十二月二日、午前十時。城南大学の一室。
丁度午前中に講義の無い河森、境ら写真サークルは、本日も仮面ライダーに関する情報を集めていた。
「なぁ境、今思ったんだが、俺達のやってるサークル活動って写真サーってよりかは新聞サーだよな」
「良いじゃない、楽しいんだもの。ただ写真を撮るだけじゃなくて、その写真の背景、ストーリーを表現したいじゃない。結果見出しが付く訳よ」
「まあ、その心意気は素敵だがな、見出しのセンスは考えるべきだよな」
そう言うと、河森は雑誌のスクラップを再開する。境も、頬を膨らませながらも河森と同様のスクラップ作りに手を付ける。すると、河森がおい、と少し乱暴に境を呼び付ける。その粗暴な態度に苛立ちを覚えながらも境が彼の方向へ体を向けると、河森は雑誌の記事を見せる。
「”仮面ライダーは怪物!?”だってさ。結構前の記事だが、やっぱりこう言う疑念が世論なんだな」
「ええ、仮面ライダーやバディに対する懸念は後を絶たないわね。ワイドショーでバディを批判しなかった番組はこの日本に無いでしょ」
実際そうだった。仮面ライダーとしての使命に奔走する彼らの知る由では無いだろうが、世間はどうしても彼らを疑っている。
御茶ノ水と駒込でのウイニングの暴走、それに多くの死傷者を出した”ラフム事変”は未だ尾を引いており、仮面ライダーの行動に対する理解は少ない。
「ラフムもそうだけど、みんな未知が怖いのよ」
「ああ……こないだのラフム事変の時、皆がライダーを倒そうと、してたんだってな」
黒木の宣言によりライダーを倒せばラフムの侵攻が止まると考えた市民らは、手に持つ物を武器にして、目の前のアントラフムでは無く通りがかった仮面ライダーバーンに敵意を向けた。
命に関わるとは言え、人々を襲う敵の言葉に惑わされた市民の行動に、心を傷付けられた人も多かった。
ラフム事変による被害は、東京の物理的な損害のみならず、その様子を見ていた日本中の人々にまで及んでいた。
「俺達はアントの被害地点から離れている文京区にいたからまだ何とかなったが……今も中央・総武線は完全に運行停止中、そっちのルートの人達の振替輸送は続いてるし、東京で被害を受けなかった街はどこにもねぇ」
河森が溜息をつくと、スマホのテレビ機能でワイドショーを見ると、丁度仮面ライダーが戦闘を行っていた。
「見ろ境! ライダーが、戦ってる!!」
――
午前十時五分。
東京都板橋区上板橋。東武東上線上板橋駅。
アントの侵攻の爪痕が未だ残るこの場所にて、コードネーム”ヘッジホッグラフム”が出現した。
このオリジン個体はアントの襲撃で殺害された人物がラフムに覚醒したとされる希少なケースであった。
ラフム事変から二日経過した今になってヘッジホッグは発見されたが、変貌を遂げたのは元の人間が死亡してからすぐの事であるとの推測されており、この近辺は瓦礫によって救助隊が入れるまでに時間を要した事が報告されている。
つまり、二日近くもの間、ラフムとして意識の無いままヘッジホッグは暴れていた事になる。
「僕らみたいに怪物になってしまった人がまた出てしまった、って事か……嫌になる」
「だったら倒して助けるしかねぇ、今の俺達に出来る事はそれ位だ」
「今回は俺も戦闘に参加する、さっさと終わらせるぞ」
三人の仮面ライダーは瓦礫を破壊しながらこちらへと向かって来るラフムに立ちはだかる。
「暁君、ライダーとしての名前、決まった?」
「ああ、決まったぜ。”ありきたりなヒーロー”として戦う覚悟もな」
「それならオーケー、行くぜ!」
アタッシュケースからライドツールを取り出した三人がそれぞれ腰に装着する。
《Account・Winning》
《Account・Burn》
《Account・Thunder》
ロインクロスから三人それぞれの変身待機音が流れ、全員でブートリガーを一斉に構える。
「変身ッ!!」
三人による同時変身。風、炎、雷。それらの性質を持った力が鎧となり装着される。
