仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#36 熱風

 十一月三十日。午前十時十八分。

 東京都杉並区荻窪、JR西荻窪駅。

 

「オオオオオォオォ!!」

 

 ラフムの力の暴走によって雷電は全長五メートルの怪物へと変貌した。仲間の変わり果てた姿に、勇太郎は彼を止める決断をし、バーンイートリッジを起動させる。

 

《Burn》

 

 イートリッジを装填すると、ブートトリガーを引き抜いて天へと掲げる。

 

「……変身ッ!」

 

 ベルトへとブートトリガーを差し込み、その引き金を引く。

 赤い粒子が勇太郎の身を包みインナーとなる。粒子から形成された鎧が上から覆い被さり、頭部に仮面を付ける。

 

「正義を燃やしライドする仮面の戦士」

「その名をまさしく」

「仮面ライダー…バーン!」

 

 その体に炎を纏い滾らせると、暴走したサンダーラフムへと突っ込んでいく

 

「うおおおおおお!!―――!?」

 

 勢い良く跳躍したものの、サンダーの雷がその進路を阻む。強力な電撃がバーンを撃ち、叩き落とす。

 

「考えなしじゃダメ、か!」

 

 サンダーは街の破壊を開始する。その巨体が突撃するだけで周囲の建物は容易く崩壊する。その場にいた兵隊アントも一掃され、その場は閑散とする。

 一方のバーンはホルダーから別のイートリッジを取り出す。

 

「雷電、何としてでもお前を止めるからな…!」

《Rock》

《Form・Change・Rock》

 

 バーン・ロックフォーム。その堅牢さで雷を防ぎつつ一撃を与える。脚部へのパンチによってサンダーは体勢を崩すが、蜘蛛の頭部に当たる部分の触覚がバーンを突き飛ばし、瓦礫に埋め込まれる。

 

「パワー…じゃねぇか」

 

《Frog》

《Form・Change・Gatling》

 

 ガトリングフォーム。鎧の腕に武装されたガトリングガンで攻撃する。だが、大量の銃撃はその重量と反動が加わり、射線が逸れて建物にも被害が出る。そしてサンダーの電撃で武装が破壊される。

 

「トライ&エラーだ!」

《Wood》

《Form・Change・Wood》

 

 ウッドフォームはライドシステムを駆使して木の板を呼び出す。戦闘においてその意義を疑う能力だが、上空で大量に出現させる事で目くらましになる上、避雷の役目も果たす。

 

《Gemini》

《Form・Change・Gemini》

 

 ジェミニフォーム。左右非対称の鎧を装着し、鏡写しの様にデザインが反転した鎧のバーン分身体を生成する。本物の指示を受けて人間の様に活動するがその内部にはアンドロイドが収められている。その為バーン本人よりも耐久性と運動性能は低いが、相手の錯乱と手数の増加が可能だ。

 分身体がサンダーをおびき寄せ、先程ガトリングで誤射した建物へと誘導する。サンダーはその巨体で建物に激突し、その衝撃と銃撃を受けた際の亀裂が広がり、折れた建物の上部が分子体諸共サンダーへと倒れ込む。

 巨大な瓦礫を食らったサンダーは苦悶の叫びと共に行動を停止する。

 

 

「よし! こっからは俺が攻める番だ!」

《Snake》

《Form・Change・Snake》

 

 スネークフォーム、バーンラフムの初戦を飾ったかつての敵の力。右腕に装着された伸縮性のチューブ針がガス噴射により射出される。その針は瓦礫に埋もれて身動きの取れないサンダーに刺さる。蛇の持つ神経毒をモデルに開発された非致死性の麻痺効果を持つ薬剤、通称”ファーライズ”を注入する。のだが……。

 

「ウォォォオォオォォ!!」

「なッ!? ……効いてねぇぞ!」

 

 針によって刺激されたサンダーは興奮して暴れ始める。瓦礫を雪崩の様に崩して体を起こす。

 崩れながら吹き飛ぶ瓦礫に巻き込まれバーンもダメージを受ける。

 

「いたた……雷電のヤローやってくれるぜ……だが、こっちもまだまだ行けるぜ!」

 

 埃を払うと、バーンはホルダーから他のイートリッジを取り出す。それは楓のウイニングイートリッジだった。

 

「力を貸してくれよ、楓!」

《Winning》

 

 未だ眠ったままである仮面ライダーウイニング・楓の持つ風の力。彼の、大切な人の思いと力の結晶。

 仮面ライダーの名を継ぎし勇太郎は、彼の力も、受け継いでいく。

 

「お前の力で、雷電を止めるッ!」

《Form・Change・Winning》

 

