#71 桜島
十二月六日、午前七時。
桜島に集結したバディ、警察、自衛隊らによるティアマト拠点突撃作戦、通称”桜島決戦”が開始された。
まずは各ライダー、ラフムらを隊長としたAからEまでの部隊を編成した。
ボマー、バーンのE部隊は戦闘を装い近隣住民の避難を促した。
二か所発見された脱出路にはそれぞれ霹靂のC部隊、バットのD部隊を配備し、住民の避難完了後にオイオノスのA部隊、アイアスのB部隊が拠点正面から突入を開始した。
突入開始の報を受けたE部隊はそのまま待機、ラフムとの戦闘が勃発した際にそちらへ急行して加勢出来る様に準備と補給を進める。
「これより拠点への
アイアスの稼働耐久性を考慮し変身しないままで先行突入する大護による合図と共に多くの人員が拠点へと侵入する。
一方のC、D、E部隊は予定時刻である事を確認すると戦闘態勢へと移行する。
「変身」
《Change・Thunder》
仮面ライダー霹靂に変身した雷電はふと気が付いた事があり藤村へと連絡を取る。
「なあ藤村さん、今更聞いて悪いが、俺達が今待機してる脱出用出口から突入して内部で追い詰めるってのは無理な話か?」
「良い質問ね暁君。でも今回の場合は外で待機していた方が良いのよ。この建物は外から見える部分は一階までしか無く、恐らく地下室が存在しているわ。その状態で全員で中へ侵入してしまうと内部が人で溢れ返って混乱を招き、その隙に敵の襲撃にあったり脱出を許してしまう可能性があるのよ。だから突入する人員を削って、敵が外へ逃げ出せる様に道を作っておくの。その方が逆に相手を誘導し包囲しやすいのよ」
なるほど、と感嘆の声を霹靂が漏らすと、そのまま素直に待機を続ける。
――
「上が騒がしいな」
拠点にて休息を取っていたバミューダの三人は突入の轟音を聞き、警戒する。ラフムの聴力からすれば上での会話もささやかに聞こえて来る程であった。
「僕らの居場所がバレたね、誰がしくじったのやら」
「責任追及は後で良い。ここは逆に不意打ちを仕掛けるか」
バミューダの一人、ユートピアがそう言うとその体をラフムの物へと変貌させる。
「たかがバディの戦力如き、逃げる必要など無い」
全身が鋭利な金色のラフム、ユートピアがそう告げると全力で上層へと移動する。
「行っちゃったね、ユーくん」
「ああ、彼はともかく…もし上で戦闘が始まっているなら地下はたまった物じゃない。ティアマトを安全な場所へ退避させたいが……」
「それなら多分どうとでもなるよ、ティアマトが語る未来は確定してるワケじゃん。だからこっちで何をしようがティアマトと長良っちは会う事が出来るっしょーが」
「…アガルタにしては冴えてるね」
「なんじゃとー!」
ごめんごめん、とシャングリラが平謝りする。
彼らが余裕を見せるのも、人間を意のままに操るユートピアの能力に信頼感があったからだ。
どれだけの強さを誇っても専用の対策を施さない限り防ぐ事の出来ない、まさしく”初見殺し”はおおよそバディを完封に追い込めるだけの力であった。
――
「…まさかここが気付かれたか!」
バミューダと別の部屋で昏睡したままの黒木を看ていたウインドは危険を察知し黒木に起きる様呼び掛ける。しかし彼は全く反応しない。
「恐らくバミューダの連中が迎撃に出てるだろうが、寝てるダチをそのままにってのは出来ねぇよな」
そう呟いてウインドは黒木を抱えて外へ出る。
拠点からの脱出口、そこから一直線で拠点から離れた場所に出れる事は把握していたのでそのまま進んでいく。
戦線離脱すればバミューダから何を言われるか分からない故、ひっそりと立ち去る。
「よし…ここまで来ればこのまま逃げられるな。その後は…どうするんだっけ?」
自分の行動に違和感を覚えるウインドだったが、まるで心の奥底から突き動かされる様に出口を目指した。
ようやく辿り着いた出口の扉を開け、眩しい日差しを全身に浴びる。
「外に出られたか―――」
ウインドは絶句した。
目の前に、バットラフム、先日御幸町にて戦った相手が待ち構えていたのだ。
「まさか本当に現れるとは…勇太郎様! こちらの地点にウインドを発見。このまま戦闘に入ります!」
対ウインド要因も兼任していたバーンに連絡すると、バットはそのまま空高く舞い上がってウインドへと先制攻撃を放つ。それと同時に同行していたD部隊員らによる銃撃も開始される。
「チッ…ウゼェな、コウモリ野郎!」
「黒木も確認…このまま一網打尽と行きましょう」
――
ウインドとバットが遭遇していた頃、A部隊とB部隊は奥から高速で突撃してきたユートピアとの交戦を開始していた。
「邪魔な奴らだ…ティアマトの目的遂行の為、死んで貰う!」
《Pandora・Enigma》
部隊員による銃撃をもろともせず進み続けるユートピアをオイオノスが食い止める。
「変身してて良かったぜ…ここは俺が食い止めっから部隊員は退避、大護くんはアイアスをお披露目しちゃってくれ!」
「了解! 見せてやるぜ、人類が負けちゃいねぇって証拠をな!!」
大護が息巻くと、あらかじめ腰に巻き付けていたアイアス変身用のベルト、”ロインクロス・トループ”の稼働スイッチを入れる。
《アイアスシステム・ブート》
女声によるアナウンス音の後、警告音と共に次のアナウンスが続く。
《赤いボタンを押し込み、グリップを引いて下さい》
「変身ッ!!」
力強い叫びを上げて大護はベルト右側のグリップを引く。
《アクセプト・仮面ライダーアイアス。救助を優先し、落ち着いて行動しましょう》
全身から余剰熱を排気する仮面の戦士。遂に完成した人類究極の戦闘装甲。
プロトの際の仮面部は覆われ、ウイニング等のライドシステムから流用されていた装甲部やインナーは廃され、更に人間に適した物へと一新されていた。
仮面ライダーアイアス。
ただの人類の一武装でありながらティアマト大幹部と相対している筈だが、そこに心許なさは微塵も無かった。
「…新しい仮面ライダー? だとしても俺には勝てない。絶対にだ」
「その自信、