仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#75 雷霆

「雷轟走り悪を断つ」

「正義を貫きライドする仮面の戦士」

「その名をまさしく…」

「仮面ライダー…霹靂!」

 

 黄金に輝く雷の意匠を持った戦士は周囲にプラズマを纏わせながら戦闘態勢を取る。

 

 仮面ライダー霹靂・サンダーボルテックス。

 

 雷電が今までコントロールしきれなかった雷の性質を最大まで解放した、霹靂の完成形。何度か訓練にて試用した事はあったが一度も変身を成功させた例は無く、事実上変身不可能の形態とされていた。

 しかし、彼は己の力の強さと心の弱さを断ち切り、遂にその力を我が物としている。全ては金剛の想いを受け継ぐ為、絶体絶命の状況を打開する為の強い意志が彼の限界を砕いたのだ。

 

「暁…やったのか」

「ああ、こっからは、速攻勝負だ」

 

 サンダーボルテックスが金の粒子を放出し、再びラフムへと変貌したシャングリラに浴びせる。

 粒子は電気を纏っており、以前とは比べ物にならない高電圧がシャングリラを苦しめる。

 

「ぐお、おお…」

「まだまだ行くぜ!」

 

《Thunder・Attack・Voltex》

 

 サンダーボルテックスはスピードを上昇、多方向からの連撃でシャングリラを翻弄しながら幾度と無く打撃を加える。

 

(俺の雷が通ってる! このままブッ飛ばす!!)

 

 途中アガルタの触腕がサンダーボルテックスの行く道を阻むが、バレットナックルで難なく切り裂いていく。

 

 光と共に敵を貫いていく姿は、まさしく雷の様だった。

 

「強ぇ…」

「やば…チートじゃん!」

 

 方々からの言葉がサンダーボルテックスの力の強さを物語る。

 妨害工作を続けながら彼の能力を測るアガルタは、ある事に気付いた。

 

 かつて彼女はウイニングボルテックスと対戦した事があったが、今目の前にいるサンダーボルテックスはその時のウイニングとは比較にならない程の性能差を感じていた。

 

「―――まさか」

 

 アガルタが息を吞む。最も相性の良い性質を持ったアイテム同士で強化変身を行った際に付加されるスペックは、”プラス”ではなく”クロス”。

 

「サンダーくんの今の状態は、イートリッジ+(たす)ルトリ(引き金)ガーじゃなくって、イートリッジ×(かける)ルトリ(引き金)ガー、ってコト…!?」

「バカじゃないの、そんなん強いワケじゃん!!」

 

 アガルタが狼狽していると、尚も攻撃を食らい続けているシャングリラが声を張り上げ彼女の名前を呼んだ。

 

「アガルタ! ティアマトの事は頼んだよッ!!」

 

 シャングリラの叫びと共に彼の形成した空間が解除され、アガルタは真っ先に奥の部屋へと走る。

 

「待て!」

 

 アイアスが彼女を追って走るが、触腕に通路を塞がれ、立ち入る事が不可能になってしまった。バレットナックルで触腕を叩き切りながら進もうと画策するが、逃亡に集中したアガルタは何度切られようともすぐに触腕を生やしアイアスを遠ざける。

 

「アガルタは逃げおおせたね…なら後は時間稼ぎするだけだね!」

 

 サンダーボルテックスの攻撃から脱したシャングリラは再び空間を形成してサンダーボルテックス、金剛と自らを閉じ込める。

 

「暁!」

 

 空間の外に出てしまっていたアイアスが叫ぶが、サンダーボルテックスは親指を立てて無事を伝える。が、重症の金剛もこの空間に居続けている事だけは気掛かりだった。

 

「おい、グリなんとか! お前にも人の心が残ってんならケガ人だけでも逃げさせろよ!」

「…悪いね、藤村金剛は生かしておいたら困るヤツなんだ。それは出来ない」

 

 そうか、とサンダーボルテックスが返すと、ボルトリガーの引き金を三回引き、能力を最大開放する。

 

《Thunder…ImpactVoltex》

 

「これで終わりだ―――!?」

 

 サンダーボルテックスが渾身の一撃を放とうとしたその時、体に異変が起こった。

 今まで制御していた力が、遂に暴走を始めたのだ。

 かつて西荻窪にて見せた怪物・サンダーラフムとしての力が目覚めてしまった。

 

 全身が帯電し、光輝きながら体を巨大化させていく。

 仮面ライダーとしての鎧を突き破り、蜘蛛と人が融合した様な異形の巨獣が顕現する。

 ボルテックスの力と雷電の鍛錬によってサンダーラフムはその力を増しており、物理的にシャングリラの空間を破壊してしまった。

 

「なんだよ、この力…これがサンダーラフム?」

 

 初めてその力に触れたシャングリラは、ティアマト大幹部を優に超えた強大すぎるラフムの猛威に恐怖を隠し切れなかった。

 サンダーが空間どころか拠点の天井を突き破り出した事で瓦礫が崩落して来る。

 

「暁ッ! そこには金剛先生もいるんだぞッ!」

 

 アイアスが落下する瓦礫を掻い潜りながら金剛の元へ走る。が、天井から一際大きい瓦礫が飛来してくる。その巨大さ故、このままではアイアスのみならず、金剛までもが瓦礫の下敷きになってしまう。

