仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#4 決意

「―――駄目だァ」

 

 実験開始から三時間。藤村の指示通りにやっている筈だが全くもって成功しない。

 

――

 

 時は遡り三時間前。

 

「私の指示通りやってみて」

「はい!」

 

 藤村はまずライドツールの収納されたアタッシュケースを楓は開封する。

 中には先述のベルトと、黒鉄色のカートリッジが入っていた。

 

「あの藤村さん、このカートリッジ的なモノは何でしょう?」

「それはエレメンタル・カートリッジ、略してE(イー)トリッジよ。ラフムから抽出された粒子の入ったソレをライドツールに挿入して力を与えるの」

 

 ラフムから抽出された粒子、そう聞いた楓はえ? と聞き直した。

 

「その粒子って、どうやって取り出したんですか?」

「ああ、それね。ラフムが人間の姿に戻る時にその力が欠片となって一点に戻る力を応用してその力を収集した物なの。霧島君もラフムから戻る時にそのアタッシュケースの中にあるブランクイートリッジを使えば霧島君のラフムの粒子を持ったイートリッジが完成するかも知れないわ。と言うかそれが無いと他のイートリッジも使えないみたいだし」

「へぇ…それじゃあ、試してみますか!―――」

 

――

 

 時は現在に戻る。楓は体内からイートリッジの元となる粒子を取り出す為に体中に力を込めるが、粒子が発生する様子は全く無い。

 一度ラフムに変身してみるも、変化は起きない。

 

「一体どうするべきなんですかねぇ?」

「私も知りたい所だわ……」

 

 藤村と楓は同時に溜め息をつく。全く先の見えない状況に流石に落ち込む他無かった。

 

「やっぱり僕は力になれないんでしょうか…」

「霧島君、それは違うでしょう! あなたはここにいる義務と理由があるからここにいる。でしょ?」

「そう、でしたね。すみません…じゃあ続けます!」

 

 楓はそう呟くとまた実験を試みる。彼のその姿に藤村は何か重たいモノを感じた。

 

(家族や友人を失くしたばかりなのに彼に気を遣わせてしまっているわね)

「…取り敢えず彼の自由を確保しなきゃ」

 

――

 

 それから更に暫らく。

 バディ基地内の休憩室で二人が休んでいると、長官が軽く挨拶しながら彼らの隣に座る。

 

「楓君。君のこれからの事なんだが―――」

 

 ここまで長官が言った所で、藤村がそれを遮り言い放つ。

 

「その事ですが、彼に外での行動を解放してもよろしいと思います!」

 

 藤村が楓の自由を懇願する。それに対し当の楓、そして長官も驚きを隠せずえっ、と言葉を返した。だが、長官はすぐにいつもの爽やかな笑顔に戻った。

 

「丁度私もそう言おうと思っていた所だ。楓君のこれからの行動を保障しよう」

 

 本当ですか、と楓が問う。すると長官は大きく頷く。

 

「まぁその前にちょっとやって欲しい事があるんだよね」

「やって欲しい事? またですか?」

 

 楓が復唱してみるが、さっぱり分からなかった。

 

「これから分かるよ」

 

 またも所長は爽やかな笑顔を向ける。

 

――

 

 気付けば楓はバディ基地の広い構内を進んでいた。以前見た場所とは違うまた新たな光景に目を奪われる。

 と、行く先々で楓に声を掛ける人がいた。それはよろしくだとか、頑張ってねだとか、何気ない言葉だった。

 

 案内されるがままに向かうとそこはバディの機動隊員達が集まるミーティングルームにだった。

 長官が語った”やって欲しい事”。それは、共に闘う機動隊員への挨拶だった。

 

「彼は霧島楓、初めて人類と意思を交わし、人類の味方となったラフムです」

 

 藤村がやや仰々しく言い放った。それに対し機動隊員らから厚い拍手が手向けられる。ここで藤村にポンと背中を叩かれ、楓が前に出る。

 楓が振り向き、藤村を見ると彼女は挨拶して、と言わんばかりに頷いていた。それに従い楓は口を開いた。

 

「どうも…ご紹介に預かりました、霧島です」

 

 控えめにそう言いつつ楓は礼をした後に更に話を続ける。

 

