人々を救う為立ち上がった最初の仮面ライダー、ウイニング。
暫くの眠りを経て、ここに復活した。
ロインクロスの横には武装と共に千歳から託されたアイテムが格納されていた。
「仮面ライダァ? 鎧を着込んだだけで私に勝てる訳無いじゃない」
アントは溜息をつくと、ウイニングへとその拳を見舞う。が、ウイニングも負けじとイートリッジを交換する。
「Form・Change・Tackle」
ウイニング・タックルフォーム。猪の意匠を持った突撃型形態。その状態でアントの拳へと空高く突撃する。腕に装着された牙状の鎧がその巨腕に突き刺さる。その痛みによってアントのパンチが押し負ける。
「どうだ! 仮面ライダーはその拡張性が強みだ! 自分には無い力を引き出す事が可能なんだよ!」
アントがウイニングを睨み付けるが、先程まで隣にいたバーンがいない事に気が付き、周囲を見回す。すると、自分の真横、右肩にバーンがガトリング砲を持って立っていた。
「ガトリングフォームってな訳。食らっとけ!」
ガトリングの連続する銃撃はアントの顔面へと直撃し、その熱さと痛みにアントは絶叫する。その隙を見てバーンはサンダーへと連絡を取る。
「雷電! 避難は済んだか?」
「ここの地下病棟は特殊だ、ドでかい器具ごと動かさなきゃならねぇ。アントを動かした方が楽なんじゃないか?」
マジかよ、とバーンは肩を落とすが、アントの肩から降りると、ウイニングに一つ提案を持ち掛ける。
――
アントは巨大化した事によって圧倒的な力を手に入れたが、その欠点として再生力の低下が見られていた。その巨体を修復する為の力がどうやら足りないらしい。再び姿を小さくすればその修復力は通常のラフム並の驚異的な速度となる。が。
現状体を小型してしまえばその分戦闘力も防御力も大幅に下がる。逆に仮面ライダーらの追撃を許す結果となる事は明確だった。その為修復力を犠牲にして丸くうずまりながら防御に注力する。
「図体がデカいとそれだけ体を治すのに時間がかかるんだな…好都合だぜ」
バーンの声がその場に反響して聞こえる。まるで大きくなったアントの様に、巨大化した様に聞こえた。
アントが顔を上げると、先程垣間見せたバイクの変形した形態、サイクロンフォームであった。
今度はウイニングもサンダーのバイクを借りてサイクロンフォームとなっていた。二体の巨大メカはアントを囲むと、一気に持ち上げ始めた。
「アントラフム! 少しご同行願うぞッ!」
ウイニングが気合を入れる様に声を力ませながら叫ぶ。二体のサイクロンフォームはアントを抱えて上昇すると、アントを無理矢理移動させる。
「移動地点はさっき伝えた通りだ! あそこなら被害を最小限に抑えられる!」
バーンの指示に従い、二人は赤羽医療病院から更に北へと飛ぶ。その先にあるのは北区浮間と、埼玉県川口市。そしてその間に挟まる一級河川―――荒川。
人的被害の少ない荒川の、橋から離れた地点にアントを放り投げる。同時に二人の仮面ライダーはライドサイクロンの座席から立ち上がり、基本形態へとフォームチェンジする。
「行くぞ楓! このまま決めちまおう!」
「うん!」
《Winning・Crush》
《Burn・Crush》
「ダブルライダー……キーーーッック!!!」
二人は同時に能力を解放させ、アントへと足を向け飛び蹴りをする。お互いの風と炎が絡み合い、スペックを超えた威力と速度を叩き出す。その凄まじい必殺技に貫かれたアントはその粒子を爆散させる。
中から現れたアントの元の人物を救出し、アントのイートリッジを回収すると、丁度良く藤村からの連絡が届く。
「火島君、今東京中のアントが行動を停止して消滅しているわ! まさか原初個体を倒したの!?」
「はい、本人を保護してイートリッジも回収しました。ただ……」
