仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#38 防衛

 正体不明の神と名乗る存在。

 かつて自分が助けた人。

 今まで自分を支えてくれた人々。

 

 多くの者の力を受け、楓は復活した。今は異形の姿だが、ライドシステム構築前の初戦を思い出し奮起する。

 

「自衛隊の方々ですね」

「うわっ喋った!」

 

 部下の自衛隊員は慄きながら弾の無い小銃を向ける。と、上司は彼の小銃を下げさせると、ウイニングに再び敬礼をする。

 

「部下の無礼お許し下さい。私は陸上自衛隊北関東防衛局装備部試験射隊、上川(かみかわ)一等陸士であります!」

 

 上川が挨拶すると、部下の背中を叩き、彼にも自己紹介する様に促した。

 

「同じく、試験射隊、下関(しものせき)二等陸士であります!」

 

 彼らの挨拶を聞くと、周りが安全である事を確認してからウイニングが人の姿へと戻る。

 

「バディ機動部隊、仮面ライダー、霧島楓です。ラフムの力を持ちながら意思を保っている為に一応戦力として戦闘に参加しています。今回はご協力感謝致します」

 

 楓が手を差し伸べると、上川は握手を交わす。が、下関は少し抵抗を見せる。

 

「ちょっと待って下さい。アンタラフムなんすよね? 俺、ラフムが怖いっすわ」

「あー…ですよね」

 

 楓が困った顔をしながら頭を掻く。

 

「ラフムは、そりゃ怖いですよね。僕も、今こんな体になっている自分が怖いです」

「でも、どんな力でも、誰かを助けられるのなら、僕は怪物の力だって使いますよ」

「だから、握手はしなくても全然いいです、下関さん。ただ、僕は怖がられようと非難されようともラフムから皆を守るだけです―――」

 

 楓がそこまで言った瞬間、下関は強引に楓の右手を引っ張り、固く手を握る。

 

「悪かった! 楓!」

「例えお前がどう思われようとも誰かの為に戦う、その思いは俺達と何も変わらなかったんだ! 自衛隊もそうだ…違憲だとか武装集団だとか言われたって人の為に戦うんだ、お前は俺達と同じだったんだよ!」

 

 下関は自らの言葉を誤解だったと謝罪する。その熱い思いに楓は少し目を潤ませる。

 

「シモ! 楓! またヤツらだ!!」

 

 上川が叫ぶ方向を見ると、再びアントが迫っていた。先程掃討した筈だったがまだ湧き出て来る。

 

「生憎なんだが、俺達は弾切れ、武装はこの銃剣しか無いんだ」

「分かりました。そうしたら前面に僕が出て大半を殲滅します。その後で倒し損ねたラフムがいたらそっちで対処をお願いします。危険な仕事ですが、皆を守って生き残りましょう!」

 

 上川と下関が銃剣(ナイフ)を握って頷くと、楓はまたウイニングへと姿を変え、ラフムの大群へ突っ込んでいく。

 アントラフム一体一体は非常に弱く、常人のパンチ一発でその体を霧散させる程だ。ウイニング程の戦力ならば、その力はまさしく一騎当千と化す。

 増殖していったアントだったが、あっという間に消滅していく。その中にいる女王個体を倒すと、ウイニングは首を傾げる。

 

「この形の違う個体は…? ランダムに何体か見受けられたんですけどお二人は何か知りませんか?」

「バディから聞いている限りだと、どうやらコイツらは女王個体と呼ばれてるらしい。コイツらが普通のアント、兵隊個体を生み出し、目測五十分の一位の確率で女王個体も生んじまうそうだ」

「成程…そうしたら女王個体の殲滅から優先します。取りこぼし多くなると思うのでその時はお願いします!」

 

 ウイニングが飛び立つと、下関が少し溜息をつく。

 

「さっきから一体も逃がしてないんですけど、楓の奴……」

 

――

 

 午前十一時。

 東京都北区赤羽台。

 

 兵隊アントの進行が比較的軽微だった事と、付近に自衛隊駐屯地が所在していた事が幸いし、その被害は抑えられていた。が、警戒は怠らず、市井の人々ですら木の棒などの武器を携行して屋内に避難していた。

 この地に、全ての元凶たるアントが到着した。荻窪で粉塵から逃れた後、金剛が用意しておいたバイクを使ってここまで移動してきたのだ。

 彼女の目的は暁響の抹殺。金剛によると、雷電が裏切った為にその報復として行うらしいが、それが当初の計画に組み込まれていなかった事にアントは疑念を浮かべる。

 

