仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#42 正体

「仮面ライダーウイニング・ウイニングボルテックス!」

 

 強敵・金剛を前にウイニングは更なる進化を見せた。

 それがボルテックス。雷の力を纏った仮面ライダーの新たな強化形態。

 

「藤村金剛、今日こそお前を倒し、その正体を暴く!」

「息巻きやがって! やれるもんならやってみろ!」

 

 金剛が懲りずに煽り立てると、彼の目の前、ゼロ距離にウイニングが迫っていた。目視出来なかった事に驚愕しつつも金剛は防御の姿勢を取ろうとする。だが、それよりもウイニングの動きの方が早い。

 

「ぅぐおおおおおおッ!!」

 

 気付けば金剛は胸にウイニングの拳が直撃し、吹き飛ばされていた。瓦礫にぶつかり続け、全身が痛む。

 

「っ…うう……」

「もうやめろ! お前に勝ち目は無い!」

 

 ウイニングの言葉に金剛は悔しさと苛立ちが脳を埋め尽くし、周りの地面を殴り続ける。

 

「黙れ! 調子に乗るな! 図に乗るなッ!」

 

 金剛が叫ぶと、上半身を覆うマントを脱ぎ捨てる。今まで殆ど見えなかった左腕には、見覚えは無いが、ロインクロスにも似た端末が取り付けられていた。

 

《Shadow・Enigma》

 

 シャドウ・エニグマ。左腕の端末上部のグリップを押し込む事でその音声が発生する。

 すると、金剛の体が真っ黒に染まり、影と同化する。その影はバーンの背後へと伸び、彼の背を取る。気配を察知したバーンはなんとか回避するが、今度はウイニングへと影が向かう。

 

「姿形が変わっただけで俺に勝てると思うな雑魚共が!!」

 

 影は凄まじいスピードでウイニングの影に触れると、一体化しウイニングの動きを封じる。金剛のいわゆる影化は同化した影の本人の動きを縛り付けるらしい。そして、相手の行動を支配し操作する。

 強化されたウイニングだったが影から体の動きを止められ、バーンへとその拳を向ける。

 

 が。ウイニングは動きを止め、金剛による操作を抑え付ける。

 

「藤村金剛……お前馬鹿だろ?」

 

 ウイニングの言い放った一言と共に金剛の力が弱まっていく。

 バーンがウイニングに注目すると、体に張り巡らされた金色の装飾から放電し、それによる発光が影を薄くしていっていた。

 

「形が変わっただけだとこの力を一蹴したが、その変化こそが進化であると見抜けないお前が―――」

 

 その強い光によって影が消え、そこに潜んでいた金剛も弾き飛ばされる。

 金剛が姿を現した瞬間を見逃さなかったウイニングは腕を振り下ろし、飛び出た反動で宙に浮いた金剛の体を地面へと叩き付ける。

 

「あの藤村金剛さんな訳無いだろッ!!」

 楓らが慕う藤村の兄。それがどんな形であろうと非道を行い、知能まで下がる。そんな訳が無い。

 藤村の涙を横目に、楓のその確信は、彼の名を騙る目の前の悪漢への怒りへと変わる。

 

「とどめだ……コイツは、ここで倒す!」

 

《Winning・Crush・Voltex》

 

 ボルトリガーを二回引く事によるウイニングフォームの能力解放と、それにプラスされるボルテックスの力。

 全身に取り付けられた装飾内部のコイルが高速回転を始め、電圧により動きの反射速度を高める。

 まさしく稲妻の如き速さで、金剛を四方八方から攻撃する。一方の金剛は反撃に転じようと体勢を整えるが、その瞬間に超高速の殴打が繰り出される。

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃああああああッ!!」

 

 最後にウイニングは天高く飛び、雷と風の力を足に込める。よろめく金剛は回避する間も無くその一撃を食らう。

 

「ボルテックスライダーキーーーーーック!!!!」

 

 ウイニングボルテックス渾身の蹴撃により崩れた瓦礫に埋め込まれた金剛は、人間の姿を徐々に取り戻していく。

 全貌が明らかになった金剛の顔を見て、楓と雷電を除く一同は驚愕する。

 

「オイ……アンタ―――」

「黒木査察官、じゃねぇか……」

 

 内閣府査察官、黒木陽炎。税金を防衛費に徴収するバディの動向を調査する為に遣わされた筈の黒木が、金剛の名を騙ってティアマトのラフムとして戦っていた。

 

