アリは西荻窪から東へ進軍して、恐らく貴方のいる方向へ向かってるわよ!」

「増えてるゥ!?」

「戦闘力は低いみたいだから近隣の警察、自衛隊と連携して対処に当たっているわ! 女王を倒せばその増殖は止まる筈、西荻窪駅から動いてないから逃げながらそっちへ向かって!」

 

 と、藤村からの連絡が切れる。

 ライダーが一般人に狙われる状況、今までに無い戦闘に勇太郎は顔を歪ませる。

 

(このまま向かえば多分アントが跋扈(ばっこ)している場所にぶつかる…そうすっと俺を狙う人はもっと増えるだろうな)

「……雷電は何してんだよ!」

 

――

 

「良い放送だったな、サンダー」

「こんな仕事、俺のやる事じゃ無いだろ」

 

 そう言うと雷電は雑居ビルのフロアから出る。

 

「バディの戦士としての出陣か? 勇ましいな」

「ああ。藤村、俺の勇姿を近くで見ててくれよ」

「分かってるさ。お前がバーンを切り捨てる姿をな……。おっと、その前にもう死んでるかもなアイツ。守るべき弱者共によって、な」

 

 金剛は押し殺した様な笑いと共にフロアを後にする。雷電はカメラを少し見ると、藤村に続いて歩き出す。

 

――

 

 午前九時三十一分。東京都千代田区。

 皇居付近のレイラインに乗った勇太郎は、一息つきながら西荻窪へ移動する。と、藤村から連絡が入る。

 

「さっきの映像の発信元が特定出来たわ! 練馬区の雑居ビルよ!」

「じゃあそこに藤村金剛が!?」

「分からないけれど、その可能性はあるわ。今私と武蔵君が向かってるから火島君はアントを!」

「はあ!? もしそれであの金剛(真っ黒くろすけ)と出くわしたら……」

「その時はその時!」

 

 またも藤村から勝手に連絡が切れると、勇太郎はバイクのハンドルを思い切り叩く。

 何度電話をしても雷電には通じない。彼の身に何かあったのでは無いか。それとも―――。

 

「アイツは、元から仲間になる気なんて無かった…?」

 

 だとしたら自分達と話す事などしないだろうし、スパイだとしてもパーティーと言う最も無防備な状態を狙わなかった。携帯は常に連絡が取れる様にと指示はした筈だ。

 

 考えるより先にバイクのスピードは上がっていた。車輪の負担は計り知れないが、地上でライドサイクロンのライドシステムを発動する。

 本来は空中に射出した際に使用する物である速度上昇。勇太郎への負荷は抑えられるが、走る際に地に付く車輪はそのスピードに耐え切れず摩擦が発生する。文字通りアスファルトがタイヤを切りつけるのだ。

 

 器用に手を回してバイクの後部に取り付けていたアタッシュケースを開けると、ライドツールを取り出す。順番にツールをはめていき、イートリッジを装填するとブートトリガーを天へと掲げる。

 

《Account・Burn》

《Burn》

 

「変身!!」

 

《Change・Burn》

 

「このまま荻窪までブッ飛ばすッ!!」

 

 仮面ライダーバーンへと変身した勇太郎が、再びライドサイクロンにまたがる。

 日本中を線で結ぶ大型道路網であるレイラインだとしても、目的地までの距離はある。車輪の焼ける臭いと摩擦によるけたたましい音。それでもなおバイクは空気をエネルギーに変換して走行し続ける。

 

 午前九時四十分。東京都新宿区。新宿駅付近。

 

 ここまで爆走したライドサイクロンの車輪は遂に断末魔を上げ、パンクする。それにより車輪のフレーム自体にバイクと勇太郎の重みが掛かり、火花を散らしながら転倒する。

 

「クソ! ここまでかよ!」

 

 勇太郎が地面に拳を叩き付けると、レイラインを歩き始めようとする。と、ライドサイクロンから謎のチャイムが鳴り響く。取り敢えず車体を起こすと、藤村の声によるアナウンスが聞こえて来る。

 

「このボイスメッセージはライドサイクロンが走行不能になった際に流れる物よ。こんな事もあろうかと、タイヤ無しで走行可能な機能を付けておいてあるわ」

「バイクに乗った状態で、ライドサイクロンのイートリッジを起動させてから、フォームチェンジする様に装填して、トリガーを引いて」

 

 藤村の音声指示を頼りに、ライドサイクロンで変身する。

 

《Form・Change・Cyclone》

 

 変身音が鳴ると、ライドサイクロンがバーンを包む様に変形し、巨大なパワードスーツを形作った。

 全身から噴出する排気に勇太郎は興奮しながら手元に残るハンドルを握り、足元のペダルを踏むと、足の全体を機械のアームが固定する。

 

「操作は使って覚えろって事か……得意だぜ、そう言うの!」

 

 

 JR新宿駅。金剛の宣言に怯え電車に乗って逃げようとする人でごった返す構内から、上空へと続く一筋の飛行機雲が見える。

 

「あれ……仮面ライダーだッ!!」

 

 東京都心の空にて仮面ライダーが巨大メカを駆る姿は、多くの目に焼き付いた。

 今までラフムなど他人事でしか無かった人々に襲い掛かった悲劇を終わらせる為に、仮面ライダーバーンは、勇太郎は飛び立つ。

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