「Change・Winning」
「Change・Burn」
「Change・Thunder」
変身完了した、仮面ライダーウイニング、バーン……そして。
「雷電、お前の、仮面ライダーとしての名前、高らかに名乗っちまえよ」
バーンに変身した勇太郎に背を押され、雷電は新たな自分の名を叫ぶ。
「良いか? 良く聞け―――俺はもうサンダーじゃねぇ。俺は……ティアマトの計画を全力で阻む”
「怪物共が予想だにしなかった裏切り者、だったら俺はまさしく青天の霹靂って事だ…そこからもじって―――」
「仮面ライダー
仮面ライダー霹靂、それが三人目の仮面ライダー。
霹靂はこちらへ飛び掛かるヘッジホッグに、バレットナックルから電撃の弾丸を放ち退ける。
一方のヘッジホッグは相手が遠距離攻撃を用いた為、こちらもと言わんばかりに全身の針を射出する。
《Winning・Attack》
ウイニングによる能力解放状態、ウイニングアタックによって巻き起こされた風がヘッジホッグの針を吹き飛ばす。
「アイツの針、厄介だな……取り敢えずフォームを変えるぞ! 雷電はロックで岩の壁を作って、俺はタックルになって敵の針攻撃が止んだら壁に突進して岩を砕いてぶつけてやる、最後に楓はボルテックスで相手に一撃加えてくれよな!」
霹靂は頷くとホルダーからイートリッジを取り出す。改良が進みバディのライドシステムに適合した霹靂は、今まで使用出来なかったバディ保管のイートリッジも使用可能となっていた。
《Form・Change・Rock》
《Form・Change・Tackle》
バーンと霹靂、二人がフォームチェンジし、先程の提案通りに事を進める。バーン・タックルフォームの突進による
《Voltex》
ボルトリガーを起動させ、ロインクロスからブートトリガーを外し、そこへとボルトリガーを装填する。
そしてボルトリガーの引き金を引くと、電撃がウイニングの全身を包む。
《Change・Winning・Voltex》
ウイニングボルテックスに強化変身が完了し、ヘッジホッグへと早速一撃を与える。
「雷纏いライドする仮面の戦士」
「その名をまさしく…仮面ライダーウイニング・ウイニングボルテックス!」
自らの名を掲げたウイニングボルテックスは、雷の様な速さでヘッジホッグへ連撃を加える。
雷の力を内包したその攻撃はヘッジホッグを感電させ動きを止める。
「今だ!」
三人の叫びが重なり、バーンと霹靂は基本フォームに戻ると、ウイニングボルテックスと共に能力を二段階開放し、空中へと跳躍する。
《Burn・Crush》
《Thunder・Crush》
《Winning・Crush・Voltex》
「うおりゃぁぁぁぁッ!!」
ウイニングボルテックス、バーン、霹靂のトリプルライダーキックは三方からヘッジホッグの体へと全力の飛び蹴りを見舞い、爆散させる。
その勇壮なる勝利に周りで待機していた救助隊らは歓喜する。
彼らの活躍を見守っていた境と河森らも胸を撫で下ろした。
「境……例え世論が仮面ライダーを恐れていたとしても、ラフムによる被害を最小限を食い止めているのは紛れも無くライダー、そしてバディなんだ。俺は、まだこんな写真サークルの人間だが、それを伝えていきたいって、改めて思ったぜ」
「…私もよ。ライダーの活躍と功績は、写真を撮る―――過去を未来へと残す人間の誇りとして正しく、伝えていかなくちゃいけないわよ」
二人は決意を固めた表情をお互いに向け、微笑み合う。
――
十二月二日、午前十時二十七分。
バディ本部地上階、雑居ビル前。
「いや~まさかバディの本拠地を突き止めるのにこんなに時間がかかるとはねぇ」
ビルを見渡しながら、スカジャンを着た少女が呟く。彼女と共にいる大柄の男性、学生服の少年が少し溜息をつく。
「しょうがないよ、それよりもお迎えに行かないとね」
「俺は好かんがな、あの男は」
気乗りしない大柄の男性だったが、二人に合わせてバディ本部へと入っていく。