 回避不可能の事態に思わずアイアスは目を閉じてしまった。

 

「―――?」

 

 普通ならば瓦礫が落下しているであろう瞬間を過ぎても体には痛み一つ無い。アイアスが目を開けると、瓦礫に押し潰されていない自分と金剛、そして周囲の薄暗さに気付いた。

 上を見てみると、巨腕を被せて二人を庇うサンダーの姿があった。

 

「…暁」

 

 サンダーは何も言わなかったが、確実に彼らを”守っていた”。周りを顧みず暴れ続けていた過去とは違う、その力を制御とは行かずとも自分の意志を以て動かしていた。

 

「―――ありがとう」

 

 アイアスの心から出でた感謝の言葉に、確かにサンダーは頷いて返した。それからすぐ彼はシャングリラへと視線を向けると拳を握った。

 シャングリラへと放たれたサンダーの拳は電撃を放ちながら彼を殴り付け、辺りの壁毎破砕する。

 サンダー渾身の一撃が決まりアイアスが歓喜するが、その瞬間にサンダーは粒子と共に縮小し、雷電の姿に戻ってしまった。加えて彼は体が全く動かせない状態で倒れ込んでしまった。

 

「ふぅ、やっと効いたか」

 

 瓦礫の中から傷付いたシャングリラが出て来て呟きながら微笑むと、自らの力について話を始める。それはまるでアイアスに自慢する様な口調だった。

 

「僕の進化前の性質は”クロタルス”、ガラガラヘビの力だよ」

「クロタルスの持つ能力でサンダーは神経毒に侵された。もう一歩も動けないよ」

「敵討ちと行くかい、人の仮面ライダー」

 

 シャングリラは余裕そうに問うが、彼も霹靂の奮闘によって既に戦う程の力を失っていた。

 

「…当初の対敵時と目的は変わらない。俺達は長官を連れて帰るからお前らもこっちの増援が来ない内に逃げろ」

「言っとくが俺はまだ戦えるぜ」

 

 不敵な笑みを浮かべるアイアスに、シャングリラはばつが悪そうにその場を後にする。

 

「大幹部を二人も逃がした事、後悔しないでよ」

「ウチの大将を返しちまった事、後悔すんなよ」

 

 皮肉めいた言葉を交わし合うと、シャングリラは余力を振り絞ってその場から高速で退避する。

 変身を解いた大護が状況の終了を宣言すると、何も出来ずに待機していた部隊員が顔を出す。

 

「武蔵隊長、我々は何も出来ず、申し訳ございませんでした」

「気にすんな。お前らは生きる為に戦った、充分だぜ。それに逃げずにこの場でいつでも戦える様に準備してたんだ、今日は二百点くれてやる」

 

 隊員らを労うとすぐさま金剛と雷電を処置可能な場所まで運ぶ様指示する。

 指示を出した後、大護は度重なる戦闘による疲弊で重くなった体を引きずりながらアガルタが逃亡に使用していた通路を進み、部隊員らの集まる部屋へ辿り着く。

 

 そこには、拘束具を開錠され背伸びしている長良長官の姿があった。

 

「武蔵君、久し振り。本当に、良くここまで来てくれたね。…本当に」

 

 目を潤わせながら言葉を紡ぐ長官に大護も心を揺さぶられる。

 

「長官が無事で良かったです…本当に」

 

 お互い笑顔を向けると、部隊員らも朗らかな表情で帰還までの道を先導する。

 

「他の皆はどうしているんだい?」

「暁は大幹部と交戦してブッ倒れてます。勇太郎は恐らく外のラフムと交戦中スかね。えっと、楓は……」

「ウインドラフム、だね。ここで彼に会ったよ」

 

 武蔵が目を見開くと、長官は眼鏡のブリッジを上げて神妙な面持ちを見せる。

 

「霧島君は我々の知らない所でずっと苦しんでいた。しかし、ウインドの狡猾な言葉には決して負けない、そう言える強さも感じたよ…だが彼の抱える心のしこりは我々では解氷出来ないみたいだ」

「彼を、霧島君を助けられるのはきっと火島君だけだ」

「後は勇太郎に、託しましょう」

 

――

 

 ティアマト大幹部”バミューダ”撃退、長良衡壱長官の救出から時は遡る。

 午前七時ニ十分。

 

 冷たい風の音が木の葉を揺らす。

 ただ笛の様に甲高い音色が吹き付けるティアマト拠点、脱出口付近。

 

 バットラフム率いるD部隊、バットラフムを含む3名の重傷者と、残りの死亡者。

 ―――即ち、全滅。

 

「以外と呆気ねーのな…と、この体め、俺に抗えねぇ割に感情の起伏は激しくて困るぜ」

 

 静かに零れ落ちる涙を拭ったウインドラフムは上空を見上げる。

 その視線の先には赤い炎を纏った戦士がバイクと共に飛来していた。

 ウインドの目の前に着地すると、淀みの無い緑の瞳が彼を見据えた。

 

「楓…またまた考え過ぎやがって、お前の悪いトコだぞ」

「火島…勇太郎」

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