仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#73 本気

 十二月六日、午前七時三十七分。

 桜島、ティアマト拠点。

 

 仮面ライダーオイオノス、アイアスの率いるA、B部隊の奮戦によりユートピアラフムの無力化、確保に成功。

 二点確認されていた脱出経路の内、バットラフムらD部隊の待機していた地点にて戦闘が開始された事からオイオノス―――藤村金剛の発案により霹靂が先導するC部隊を拠点内部に突入させる”挟み撃ち作戦”が敢行される事となった。

 

 先陣を切って拠点探索を進めるA、B部隊は地下四階まで降りると、下に続く階段が無い事に気付いた。

 

「金剛先生、もしかしてここが最下層か?」

「らしいね」

 

 この場で最も判断力に優れるオイオノスにアイアスが問う。

 ここが最下層ならばティアマト大幹部、更には誘拐された長良長官がいる可能性が高い。一行は気を引き締めて全ての部屋をくまなく捜索する。

 

「隊長、こちらにもう一つ部屋が」

「! 迂闊に開けるなよ、ここは俺達が行く」

 

 部隊員の発見したその扉にアイアスが手を掛ける。

 オイオノスと頷き合ってから一気にその扉を開ける。

 

「動くな! ってうぉぉぉおお!!」

 

 アイアスが突入した途端、イカを模した巨大な触腕が部屋から飛び出し、彼を弾き飛ばす。

 

「この触手、アガルタラフムだ! 総員一旦後退して射撃開始、その隙に俺達が本体へ突っ込む!」

 

 部隊員らの支援射撃を受けながらオイオノスが右手を変形させる。

 

「カセット、パワー!」

 

 鋭利な刃、パワーアームでアガルタの触腕を切断して部屋への道を切り開く。

 

「…ありゃ、イカ腕ちゃん切られちった」

 

 部屋の中で触腕を伸ばしていた張本人、アガルタラフムが頭を掻きながら溜息をついていた。

 

「ティアマト大幹部、アガルタラフム…!」

「いやー…まさかユーくんがやられちゃうとは思わなかったな、人類もまだまだやるよってカンジ?」

「カセット、ネット!」

 

 アガルタの言葉に応じる事無くオイオノスはカセットアームによって彼女を拘束する。

 

「手荒だが時間が限られてんだ、シャングリララフムはどこだ」

 

 ネットアームによって射出された網を縛り上げてアガルタに聞き出すと、奥から年若い少年―――シャングリラが顔を出した。

 

「ここにいるよ、彼女の拘束を緩めてあげて」

「悪いが(ほど)きはしないぞ」

 

 シャングリラは軽く頷くとアガルタへと視線を落とす。

 

「…彼女は簡単にそこから脱出出来る。僕も反撃が可能だ。ティアマト大幹部二人が今の君達の戦力でどうにか出来る相手では無い事はすぐに分かる筈だ」

「そうだな…だからこの際戦闘は避けようぜ」

 

 オイオノスは変身を解除すると部隊員らを一歩下がらせる。

 

「俺達の目的は長官の救出だ。お前らの捕縛は優先しちゃいねえ」

「ふふ…つまり逃げろと?」

 

 微笑むシャングリラに変身の反動によって息を荒げる金剛は精一杯の不敵な笑みを返す。

 金剛としては本当に戦闘は避けたい所だったが、臨戦態勢を整えているシャングリラの放つ覇気の強さから、並の小細工では彼らが自分達を見逃してくれるとは全くもって思えなかった。

 

「こちらとしては満身創痍の君達にとどめを刺してしまった方が大分効率が良い訳だけど、命乞いでもするのなら見逃してあげる」

「……」

「…助けてくらさい命だけはなんでもしますから靴も舐めます神様にお祈りもしますごめんなさいごめんなさい僕が悪かったです降伏します降参します謝罪します許してください助けてください!!」

 

 ―――は?

 シャングリラが思わず声を漏らす。

 急に金剛が必死に泣いてせがむ様子に混乱したが、一秒程の間を置いてじわじわと彼の無様な様子を理解する。

 

「あー、マジでか、藤村金剛…ふふふ」

「はははッ! はーはっはっ!!」

「君、プライドとか無いワケ? こんなに簡単にアッサリとそんな馬鹿をやらかしてくれるのか、つくづく面白い人だ」

 

 シャングリラの嘲笑がこだまする。アガルタはその様子をただじっと眺めていたが、顔色を変えずに佇む金剛に違和感を覚えていた。

 

「…グリくん、なんか変だよ」

「変? この男が変わっているのは元よりだ。それに何か考えがあったとしても僕らの力があれば問題無いよ」

 

 金剛の頭を平手で叩きながらシャングリラは彼の様子を眺める。

 

「良いモノ見せて貰ったよ。それで、辞世の句は今のでオッケーかな?」

 

 シャングリラがそう呟くと、金剛の首へと手を回し、強く締め上げ始めた。

 

「相手の命乞いを一通り聴いてから殺す、これが一番相手の絶望する死に方だろう…ティアマトを裏切った君に似合いの死に方だね、藤村金剛」

 

 段々と首を絞める強さが上がっていく。苦しさの余り金剛は何も言葉を発せなくなっていたが、意識を失う瞬間、口角を上げてみせた。

 

「!?」

 

 シャングリラが警戒する間も無く、後ろから電子音が鳴り響いた。

 

《Thunder・Attack》

 

「ぐぅおおおあああああッ!!」

 

 シャングリラの体に強力な電撃が流れ込む。挟み撃ち作戦決行に伴いこちらへ向かっていた霹靂がようやく到着し、金剛の危機にその隙に金剛は彼の体を蹴り飛ばして感電を微弱な程度に抑える。

 

「いつぞやのお返しだぜ、バミューダ」

 

 感電によって倒れ込むシャングリラを目撃したアガルタは触手を出現させサンダーを攻撃しようとするが、横から射出された空気弾によって阻まれた。

 タイミングを狙って合流したアイアスの持つ武装、バレットナックルによる射撃がアガルタの触手を更に狙い撃つ。

 

 二人の攻撃によってバミューダの二人が怯んでいる内に金剛が再び変身する。

 

《Change・Pandora・Frustration》

 

「げほっげほっ…無様な道化を演じて時間稼ぎしたお陰でこの場にライダー三人揃い踏みってね」

「かと言って俺はバッテリー切れ間近、金剛先生は暴走しちまいそうなんだがな」

「だったら後は俺に任せろ」

 

 霹靂、アイアス、オイオノス。その場に集った仮面ライダーらに、シャングリラは顔をしかめると、その姿をラフムの物へと変貌させる。

 

「? アガルタは変貌しないのか」

 

 金剛の問いにアガルタはふふ、と笑みを溢す。

 

「グリくんがラフムの姿を見せちゃったからにはもう勝ち確だし教えちゃおっか、ワタシのヒミツ」

 

 アガルタは背後に無数の触手を発生させると、まるで花の様に広げてみせた。

 

「アガルタとして進化する以前のワタシ―――それは」

 

「ヒューマンラフム・個体名”黄金(こがね) 舞華(まいか)”」

「”ヒト”の性質を持った、ラフム」

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