「一つ質問があります。何故皆さんは…ラフムである僕を認めてくれるのでしょうか?」

 

 唐突に言い放った質問に皆が注目する。

 

「ここに来るまでに様々な方が僕を見て、笑顔で、言葉を掛けてくれました。それが、とても不思議だったんです。”僕はラフムなのに”って」

 

 楓が一旦話を止めると、その場にいる人々の顔を見渡す。

 それぞれの人が神妙な面持ちをしているが、彼を侮蔑する様な表情は見せず、ただ彼の言葉に聞き入っていた。

 バディ職員らの気持ちを少しだけ汲み取ってから楓は話を続ける。

 

「ラフムは、皆さんの仲間を殺し、意味も無く暴虐を繰り返す異形です。それがいきなり人としての意思を持ち、ラフムと戦うと言ったからって恐怖や憎しみは消えないでしょうに……現に僕は、苦しいです。大切な人を奪ったラフムに、自分が変身してしまった事が」

「―――バーカ、そんだけ考えてる時点でお前は人間だ」

 

 悲しみを疑問と共に吐露する楓にそう答えたのは、武蔵大護。楓が昨日助けたバディの機動隊員である。

 彼の発言に楓はどう言う事ですか、と静かに問うた。

 

「お前は自分はラフムになってしまったと嘆いているが、どうしようと悩んだ結果誰かを助ける為にその力を使っただろ? それのどこがラフムの…怪物のやる事なんだよ? …お前は人として泣いて笑って、人助けをしてる、それは立派な人間だ。図体がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。今ここにいる、勇敢なヤツを称えてんだよ、皆」

「僕が、立派な…人間?」

 

 楓が目を見開いて小突かれた様な表情で武蔵を見る。

 

「お前はラフムと戦えるラフムの力を有した唯一の人間なんだ。お前の力だけが今の俺達の頼りなんだ。だから、今のお前の正義を皆が信頼していると言っても過言ではない」

 

 自分の正義を皆が信頼している…。

 その言葉に楓は気付かされる物があった。

 自分を人間として見たバディの職員達。自分の力を必要だと言う武蔵。

 戦う勇気をくれた長官。そして自分を霧島楓として協力を仰いだ藤村。

 

 ここで出会った、新たな大切なモノに楓は気付いた。

 

「……本当にありがとうございます」

 

 滲み出て来る涙を拭って楓は再び礼をする。

 

――

 

 それから程無くして楓はバディ職員用のマンションで生活する事となった。

 衣服も一応に支給され、家族を失った彼の衣食住は保証された。

 

「ところで霧島君、こうなった以上これからもバディの招集には応じなくてはいけないけれど、大丈夫かしら?」

 

 藤村の問いに楓はええ、と即答する。

 

「ここまで良くしてくれて、恩返しのつもりで…あと正義のラフムとして。僕は頑張ります」

「それは良いのだけれど…今まで学校に行けていなかった様だから」

 

 楓の住民票を確認しながら藤村が言う。と、楓が照れながら頭を掻いた。

 

「あ、はい。今まで失念していましたが…問題無いです」

「そう、それならオッケーね。今までありがとう、霧島君」

「これからもよろしくお願いします、藤村さん」

 

 そう楓は言うと、藤村と握手を交わす。

 

――

 

「―――行動開始だ、フロッグ」

「あいよ、火の粉払いなら任せろ」

 

 夜の街に佇む廃墟にて、その会話は行われた。

 黒の鎧に身を包んだ謎の男が、フロッグと呼ばれるもう一人の若い男に伝える。フロッグは黒鎧に手を差し伸べ、何かを渡す事を頼む様にハンドサインを送る。

 

「ああ、コイツだ」

 

 黒鎧は手にしていたアタッシュケースを開いて中の物をフロッグに渡す。

 それは、フロッグの”イートリッジ”であった。フロッグはそれを貰うとスイッチを押して起動させる。

 

《Frog》

 

 フロッグイートリッジの起動を確認し、フロッグは悦に浸る。

 と、イートリッジが体内に吸収され、そこを起点にして粒子が飛散しフロッグの体を包む。瞬く間にフロッグの体は異形と化し、蛙を模したラフムが誕生する。

 

「霧島楓……殺す!!」

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