バーンの言葉に続いて藤村もええ、と答える。
東京の町々への甚大な被害、そして未だ把握出来ていない死傷者の数。被害地域を見るだけでも目を覆いたくなる程の凄惨な状況であった。
「これからの復興も……していかなきゃ、ならないっすね、藤村さん」
「藤村さん?」
バーンが問うが、藤村からの返事が無い。忙しいだけ、と捉える事も出来るが、違和感があった。
「―――まずいわ火島君! こっちに藤村金剛が、現れたわ!」
ようやく藤村から返事が来たと思えば、恐ろしい報告が届く。バーンは落下していたライドサイクロンに急いで乗り込む。
「楓! 病院の方に藤村金剛のヤローが出たぞ!」
それを聞いたウイニングもライドサイクロンに乗り、二人はサイクロンフォームで急行する。
恐らく金剛の狙いは雷電の妹、響。アントが仕損じた裏切り者への報復を自ら執り行う、と言った所だろうか。
――
午前十一時三十一分。赤羽医療病院。
先の戦いの影響で瓦礫にまみれ、粉々になった病院にマントを羽織った黒い鎧の戦士―――藤村金剛が出現した。
その場に残っていた雷電、応援として駆け付けていた大護を含めたバディ機動隊。彼らが他の人々を守らんと金剛の前に立ちはだかる。
「何だ? 仮面ライダーでも無いお前らがここを守り切れるのか? やってみせろよ」
自らの力量に
「まぁ分かっているだろうが、俺の狙いはそこの裏切り者の粛清とソイツの妹の抹殺だ。こちらとしてもサンダーの態度には怒り心頭でな……お前らもコイツが信じられるのか? 昨日、一昨日まで敵だったコイツを?」
「おとなしくサンダーを差し出してくれればこの場はコイツと妹の命で済ましてやる。民間人には今日は手を出さないでおくと約束するぜ。どうだ? 悪くは無い交渉だろ、立場を右往左往させるコウモリ野郎の処理をするだけだからな」
どうだ? と機動隊に問いかけながら笑い声を上げる金剛に、藤村が言葉を投げかける。
「
藤村の叫びに金剛がその方向へと頭を向ける。藤村は非常用に携帯していた拳銃を金剛へと向ける。
「貴方はどうして兄さんの名を騙るの? いい加減その名前で悪逆非道を働くのはやめなさい…虫唾が走るわ」
「どうして? それは勿論お前の兄だからだろう。 それにこれは悪逆非道じゃない。仕事を全うしているだけだ」
「兄さんは例え天地がひっくり返ろうとも悪に
「だから言っているだろう……藤村金剛だとなァ!!」
金剛は一瞬で藤村との間合いを詰め、彼女の首を絞める。その力の強さに藤村は呼吸をする事が出来ず、金剛の鎧に包まれた金属製の腕を殴り続けた。例え出血しようとも、決して金剛への反抗を止めなかった。彼女の行動が不愉快になった金剛は更に拳に力を込め、彼女を殺害しようと図る。
「今お前は…俺の仕事を引き継いでいるらしいな。邪魔だよ、俺達の不利になる様な技術を進歩してくれちゃあな」
「ッ! ……!!」
「まだ抗うのか。非力な人間如きがラフムの力に勝てる訳が無いだろう? 分かりきった事をしやがって、お前馬鹿なんじゃ―――」
その時だった。金剛が会話に集中してる間にその距離を詰めていた大護による拳が、金剛目掛けて、飛んだ。
人間である大護の攻撃が、金剛に一矢報いたのだ。そのダメージは物理的な衝撃と共に、心理的な傷をも付けていた。
「な―――!? 俺を……殴った!?」
パンチを受けてその場に倒れ込んだ金剛がかすれた声で言葉をひねり出す。
「ああ。俺が、お前を、殴った。先生を馬鹿っつったからな」
「先生は馬鹿じゃねえ。俺達のサポートをしながらずっと兄貴の事を考えていたんだ。お前がその名前を騙るなら、それを認めてやれよ」
「いや待て……それ以前に何故人間のお前が、ラフムである俺に、ダメージを与えられるんだよ……?」
「毎日朝食にコーンフレーク山盛り二杯食べていたお陰だ」