仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#72 智慧

 遂に完成した仮面ライダーアイアスの初戦はティアマト大幹部の一人、ユートピアラフム。

 あまりにも分が悪すぎる相手だが、アイアスには勝機が見えていた。

 

「藤村金剛、戦闘を中止しろ!」

「ユートピア君よォ、君の能力は既に解析済みだぜ!」

 

《Pandora・Enigma》

 

 ユートピアの能力を無視してオイオノスは強化を続ける。

 

 ユートピアが有する、”呼ばれた相手は必ず彼の命令に従う”能力は以前ウイニングやバーンに使用されていた。その時のデータから現在ライドシステムの全てに電子耳栓を搭載してあるのだ。

 大規模な戦闘や狩猟時など、大音量の発砲音が交錯する場面において人は聴力が大幅に削られる。それに伴う聴覚障害を防ぐ為に開発された電子耳栓は発砲音などを自動で識別してシャットアウトする。

 そうした技術から陸上自衛隊の試験射隊の協力を得てライドシステムでの応用が実現したのだ。

 

「無駄に凄い技術使ってんだぜ、コレ。お前の声だけ聞こえない様になってるんだ…勿論、アイアスにもな」

 

 オイオノスはそう言うと取っ組み合っていたユートピアを突き放して少し距離を取る。

 と、後ろからアイアスが猛突進して来ていた。

 

「ッオラァッ!!」

 

 アイアスによるパンチがユートピアの胸部に炸裂する。

 ラフムに匹敵するか、それ以上の破壊力を持った殴打はユートピアの呼吸を一瞬奪い、その場に倒れ込ませた。

 

「…おお、ブン殴っても壊れねぇ」

 

 プロトアイアスから改良された耐久力に感嘆する大護は、目の前で膝をついている大幹部を前に拳を強く握り締めた。

 

「やってやったぜ……やってやったぜ!!」

 

「調子に乗るな…人相手でも容赦はしないぞ」

 

 ユートピアが先程とは比べ物にならない瞬発力でアイアスへと飛び掛かる。

 全身の棘が更に鋭く、指先の爪は刃の様に伸びていた。

 

 まるで獣の様な姿へと変化したユートピアの斬撃でアイアスの装甲が破断される。

 

「なんだありゃ…まるで狼じゃねぇか、あの姿」

 

 敵の能力上昇に呆れ果てるアイアスだったが、そう言っている余裕も無い。

 このままではスピードの差でアイアスの力を上回られてしまうだろう。

 何か良い案は無いのか藤村に連絡を取る。

 

「先生、完全にスピードで負けてるんだが!?」

「対策ならもうすぐ完成してるから二分間耐えて頂戴」

 

 二分間、敵に圧倒されている状態では非常に長く感じる時間だが、アイアスは意を決して受け入れる。

 

「なるはやで頼む…ッ!」

 

 俊敏な動きを見せるユートピアの動きを読み、攻撃の瞬間に上手くかわしながら場をしのぐ。途中危険な瞬間があったもののオイオノスの突貫により難を逃れた。

 

「カセット、ロープ!」

 

 オイオノスの右腕から伸びるロープが隙を見せたユートピアに絡み付き、動きを止める。

 

《Pandora・Enigma》

 

「三回も強化すれば充分か…行くぜ!」

 

 体の自由が利かないユートピアに組み付いたオイオノスが隙を見てウェアラブレスのグリップを三度押し込む。

 

《Pandora・Dogma》

 

 パンドラ・エニグマによって強化され続けたオイオノスの能力が解放され、凄まじい威力で中指を弾き、ユートピアの額に直撃させた。

 

「究極デコピン、ゼロ距離射だッ!!」

 

 ユートピアの動きが止まり、安堵するオイオノスだったが、その瞬間ユートピアが再起し、近くにいたオイオノスを吹き飛ばした。

 

「悪いな、”進化したラフム”は一般的な個体よりも遥かに耐久性が高まる。貴様らの小細工で倒れる俺では無いぞ」

「クソ…効いてねぇのかよ」

 

 損傷部を瞬く間に回復させながら立ち上がるユートピア。彼が見せる異常な程の耐久性はシャドーを彷彿とさせる。

 

「これこそが”進化”したラフムの力だ。例え俺の能力に対抗した所でお前らに勝てる術は無い」

 

 獣の姿を取るユートピアの俊敏な突進によってオイオノスが吹き飛ばされてしまった。

 

「金剛先生!」

 

 呼び掛けに応答しなくなったオイオノスにアイアスは焦りを募らせる。

 

「余所見をしている場合かッ!」

 

 ユートピアは続いてアイアスを狙う。未だ能力がユートピアの本領に追い付かないアイアスでは勝ち目が無い。そして、ここで一発でも彼の猛攻を受けてしまえばアイアスの防御性能をしても機能停止は免れないだろう。

 

(まだここで終われねぇよ…!)

