仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#39 到着

 十一月三十日。午前十一時二十分。

 西武鉄道練馬駅直下、レイライン。

 

 射出用車両に乗ったバディ職員らと合流し、バーンと雷電は車両のコンテナ内から新しいライドサイクロンへと搭乗する。

 

「暁君、地上に出たらマニュアル通りに作戦を進めるわ。何か質問はある?」

「大丈夫だ。サンダーのイートリッジを失ったがサイクロンのイートリッジを装填していれば生身よりはマシな形態になる」

 

 雷電が鎧の無い簡素な変身状態を見回しながら言う。ライドサイクロンとの合体が前提とされる為に、通常のフォームで装着される様な装甲は存在しない。が、サンダーへの変貌が高リスクである雷電にとってはこの状態の方が射出時の負荷に耐えられると判断した。

 バディが所有する他のイートリッジを使用するプランもあったが、どうやらサンダーのライドシステムは若干手が加えられており、バディのライドステムとの同期が出来ないらしい。雷電が渡されていた”ブレード”のイートリッジは使用出来たが、雷電が使用を拒否した為に現状のプランを採用する運びとなった。

 

 

 変身したバーンとサンダーを乗せた射出用車両が地上に出る。西武練馬駅は比較的アントは少ないが、民間人からの視線が痛い。妨害が入らない内に射出プロセスを開始する。

 

「こちら火島、準備完了!」

「暁、準備完了だ」

 

「了解。仮面ライダーバーン、サンダーラフム、両名の発進準備完了。ライドサイクロン整備済、システム異常無し」

「座標指定完了、座標までの到達ライン演算開始…演算完了。ノードオンライン」

「発進システムスタンバイ」

 

「仮面ライダーバーン、発進許可!」

「サンダー……ラフム、発進許可」

 

「発進軸固定、ブースターオン。ライドサイクロン、発進します!」

 

 サンダー、バーンの二人が超高速で射出されると、辺りにいた人々もそれを見上げる。

 彼らと同様に空を見上げる藤村は、自分も人を助けたいと思いつつも誰かにその思いを託す事しか出来ないジレンマを抱えながらも、二人を見送る。

 

「頼んだわよ…火島君、暁君……!」

 

――

 

 午前十一時八分。

 

 ウイニングの元から退避したアント本体だったが、病院の入り口にて上川と対峙。彼を退けようとするもウイニングに発見され攻撃を受ける。

 

「観念しろアントラフム! アンタは素早いが攻撃力が無く小柄で不利だ! これ以上被害を出さない方が身の為だぞ!」

 

 ウイニングが啖呵(たんか)を切ると、アントが拳を壁に叩き付ける。

 

「悔しいわね……私の今の力じゃどのみち追い詰められるとは思っていたけど、覚悟が足りなかったみたい」

「!? 何の話だ!」

「私がラフムになると小さくなる理由、分かるかしら」

 

 アントが問うと、その体を覆う甲殻の継ぎ目から筋肉が膨張し、肥大化していく。

 

「能力を隠して相手を油断させる事、そして敏捷性とパワーが極端である為のコントロール」

「要するに、真の姿があるって事よ」

 

 体の大きさが先程とは比べ物にならないレベルに膨れ上がったアントは、十メートルはある自分の姿に溜息を溢す。

 

「はぁ……こっちの方が強いのだけれど、美しくないのよね…」

 

 その巨腕を軽く振るうと、病院の壁をいとも容易く破壊する。まるで柔らかいプリンを握る様に鉄筋コンクリートが崩れ去る様に上川、下関は開いた口が塞がらない。

 

「それにこれを使っちゃうと面白く無いわよね。”すぐにみんな死んじゃうもの”」

 

 アントが筋肉の膨張した二対の腕で地面を殴り付ける。その速度は凄まじく、瞬く間に辺りの土が抉れていき、衝撃で上川らが体制を崩す。

 

「上川さん! 下関さん!」

「逃がさないわよ、誰一人ね」

 

 アントの攻撃の矛先が二人の自衛隊員に向く。そのパンチが彼らを狙うが、寸前でウイニングが彼らを放り投げて回避させる。だが、ウイニングはその攻撃を食らってしまう。

 

