仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#49 不屈

 十二月二日、午前十時五十八分。

 バディ本部消滅の直前。

 

”聞こえてるか分かんねーが伝えとく、今から機動隊と合流してお前らを移送させる。ちょっと待ってろ”

 

 ユートピアの能力により身動きが取れなくなったウイニング・バーンに雷電がそう語り掛けその場を去ってからしばらくの時間が経っていた。

 雷電が機動隊と合流してすぐ、本部内に長官の声が響き渡った。施設を爆破する旨のそのアナウンスは、未だ施設に残る人員を一気に焦燥させる。

 

「今のアナウンスは……恐らくティアマトが重要部に侵入して来たと捉えて間違い無いわね。……私達も退避する必要があるわ」

「だがまだウイニングとバーンが!」

「二人はまだライダーシステムに変身した状態なのよね? それなら装甲がある程度防御してくれる上、ラフムの身体能力で生存できる可能性を高めているわ。今は生身の貴方の方が危険なのよ」

 

 藤村に諭され、押し黙った雷電は奥歯を噛み締めながら指揮車両で待機する。苦渋の選択を迫られた中で自分の身を守る判断を出来た彼に、藤村は感謝の言葉を述べると、機動隊全員に退避を命ずる。

 

「バディ戦闘指揮官として命令します。これより全員、駐車場に直結するレイラインから退避し、自らの身を守って頂戴。不安になる気持ちも分かりますが、恐らくこれは敵ラフム侵入後の情報漏洩及び残存している凶悪ラフムの奪還を防ぐ為の措置です。今は長官の判断を信じましょう」

 

 施設内が揺れ始める。自爆装置が起動し出したのだろう。機動隊は急いでその場を後にし、後ろから聞こえて来る重い破壊音と爆発音が遠くなるまで走り続けた。

 

(ウイニング…バーン…俺の為に戦ってくれたアイツらが死ぬのはイヤだ、無事でいてくれる事を祈るしか出来ねぇのが辛いが……そんなヤワな奴らじゃない筈だ)

 

 雷電は助けられなかった二人の事を考えると、胸が苦しくなった。妹を助ける為に悪に与した自分の愚行を許し、導いてくれた先輩達。いつか彼らに恩返しが出来る様にと雷電は心より願った。

 

 レイラインを進んでいると、前方に一台のセダン車と人影が見えて来た。この地下道路網に立ち入れるのはバディと自衛隊の一部部隊、そして御剣家の人間に大分される。目の前の彼らは黒いスーツを身に纏っており、その様相から御剣家の使用人である事が一目で分かった。

 

「藤村さん、あの人達は一体……」

 

 バディに所属したばかりのメカニック担当者である千歳は、まだ御剣家の事について詳しく聞かされておらず、物々しい雰囲気を醸し出す彼らに少し不安の視線を寄せた。

 

「私もあまり話をした事が無いから何とも言えないけど、彼らはバディの協力者であり、ここまでの技術を開発する為の資金援助をしてくれたのよ。安心して良いわ」

 

 指揮車両を停車させると、藤村は現場の代表としてスーツ姿の御剣家の人間と接触する。

 

「藤村榛名様、我々の事は存じ上げているかと思います。現状バディ本部は施設が崩壊し、組織としての機能が瓦解した状態にあります。これからは我々の邸宅にてバディの機能を代替して頂きます。ご案内致しますのでご同行願います」

「ありがとうございます。…バディの崩壊、きっと状況は貴方がたの方が良く知っているでしょう、目的地に到着次第詳しい事を教えて下さいね」

 

 スーツを着たその男は静かに、そして強く頷くと近くにあったセダン車に乗り込む。それと時を同じくして藤村も指揮車両に戻ると、発進するセダンを追いかける様にしてそれぞれの車両が動き出す。

 

――

 

 二時間半程経過した頃に、それぞれの車両が広大な地下駐車場に到着する。一行が出て来た通路の他にも何本かのレイラインが伸びており、常に何台もの車両が行き来している。そのせわしなさから、御剣家の邸宅である事は容易に想像がついた。御剣家の人間は常にラフムの発生を監視しており、彼らの行動範囲は世界中に渡る。それ故に本拠地たる邸宅ではせわしなく使用人が行動している事も納得出来るだろう。

 

「皆様、これからお嬢様にお会いして頂きます。ご案内致しますのでこちらへどうぞ」

 