 緑の鎧の、赤き戦士。仮面ライダーバーン・ウイニングフォーム。

 友の力を纏ったバーンはその風で瓦礫を吹き飛ばしながらゆっくりと歩んでいく。

 

 サンダーは体にまとわりつく瓦礫を力任せに振り払いながら落雷を発生させる。が、バーンはウイニングによる機動力強化を受け、捉え切れない。

 俊敏に動きながら落雷が落とされない地点へと移動しながら風と炎の力を使い、強力な火炎を手から放射する。その炎はサンダーを怯ませ、大きな隙を作る。

 

「今だ!」

《Winning・Crush》

 

 ウイニングの能力を解放し、天高く跳躍する。体に炎を纏わせながら放たれる飛び蹴りは、サンダーラフムの中心部を的確に狙う。

 

「お前を助ける為に―――お前を倒すッ!」

 

 隙を突かれたサンダーは落雷による妨害が間に合わず、真っ向から蹴りを食らう。その強靭な体で攻撃を防ぐが、徐々にバーンは力を増していく。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

「ライダァァアアァアァァ!! キィィィイィィィィイックッ!!!」

 

 バーンにウイニングの幻影が重なる。かつてサンダーを止めるに至らなかった楓の無念を、今ここで晴らす。その為に、バーンは、火島勇太郎は、サンダーの体を貫く。

 

 サンダーは苦悶の絶叫と共にその体を崩壊させ、粒子となって消えていく。消えた粒子から残った雷電が出て来ると、そのまま倒れてしまう。彼が手に持っていたサンダーイートリッジはラフムへと変貌した際の能力の負荷に耐え切れず砕け散ってしまった。

 

「雷電……良く、頑張ってくれたな」

 

 変身解除した勇太郎が雷電をおぶると、瓦礫の少ない安全な場所へと位置を移す。と、そこへバディの指揮車両が到着する。

 

「火島君!」

 

 辺りの悲惨な光景に眉をしかめながら藤村が出て来る。その姿を見て勇太郎は安堵の息をつく。

 

「女王は撃破出来なかった、と思います。雷電は俺達を裏切ったフリをして金剛に一撃加えてくれたんですが、アイツに暴走させらて、ずっと戦ってました」

「成程ね……ありがとう、火島君」

「まだ一息つけないですよ、先生! アントが増殖し続けている!」

 

 先程の戦闘で辺りにいたアントを殆ど倒した筈だったが、またも西荻窪駅を埋め尽くさんとアントが押し寄せる。

 

「早く女王を倒さねぇと!」

「それが、ここにいたアントの女王が、姿を消したのよ……粉塵に紛れてね」

 

 勇太郎が目を見開きながら、汗を垂らす。西荻窪駅にいた女王が全ての原因である。その個体が原初であり、ラフムに変貌した本人であるだろう。女王を早く倒さなければこの惨劇は起こり続ける。

 人々の命を救う為に勇太郎は再び立ち上がる。

 

「武蔵さん、皆を頼みます。俺は、女王を見つけて速攻でブッ倒します」

 

 雄叫びを上げながら変身し、アントを蹴散らしながら進むアントを見送ると、武蔵は後続のバディ機動隊と共に残存しているアントの掃討に繰り出す。

 

 

 携行していた拳銃を持ち慣れないながらもアントへと撃ち続ける藤村の元にバディ本部から連絡が入る。手を離せない状態ではあったが、何とか他の隊員にその場を任せインカムに耳を澄ませる。

 

「藤村技術顧問! 現在アントの襲撃が止まらず、霧島さんの入院している病院にまで迫っています!」

「そんな…! そしたらあそこの防衛は”千歳(ちとせ)さん”に任せるしか無いわ! 後は―――霧島君が起きてくれれば良いのだけれど……」

 

 雷電と約束した。響を助けると。この切羽詰まった状態に藤村は最早奇跡にすがるしか無かった。

 ウイニングのライドツールは指揮車両で保管していた為に彼が仮面ライダーに変身する事も叶わない。

 

(千歳さん…バディに来て早々こんな状況で嫌だろうけど、霧島君を助けられるのは貴方しかいないの!)

 

 藤村は苦悶の表情を浮かべながら空を仰ぐ。

 

――

 

 十一月三十日。午前十時三十分。

 楓と響の入院する病院にもアントの襲撃は迫っていた。

 一階のエントランスホールは既にアントで埋め尽くされたが、エレベーターで阻まれているために地下へはまだ辿り着かない。

 

 午前十時四十二分。

 それは偶然だった。上階からエレベーターが地下へと降りて来てしまったのである。

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