「楓ッ!」

「僕は良いから逃げて下さい!」

 

 塵埃(じんあい)の中から出て来たウイニングは、左肩を攻撃され、骨と神経を傷付け左腕は動かなくなっていた。

 

「上川さん、下関さん! コイツは尋常じゃない! 他のラフムとは比べ物にならない! 早く……逃げてーーーーッ!!」

 

 ウイニングが叫ぶが、アントの猛攻は止まらない。ウイニングを狙いに定めて連撃を更に食らわせる。

 何とかウイニングは攻撃を回避していくが、それもいつまで持つか分からない。まさかあの小柄なアントラフムがこんな大変貌を見せようとは、誰も全く予想だにしていなかった。

 

 現状のウイニングラフムとしての能力ではアントに対抗出来ないと楓は覚悟した。だがここを守らなければならない。多くの患者や医師らが怯えている。

 

「なぁ、アント……お前は何故こんな事をするんだ!」

「何よ、まさか仲間を呼ぶ時間稼ぎのつもり?」

「―――かもな。まぁどっちにせよ僕は理由が知りたい。人を傷つけ命を奪うヤツの気持ちってモノをね」

 

 ウイニングの言葉にアントは高笑いを浮かべる。それはしばらく続いて、ようやく息が切れると、言葉を言い放つ。

 

「自分より弱いモノを無惨に破壊するのが気持ちいいのよ。ヒトは誰しも破壊衝動を持っているわ。それがどこに向くかの違い。私は他人をブチ殺す……さしずめあなたは正義を振りかざして”悪”をブッ飛ばすって事ね」

「お前と一緒にするな! 自分の気持ちを我慢出来ない弱さで他人を傷付けるな!」

「うるさい小バエね」

 

 アントがその四本の腕をウイニングへと食らわせる。何とかウイニングは回避したが、地面への度重なる打撃によって、病院の地下フロアが露わになってしまった。

 

「あら好都合。このままサンダーの妹ごと皆殺しにしちゃおうかしら」

 

 元々の目的であった地下への突入の手間が省け、アントは地下室へと攻撃を放つ為に全ての腕を引き、力を込める。

 そして腕を限界まで引き切った所で攻撃を放つ。

 ―――様に見えたが。

 

 

 アントの顔面へと、ミサイルが直撃したのだ。その砲撃によりアントは体制を崩し、力が抜けた為に攻撃は不発した。

 

「待たせたなぁぁぁ!! 楓ェェェェッ!!」

 

 戦場に勇太朗の声がこだまする。サイクロンフォームによる砲撃がアントを阻んだのだ。

 勇太朗の頼もしい叫びにウイニングは辛うじて動く右腕を大きく振る。

 

 無事着陸したバーンとサンダーはウイニングらと合流する。

 

「楓! ドタバタし過ぎて復活も喜んでられねぇ! 手短に状況を伝えるぜ」

「サンダーが仲間になった、ベルト持って来た、皆を助ける! おしまいッ、行くぞ!」

 

 そう言うとバーンはライドサイクロンに括り付けられていた楓用のライドツールを投げ渡すと、サンダーは変身を解除してサイクロンの簡易イートリッジをウイニングに投げ渡し、病院の地下へと侵入する。

 

「悪いが俺は響達の安全を優先する! そのデブ蟻野郎はアンタらで食い止めろ!」

 

 状況の変化に戸惑いを隠せないでいた楓だったが、やる事はハッキリしていた。

 一旦ウイニングへの変身を解き、ロインクロスを装着、ウイニングイートリッジを起動させる。

 

《Account・Winning》

《Winning》

 

「まだ説明が欲しいトコだけど、今は十分だよ」

「ありがとう勇太朗、それに…サンダー。この戦いが終わったら、二人にもっと沢山のありがとうを言わせて欲しい!」

 

 

 

「……行こう―――変身ッ!」

 

《Change・Winning》

 

 緑の鎧が楓の体を包む。そして瞬く間にその姿は仮面の戦士へと変わる。その雄々しい勇姿は、正義のヒーローの復活を体現していた。

 

 

「正義を叫びライドする仮面の戦士」

「その名をまさしく―――」

 

 

 

「仮面ライダー!!」

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