 セダン車から降りた使用人が一行を連れ駐車場を離れる。

 邸宅とは言っていたがその施設内はバディ本部に良く似た構造になっており、複雑かつ広大であった。

 

「ところで藤村さん、”お嬢様”ってのは……?」

「御剣家の当主、御剣吹雪様の事よ。少女の姿をしている事からそう呼ばれているけれど、何故その様な姿なのかは、分からないわね」

 

 藤村は勇太郎の聴取から得た情報のみではあったが、知りうる情報を雷電に共有する。彼の理解出来ない情報も含まれていたが、大体の事を知る頃には御剣家当主の執務室に到着していた。

 

 使用人が扉をノックするとどうぞ、とか細く透き通る様な声が中から聞こえる。それを受けた使用人は外開きの扉を開け、藤村らの入室を見送ると廊下へ出て待機する。彼らは執務室には入らず客人と吹雪による対話が出来る様にしているらしい。

 

「初めまして、バディの皆様」

 

 凛とした口調でそう言い放った彼女こそが、御剣吹雪。

 清楚と言う言葉が最も相応しいと感じられるその容姿と出で立ち、そして彼女から発せられる威厳がその場の全員を黙らせた。その佇まいのみで一行は、彼女が幼い少女の姿である事を疑う余地も無くこの規模不明の組織の長であると思えた。

 

「―――初めまして、御剣当主。私はバディ技術顧問の藤村と申します、この度はご協力頂きありがとうございます」

 

 意を決した藤村が先陣を切って挨拶を交わし深く頭を下げると、吹雪は微笑みながら固くなさらずに、と言葉をかける。

 

「落ち着いてお話する時間もありませんわね、まずはお約束していた現状の報告を」

「バディ基地はティアマトのラフム三体に襲撃され、施設に侵入されましたわ。彼らの侵入目的は恐らく収容中のティアマト構成員の奪還、それを阻止する為に衡壱は基地を爆破しましたの……その際我々が救出出来たのは貴方がた機動隊、オペレーター陣のみですわ。バーン、ウイニング…衡壱はまだ発見出来ていません」

 

 衡壱―――聞き慣れない名前に雷電は小声で近くにいた大護に誰なのか問う。彼が長官であると知った時、理解した後、長官が行方不明である事実を突き付けられた。

 

「長官は結局逃げらんなかった、って言うのか……」

「現状はそう考えるのが、妥当ね」

 

 そう答える藤村も不安そうな表情を見せていた。

 

「現在も使用人が総力を以て捜索を続けています。全国各地のラフムを監視するその”鷹の目”をどうか信頼して下さいませ」

 

 そう語る吹雪に藤村は少し安堵し、次の話題へと進める。

 

「そうしましたら他の人員の行方はお任せして…次は我々が今、出来る事をやるべきです。まずはバディとしての機能の復旧を急ぎたいのですが……この邸宅の構造から察するに、屋敷の下は―――」

「バディと同様の施設、システム、機能を有しておりますわ」

 

 吹雪の言葉によって藤村の想像は確信に変わった。長官、もしくは目の前の吹雪はバディが襲撃される可能性を見越して、第二の基地と出来るこの場所を残していたのだ。バディ本部にもしもの事があったとしても早急にラフムに対処出来るこれらの施策に藤村は感嘆すると共に彼らの築き上げた組織の大きさに脱帽した。

 

「御剣当主、ここまでのご準備、誠にありがとうございます。今我々はバディの残存勢力として、本部基地を襲撃したバディの捜索及びラフムの出現への対処…そして、ティアマトの技術提供者を追います」

「分かりましたわ。ですが今はまだライドシステムのバックアップが終了しておらず、基地で一緒に爆破されたライドツール、イートリッジ、ライダー用の装甲等、多くの武装を失ってしまいましたわ。ですから、ライドツールに関してはほぼ一から造り直す必要がありますわ」

 

「一から……」

 

 ライドツールの回復に時間を要する事を知った藤村が肩を落とすが、その肩を大護が叩いた。

 

「手伝いますぜ、先生」

「俺もだ、このままじゃいても立ってもいられねぇ」

 

 雷電も賛同すると、藤村は先程の不安は嘘だったかの様に笑顔で吹雪へと強い視線を向けた。

 

「一から…上等です。我々バディは、諦めません」

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