仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#84 荒神

「俺は、コイツを許せない」

 

 心の底から怒りを吐き出す様に、そう告げた霹靂はブルラフムの首を絞め続けた。

 

「暁ッ!」

 

 大護が霹靂の腕を掴んで握り締める。

 生身の人間とは思えない驚異の握力で仮面ライダーである筈の霹靂が苦悶の声を上げる程に締め上げた。

 力が入らなくなった霹靂はブルラフムを手放す。

 

「…ってぇなぁ」

「暁、お前の気持ちに蹴りを付けるのは重要だが、殺したら何もかもがおしまいだ」

「でも、アイツが俺の家族を…ッ!」

「お前は人殺しがしたくて仮面ライダーやってんのか? もう嫌なんだろ、そう言うの」

 

 大護が諭すと、霹靂は何も言わずに変身を解除した。

 

「後は俺達がブルを護送する。雷電、お前は…自由行動だ」

 

 大護からの唐突な指示に雷電は鳩が豆鉄砲を食った様な顔を見せる。

 

「あの、俺は…」

「少し頭冷やせ~」

 

 雷電は勇太郎から頭を小突かれる。

 

「人を殺した、なんて感覚は知らないに限るよ」

 

 楓に肩を叩かれる。

 

 

「俺は……」

 

 雷電の中で様々な葛藤が交錯する。目の前の仇が憎い気持ち。誰かを傷付ける事に加担していた自分から変わりたいと言う思い。家族を殺された哀しみ。自分を案じてくれている人々への恩義。

 

 

 悔しさを飲み込んで雷電は俯きながらブルへと言葉を投げ掛ける。

 

「お前は許さない。でも、お前を傷付けはしない。それが暁雷電としての決意だ。覚えておけ」

「サンダー…凄いな、お前は」

 

 ブルの一言に雷電は顔をしかめて中指を立てる。

 

「俺に謝りたいなら二度とサンダーと呼ぶな!」

「では…何と呼べば良い?」

「…仮面ライダー、霹靂。霹靂と呼んでくれ」

 

 雷電の決意の込めた表明にブルは静かに頷いた。

 

 と、空から何者かが飛来する音が周囲に響く。

 

「何だ!?」

 

 勇太郎が狼狽えながら叫ぶと、ブルがすまない、と一言申し付けて彼女を拘束していた大護から離れると、再びラフムの姿へと変貌した。

 

「ブル、どうした!?」

 

 大護の問いに答える事無くブルはその手から放った雷を上空へと打ち出した。

 その雷は雷電の力を優に超えた、最早雷と呼んで良いのか分からない程の威力を発揮し、人が補足するには小さすぎる敵影を焼き払った。

 

「―――ティアマトの構成員だ」

「裏切り者を追随して消す…いわゆる奴らのお家芸か」

 

 楓が皮肉めいた呟きを放る。ペイルや雷電の件でティアマトのそうした陰湿な体制には嫌気がさしていたのが心に残っていたのだ。

 

 ブルの攻撃によって墜落して来たラフムが落下の衝撃による土煙の中から這い出て来る。

 

「キキキ…キサマ、今の攻撃はティアマトへの裏切りと見なすぞ?」

「好きにしろ、ヴァルチャー」

 

 ヴァルチャー、いわゆるハゲタカの事である。

 動物の死体を食らうハゲタカの様相は、裏切者の抹殺を担うラフムには相応しい名であった。

 

「キキ…お前がライダー共をブチのめすなんて進言したのは良かったが誰もそれを信じちゃいなかったンだよ、名ばかりの幹部め」

「黙れ禿野郎」

 

 ブルの一言はヴァルチャーの琴線に触れ、彼の醜い顔が更に歪む。

 

「指揮車両、敵性ラフムが出現した!」

「確認したわ! 今すぐ戦闘態勢に入って頂戴!!」

 

 藤村の指示を受けライダーらは再び変身の準備を整えるが、ブルが手をかざして止める。

 

「ここは私が止める。私自身の責任は自分で果たしたい」

「それに、生きて罪を償えるなら霹靂、お前に見せたいモノがある」

「見せたいモノ…?」

 

 雷電が訝しむと、ブルは何も言わずにヴァルチャーとの距離をゆっくりと詰める。

 

「キキキ! 先手必勝!」

 

 ヴァルチャーが背中の翼で羽ばたいて、ブルの背後へ回って突撃する。

 が、彼が爪撃を放った頃にはその場からブルが消えていた。

 

「! いねぇ」

「バカが、勝つのは強い方だ」

「キキキ!?」

 

 ヴァルチャーが背後に立つブルに気付いた頃には、彼女の手から放たれる雷が彼を焼き尽くしていた。

 

「しまった、手応えが無さ過ぎて見せるまでも無く終わってしまったぞ」

「いや、伝わった……」

「…」

 