(サンダーはもとより信頼に足らなかったでしょうにそこまで考えてなかったってコトよね…藤村金剛、あの男ホントにバカね)

 

 心の中で悪態をつきつつも指令は全うする。それに、響を報復として殺害する事にはアントも賛成であった。

 

(サンダーが絶望する顔、早く見たいわね)

 

 アントが舌なめずりすると、都立赤羽医療病院へと突入する。

 

「あっちょっとお姉さん! ここは危ないですよ!」

 

 丁度その場にいた下関がアントを引き止める。ドレス姿の彼女に違和感を抱いたが、それよりも人命を優先してここから離れる事を求める。

 

「いいえ、大丈夫よ―――私が”女王”だもの」

《Ant》

 

 アントはイートリッジを起動し、首元に触れさせる。目の前で起きている事に理解の追い付いていない下関はただその一瞬を呆然と眺めているだけだったが、そこにウイニングが飛び出して来て、下関を突き飛ばす。

 粒子を纏わせアントラフムへと変貌した彼女は、その爪でウイニングの胸を引き裂く。

 

 鋭利な斬撃にウイニングが怯む。その隙にアントは兵隊アントを生み出す。が、一体生成した所で再起したウイニングに消滅させられてしまう。それと同時にアントの足を引っ掛けて体制を崩す。

 

「舐めるなっ! この程度のケガじゃ僕は倒れないぞ!」

 

 先程の変貌から、このアントが全ての元凶であり、一番最初の個体である事を理解した楓はここでアントを撃退する事を判断しつつ、情報共有が必要だと考え、下関に言伝(ことづて)を頼む。

 

「下関さん! 何とかしてバディの人に、ここに最初のアントが出て僕が戦ってると伝えて下さい!」

「了解急ぐぜ!!」

 

 下関を行かせると、ウイニングはアントに対してハンドジェスチャーで煽り立てる。平手を内側へと折り曲げ、”来いよ”と誘い込む。

 アントを逆上させてここへ留める意図だったが、アントは冷静な判断をし、ウイニングから逃げる。

 彼女の目的は響の殺害と東京を混乱に陥れる事。直接響を殺して東京都民を恐怖で支配する。この災厄がアントの心を満たすのだ。それを実現させる為にここでやられる訳にはいかない。故に厄介なウイニングに背を向けるのだ。

 蟻の性質たる敏捷性と集団性は彼女の逃亡を助ける。周囲に残っていた兵隊アントは知能が限り無くゼロに近い為にこちらの複雑な操作を受け付けないが、移動させる程度の指令なら忠実に行動する為、兵隊共をウイニングの前に立たせて壁にする。

 

 ウイニングは次々と兵隊アントを倒していくが、アントの原初個体を見失ってしまった。通常女王蟻と言うものは他の個体よりも巨大であるが、ラフムにおける原初個体は、他の兵隊アントよりも小さい。その敏捷性と相まって、すぐに見失ってしまうのだ。

 

「逃げに徹したカタチをしてやがる!」

 

 ウイニングが最後に現れた女王アントを踏み潰すと、周囲を捜索し始める。

 

――

 

 午前十一時十一分。

 JR西荻窪駅前。

 

 自衛隊からの伝言を受けた藤村は勇太朗を呼び付ける。

 

「火島君、今霧島君が目覚めてアントの本体と戦闘しているわ! 現在赤羽の病院の前らしいからそっちに向かって!」

「行きたいのは山々なんですが、こっちはどうするんですか!」

「練馬駐屯地からの増援がすぐに来るそうよ!」

 

 それを聞いて納得した勇太郎はバーンの変身を解除すると、指揮車両へと乗り込む。

 

「レイラインで直行するわ。途中でライドサイクロンの支給が行われるから暁君と一緒に目的地へ射出するわね」

 

 雷電は体が回復し始め、ようやく意識を取り戻した為大護からライドサイクロンに関する説明を受けている。

 

「あそこって事は響も危ないんですよね」

「ええ。アントが直接そこまで来た理由は恐らく響さん、と考えられるわ」

「また俺のせいで響が危険な目に遭ってるのか……クソ!」

「よせ暁、ウジウジ考えたってしょうがねぇ」

 

 大護の励ましに雷電が頷くと、病院の方向へと視線を向ける。

 

 西荻窪駅のアントらを退けると、指揮車両を発進させる。と、入れ違いに自衛隊の装甲車が通る。

 それを見て安堵しながら、藤村ら一行はレイラインへと直行する。

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