仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#44 加入

 十二月一日。午前十一時三分。バディ本部。聴取室。

 

 長官の無茶振りによる写真撮影を終え、再び拘束された雷電を、大護が聴取する。

 ライダー二人態勢の以後、ラフムを聴取する際は脱走防止の為楓か勇太郎がその場に居合わせる予定となっていたが、二人が藤村、千歳と共にライドシステムの調整を行っている事、相手が雷電である事からその防衛措置は必要最低限でも問題無いと判断されたのだ。

 

「それで、さっき聞いたのはお前の出自の話か。ティアマトに入った辺りの話は聞いたが、それからどうしていたんだ?」

「ティアマトで仕事をする様になってから……恩人に出会ったんだ。アンタ確か武蔵さんって言ったよな。その恩人、ティアマトの武装開発を行っていた爺さんもアンタと同じ武蔵って苗字だったな」

 

 大護が眉を動かす。その苗字と、武装開発と言う肩書に心当たりがあったが、事情聴取の場である事を意識して平静を装う。

 

「…ソイツの説明は後で良い。まずはこれまでの経緯と、お前が使っていた装備の詳細を教えてくれ」

 

 

 それから、雷電は自分の今までの事と、分かる範囲でサンダーの鎧や自分の使用していたイートリッジの説明を行う。が、彼は武蔵博士から詳しい説明を受けておらず、現状バディで使用されているライドシステムと同じ物である事しか分からなかった。

 

「教えてくれてありがとうな、暁。お前の妹さんも今頃別の病院で治療を受けている。楓が復活した時のデータから、体に危害を与えずに電気を取り除く方法もウチの藤村先生が研究している」

「こっちがありがとうだ。響を助けてくれて、本当にありがとう……そうだ、さっきの武蔵博士の事を説明しないとだ」

 

 大護が机の上で手を組み、雷電の目を見る。

 

「―――話してくれ」

「武蔵博士は、正体不明のティアマト武装開発者だ。俺のライドツールや鎧も博士がくれた。が、それが博士の開発した物なのかは分からない。あの黒木って奴が博士と協力して機械を操作してる様子は見たが、武装の調整位しかしていなかった、と思う。俺はその辺詳しく無いからな」

 

 大護は今までの聴取を後ろで記録していた職員に内容を確認する。それをまじまじと眺めながら唸る。

 

「やっぱり、これは俺の親父かもな」

 

 え!? と職員、雷電が驚愕する。顎に手を当てさする大護は、やたら落ち着き払っていたが、怪訝な表情を見せ始めた。

 

「あの親父、どこで何やってんのかと思いきやティアマトの博士と来たか。どこかで会ったらブン殴ってやる。…まぁ本当に同一人物かどうかは分からねぇな、藤村金剛の件もあるしな」

 

 大護が溜息をつくと、しかし、と続けて口を開いた。

 

「俺の親父は科学者だったが、他の研究者の特許を見ただけでコピーするんで”剽窃博士”とか呼ばれてたんだが、十年位前にいなくなっちまった。生真面目なんだがいつも楽しそうで俺は好きだった」

「雷電、お前の尊敬するその博士は、そんな奴だったか?」

 

 雷電は少し考えてから、頷いた。

 

「そうか……」

 

 大護が押し黙ると、雷電の聴取を切り上げる。

 

「事情聴取は終わりだ。しばらくは取り敢えずお前は拘置させて貰う。文句は無いな」

「ああ、それでも甘い対応な位だぜ。それはともかく、一つ良いか?」

「武蔵博士は今でもきっとティアマトにいる筈だ……いつか助けたいんだ、あの人も」

「勿論だ。ソイツはティアマトに与した人間として逮捕させて貰わなけりゃならねぇ」

 

 ありがとう、と雷電が頭を下げると、大護は少し微笑んだ。

 

――

 

 雷電の聴取と時を同じくして、バディ研究室に戻った楓と勇太郎は、藤村と共にメカニックとして働く新人、千歳 薫(ちとせ かおる)から自己紹介を受けていた。

 

「千歳 薫です、機械工学の研究を学生時代にしていたので、装備開発に携わらせて頂きます……その、霧島さんのお陰で私、死なないで、自分の力を活かせる仕事に就けました。霧島さんが、あの日勇気をくれたから……」

 

 千歳の言葉に楓が照れ臭そうに頬を掻くと、勇太郎が彼の肩をつつく。

 

「隅に置けねぇなぁ~~オイ~~?」

「なっ! ゆっ、勇太郎! 茶化すなッ!」

 

 若い女性に「あなたのお陰」と言われれば楓も照れる。それを笑う勇太郎は確かに茶化してはいたが、楓の戦いが誰かの力になっている事が嬉しかった。

 