 

 まだユートピアを倒せていないと悔恨するアイアス―――大護だったが、ここまでの戦いは希望へと繋がった。

 

 アイアスの緊急脱出システム―――装着車の危機を察知して自律操作を開始、強制的にその場から離脱する機構により内部コンピューター群により並列計算された安全地帯へと退避した。

 

「うおっ!? 避けてくれたのか!」

 

 ユートピアの猛攻を回避したと同時に武蔵博士から連絡が入る。

 

「大護! 完成したぞ!」

「完成って、対策のヤツか!? つか何で親父が―――」

「管轄の関係じゃよ! それより、”イートリッジ”を送るぞ! そいつをベルト横の空洞に装填するんじゃ!!」

 

 手探りで指定していた部分を見付けたアイアスの眼前に一つのイートリッジが出現する。

 

「! 何が起きている?」

 

 ユートピアが唐突に発生した現象に警戒するが、状況の考察よりもアイアスの撃破を優先する。

 

「何か起こる前に倒すッ!」

「見切ったぜ」

 

 獣の性質による敏捷性、攻撃力があったとしても動きが単調になってしまい、戦闘経験の豊富なアイアスに動きを読まれてしまうのであった。

 

 軽やかにユートピアの攻撃をかわしたアイアスはイートリッジを起動させる。

 

《Palladion》

 

 パラディオン。起動音にてそう示されたイートリッジを装填し、グリップを引くと、新たな音声が発せられる。

 

《ネームド・Palladion》

《アクセプト・エキスパンション》

 

 アイアスの装甲が一旦排除され、新たに構成された白銀の装甲が取り付けられる。

 騎士や石膏像を思わせる装甲が全身を覆った時、各部に走る青いラインが発光する。

 

「大分動きやすくなったな」

 

 仮面ライダーアイアス・アーマード・パラディオン。

 ユートピアに対抗する為の人口イートリッジを用いたアイアスの拡張装甲。

 ギリシャ神話等における都市を護りし像の名を(かたど)った戦士は困惑するユートピアへと腰に備え付けられていたバレットナックルを構える。

 

「ユートピアラフム、ここでお前を撃破する」

「強化を得ただけで勝利を確信するとは、その慢心が命を左右するぞ」

 

 ユートピアがその圧倒的速度でアイアスの背後へ回り、鋭利な爪で一突きしようとするが、寸前で回避された上に今度は逆に後ろへ回り込まれていた。

 

「ブッ倒れろ、ユートピア!」

 

 バレットナックルの連射がユートピアの背中を撃ち抜く。一撃一撃は軽いが、アイアスは急所に、何発も、正確に、撃ち込んでくる。

 

「ごおッ!?」

 

 隙を見せれば、目や口内、関節部へとバレットナックルの衝撃が放たれる。反撃しようとするが全てかわされていき、またも反撃。ユートピアは一方的に制圧されていた。

 

「まさか人力ライダーがこんなに強いなんてな! 俺自身も驚きだぜ! だがずっとチマチマ攻撃してても埒が明かないからな…そろそろ終わるぜ」

 

 アイアスはベルトのグリップを引く。

 

「…必殺技とかねーの!?」

「それが、人ベースのライダーで能力の解放を行うと反動で確実に損壊してしまうのよ。ごめんなさい」

 

 藤村からの指摘を受けてアイアスはこれ以上の能力強化が出来ない事実を知り落胆する。

 

「話は聞いたぞ…豆鉄砲しか撃てないならば、お前らに勝ち目は無いぞ」

「…俺にゃ幹部級ラフムを倒せる力は無いらしい」

 

 折角の対策として打ち出されたパラディオンを活かせずにいるアイアスは残念がるが、勝ち目のない状況に絶望はしていなかった。

 

「人の力のみでアンタに勝つにはまだまだ強化は必要か…だが」

「オイオノスの強化はこんなモンで良いだろ」

 

《Pandora・Dogma》

 

 ユートピアがアイアスに気を取られていた隙に倒された振りをしていたオイオノスがパンドラエニグマによって強化を重ねていたのだ。

 

「人の真の強さは頭を使う事だ。進んで獣になっちまったお前に、理想郷を語る資格はねぇッ!!」

 

 オイオノス渾身の飛び蹴りがユートピアを地へと叩き付けた。

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