「クロキ? 勇太郎の知ってる人なの?」

 

 ウイニングの問いにバーンは頷くと、変身を解除する。

 

「とにかく、戦いは終わった。さっさとコイツを捕まえて、イートリッジを回収しようぜ」

 

――

 

 正午十二時二分。赤羽医療病院。

 

 それからの事態収拾は迅速であった。金剛、と名乗っていた黒木に麻酔を投与した後厳重拘束しバディに連行された。彼の所持していた”シャドー”のイートリッジと左腕に取り付けられていた端末は藤村の研究室で保管される事となった。

 

 

「何故黒木査察官が兄さんを名乗ったのか、何も分からないわ…」

 

 作業が続けられる中、廃墟と化した病院に設置された仮テントで藤村は大護へと呟く。丁度休憩していた大護は、藤村の話をゆっくりと聴く。

 

「でも、彼が兄さんじゃないのは初めから分かってたわよ」

「雰囲気とかすか?」

「いいえ……兄さんって、左利きなのよ」

 

 そう言われれば、と今までシャドーとして活動していた黒木の様子を思い返すと、右利きであった。

 

「アイツは、金剛さんの物真似が下手だったって訳ですか」

「かも知れないわね。でも、もう一つの可能性として―――兄さんに成りすます事が彼の真の目的では無く、兄さんの名を騙っていたのが副次的なモノであった事も考えられるわ」

「難しい事は良く分かんねーすけど、まあ、あの悪党が金剛さんじゃなくて良かった、と俺は思います」

「……そうね。私もそう思うわ」

 

 藤村は少し微笑むと、支給されていた一杯の緑茶を飲み干す。

 

――

 

「改めて被害は甚大だな……」

 

 周りの光景に勇太郎は溜息をつく。が、すぐに楓と雷電の方を向いて満面の笑みを見せる。

 

「でも、楓が帰って来てくれた。雷電が仲間になってくれた。それだけでも俺は嬉しいぜ!」

「おかえり、楓! ようこそ、雷電!」

 

 二人は少し照れると、雷電が先に口を開く。

 

「まぁ、俺はこれからバディの方で事情聴取三昧だがな。……そうだウイニング……その、お前には、本当に迷惑を掛けた。今まで、済まなかった」

「それは良いんだ。それより君が、ティアマトとしてやって来た事を償う事が必要だ」

「償う……償うぜ。一生かけてでもな。俺は約束したんだ。バディの長官と」

 

 決意を表明する雷電に勇太郎がそうそう、と割り込む。

 

「俺も長官に聞かれたんだ、仮面ライダーとして戦う理由!」

「勇太郎も、暁君も? 僕も長官に”契約”を求められたんだよね……そうか、長官は、僕らを、仮面ライダーを繋げてくれていたんだ。その覚悟を、責任を…投げかけてくれたから僕達は正しい理由を以て正義の味方でいられるんだ」

「だから俺は、まだ……仮面ライダーじゃねぇって!」

 

 顔を赤らめながら言う雷電に二人は大笑いする。

 

――

 

 正午十二時十一分。バディ本部。指令室。

 

 ようやく事態の終結が見えて来た状況下、長良長官は内閣総理大臣、清瀬へと連絡を行っていた。

 

「―――ええ。まさか内閣府(こちら)の人間がティアマトだったとは……経歴は調査していた筈ですが、一体いつから黒木君はそちら側だったのか、全く見当も付かない状態です」

 

 清瀬はかしこまりながら長官に報告すると、一方の長官はメモを取りながら頷く。

 

「ご心配なく、総理。黒木査察官の件は私も御剣家と協力して調査に当たります。現状はまず新しい査察官の方を採用する他ありませんかね…私としては懐を覗かれるのはあまりいい気がしないのですが」

「それならば、本件を不祥事として、今後は私の権限で以て査察官の役職を廃止させて頂きます」

「……分かりました。そうしましたら、政府にラフムが存在したという事実を”消す”代わりに査察官の派遣を打ち止めて頂きましょう。財務省と防衛省にはまだ”懐”でいて(ご協力して)貰いたいですからね」

 

 長官の提案を汲むと、総理は連絡を切る。一仕事終えた長官はふぅ、と一息つくと椅子に背をもたれかける。

 

(ティアマトを止める為なら…国を脅してでもやるしか無いんだ)

(決して―――決して人の未来を終わらせやしない……!)

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