「改めてよろしく頼むわ、千歳さん。貴方のサポートのお陰でボルトリガーは完成したわ。まだ能力を把握し切れていない極めてリスキーな代物だけど、きっとライダーの力になるわ」

「取り敢えず、能力の調査の為に動作確認していくわよ。霧島君、火島君、千歳さん、準備は良い?」

 

 三人が頷くと、これから始める研究の用意を始める。

 楓と勇太郎は実験実にてライダーへ変身し、千歳はデータの収集をする藤村の補佐を担当する。

 今回の調査とは、本来ボルトリガーの使用で想定していた、”様々なフォームでのボルテックスによる強化”が動作するかである。

 ボルトリガーがブートトリガーと近しい構造となっているのは、イートリッジを変更しながらの戦闘を考慮した為であった。それ故、今度はバーンがボルトリガーを使用し、バーンボルテックスへと変身する。

 

《Change・Burn・Voltex》

 

 赤き装甲に金色の装飾を纏い、荘厳なる印象がバーンの勇ましい容姿を際立たせる。

 

「あれ、頭部の仮面が僕の時と変わってる?」

「ええ、鎧を新造させて貰ったわ。現状霧島君のロインクロスから呼び出されるボルテックスがどこから来るのか分からないから火島君のロインクロスで呼び出す為の地点情報を記入できなかった事と、装着時の干渉が見られたから、バーンから呼び出されるボルテックスはバディで作った新しい物よ」

 

 バーンが感嘆しながら増加装甲が装着された頭部の角を撫でる。

 

 その後も調査は続き、ボルテックスの能力が実践投入できる物であると明確になったのだった。

 しかし、ウイニングのボルテックス変身時の動作ログを確認したが鎧が転送されてくる地点を特定する事は出来なかった。

 

「地点情報がロックされていて、パスワード入力が求められるわね……まるでこちらがボルテックスを入手する事を見越して相手の場所を悟られない様にしているみたいだわ」

 

 藤村が溜息をつきながらも、作業は終了となった。

 

「何はともあれ、ボルテックス及びボルトリガーは私達の心強い戦力よ。各種イートリッジの様に脳波伝達で転送されるわ。もし転送されなかったら他の人が使ってると考えて頂戴。複製出来なかったのよ」

 

 彼女の説明を受けた楓と勇太郎は、軽く頭を下げると研究室を後にする。

 そして二人が向かった先は、大護と雷電のいる保護室であった。

 

 この保護室では以前ラフムであった人が文字通り保護されており、通常の生活が可能になった人から解放されるが、ティアマトに属していた人間は余罪を含め日本の刑法を元に保護室内のホールを用いて裁判・判決が決定される。その後この保護室にて厳重に拘置・拘束がなされる。

 警視庁などその他機関の管轄となる筈の措置がバディで行われる理由としては、ラフムによる犯罪、テロ行為の処理がバディの管理となっている事にある。実際、対ラフムの主戦力、対抗策はバディに集中しており、人間の姿に戻っていたとしてもラフムに関する情報と任務、捜査権は全てバディに委任されているのだ。

 

 楓らが大護と合流すると、保護室で横になっている雷電に声を掛ける。それに反応した雷電はガラス越しの三人に歩み寄る。

 

「悪いな暁、生憎今日は客間が政府官僚の皆様で埋まっててな。一旦ここで待機させて貰っていた」

「それはさっき聞いてたからな、一生ここでもおかしく無い位だろ」

「いや、逆にそこにいて貰う方が困るぜ、お前はここの立派な戦力だ」

 

 大護が保護室の鍵を開錠し雷電を出す。ようやく開放された雷電は気だるそうに肩を回す。

 彼の無事を確認すると、大護は楓の運んで来たアタッシュケースを見ると、何かの合図の様に頷く。

 

「暁君、これを」

「ああ、……開けて良いのか?」

 

 楓から手渡されたアタッシュケースを怪訝な表情で見つめる雷電。彼の問いに楓が頷くので、恐る恐る雷電はアタッシュケースを開く。

 

「…コイツは」

「そうだ雷電、お前のライドツールだ。ボルトリガーから雷のエネルギーを複製出来たからそれをブランクイートリッジに流し込んで、前にブッ壊れたお前のイートリッジを復活させちまったのさ」

 

 勇太郎の説明を受け、雷電は自分の新たなライドツールを抱きしめる。

 

「ありがとう、皆……俺はようやく、俺を信じてくれた皆の役に立てるんだな」

 

 雷電の目は、今までの敵として戦って来た頃とは打って変わって、正しき道を行く、”仮面ライダーの目”をしていた。

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