「どうして雷を使える?」

 

 あまりにも当然の様に雷を操ってみせたブルに雷電が問う。

 牛の特性を持つラフムが、何故雷の力を持つのか雷電は無性に気になっていた。

 

「私の真の性質だ。私は、私の力は―――ゴズテンノウ」

 

 ゴズテンノウ(牛頭天王)。雷神とも言われる日本神話の荒神スサノオノミコトと習合した牛の頭を持つ神。

 つまり、彼女は、神の力を持ったラフムなのである。

 

「この力はデカすぎる。私がゴズテンノウに進化した時、強大過ぎる力から住処の付近を暴れ回り、結果お前の家族を襲ってしまった」

「純粋な力では無いビルダーラフムが進化するなんて稀な事例は無いと組織の連中は喚いていたが、私は無用な殺しなどしたくは無かった」

 

「こんな所じゃ不用心だ。ウチの隠れ家で話してくれ」

 

 大護の言葉に従い、ブル―――ゴズテンノウラフムは簡単な身体検査の後御剣邸へと連行された。

 

――

 

 

 十二月六日、十一時十九分。

 御剣邸内、取調室。

 

 念の為発信機等の付着が無いかチェックを受けてから、ゴズテンノウが厳重な拘束を受けた後取調室へと運び込まれて来た。そこには大護と雷電が座していた。

 

「霹靂、来ていたのか」

「家族の仇だ、洗いざらい話してもらうぞ」

「ああ」

 

 ゴズテンノウがゆっくりと取調室の椅子に腰掛けると、先程の話を続ける。

 

――

 

 ゴズテンノウ―――源 光流(みなもと ひかる)は、傭兵であった。

 その経歴を嗅ぎ付けたティアマトにより武蔵博士、黒木陽炎の手で人造されたビルダーラフムとして選出した。

 その際に与えられた性質は、(サンダー)

 

 光流はサンダーラフムの能力を振るい、裏社会の組織を脅迫しティアマトの傀儡とした。

 幾度と無く悪を従わせ、ティアマトの規模を拡大していった。

 

 また、裏切り者のラフムの始末も担い、その度に傷付きながら強くなっていく実感があった。

 無作為に選ばれたであろうラフムとしての能力が自分と適合し、数日間の意識の喪失と共に新たな力を手にしていた。

 が、その性質こそがゴズテンノウ、前代未聞の神の力を秘めたモノだったのだ。

 神の力を束ねられる程の強い体力、精神力を有していなかった光流は為す術も無く暴走し、住居としていた小屋から近くのキャンプ地まで破壊活動を行ってしまった。

 その時に殺害したのが暁一家であり、そこにいた雷電をラフムへと覚醒させたのだ。

 

 ビルダーでは無い自然(オリジン)として誕生した真のサンダーラフムの攻撃を受ける形でようやく倒れ、体の自由を取り戻す頃には依頼されていない罪無き人間を手に掛けた後悔を抱える事しか出来なかった。

 

 心の傷を負った光流はティアマトの任務を放棄し、破壊された住居の傍でラフムとして死ぬに死ねない生活を送っていた。

 彼女の後任となった雷電がティアマトを裏切り、再び招集を受けるまでは。

 

――

 

「私はティアマトの連絡役からその地点でバディへ虚偽の通報を行い、自分の居場所を知らせてライダーをおびき寄せる役割となった訳だ」

「おびき寄せる? その理由は?」

 

 雷電が問うと、光流は困った様な顔で溜息をついた。

 

「何も聞かされていない。私は信頼されていなかった様だからな…それに、お前に倒されたかっただけだから何でも良いと考えていたんだ」

「はぁ…溜息はこっちの方がしたいぜ。何の情報にもなっていないな」

 

 すまない、と光流が頭を深々と下げるが、雷電はそうじゃねぇ、と不機嫌な声色で返す。

 

「アンタからの情報は期待していない、っつーかティアマトの情報を得る為以上にやって欲しい事があったからここに呼んだんだ」

「ああ、言われれば何でもする」

 

 大護は雷電の進言により、席を代わって彼を座らせる。

 

「源……アンタの力をくれ」

「神の性質―――ゴズテンノウをな」

 

 ラフムを倒し粒子をブランクイートリッジに格納すればライダーの力と出来る。それを利用して霹靂の強化を図るのだ。

 

「勿論だ。今すぐ私を蹂躙して力を奪うと良い」

「…言い方をだな……まぁ良い。アンタの力を貰うに当たって一つ飲んで欲しい条件がある」

 

「本気で戦え、源。それで俺が勝てたらその力を貰う。全力で俺をしごいて徹底的に俺を強くしろ」

 

 家族の仇である光流に頼む事なのか、と自分の事ながら倒錯した判断だと考え、雷電は思わず口角を上げてしまった。

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