仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#88 電話

 十二月六日、十三時五分。

 御剣邸内、バディ指令室。

 

 楓の自身の秘密を打ち明けた長官は早速バディ長官の任を吹雪から返還され、最初の仕事としてティアマトラフムの復活が近い事を伝え、より一層の作業進行を求めた。

 

 加えて、防衛省と警視庁、消防庁にも今後の更なる協力を要請し、来たる日へ備える事になった。

 

「―――と言う訳で…実は、私はラフムなんだ」

 

 長官の連絡を受けた勇太郎と藤村、大護は呆然としていたが、すぐに状況を飲み込んだ。

 

「何かその方がしっくり来る話ッスね」

「長官には敵わないわね。聞きたい事は色々あるけど今は自分の仕事に努めます」

「長官は誰であろうと、俺達の立派な大将だ」

 

 思っていた以上に気軽に受け入れられ、長官は少し驚きつつも、今の仲間達を信頼して本当に良かったと思った。

 

「ところで長官、マルドゥック構成素の時もそうでしたが、暁君には何も話さなくて良いのですか?」

「彼は忙しいからね…追って説明するよ」

 

 長官の答えに藤村が納得すると、アイアス量産の為に持ち場へと戻った。

 

「そしたら俺は…親父に話したい事があるんだったな。長官、何かあったら呼んでください」

「それじゃあ俺は楓ン所でちょっと”アレ”試してみっか!」

 

 それぞれが己のやるべき事を考え、打倒ティアマトの為動き出す。

 

 一方雷電は―――。

 

――

 

「右からのフェイントが甘い! かわされるつもりで攻撃をするな! スピードを上げろッ!」

 

 御剣邸、地下防電戦闘訓練場。

 

 サンダーボルテックスの状態を維持しながらゴズテンノウラフムと戦闘訓練を行う霹靂は、着実にその力を高めていた。

 しかし、それでもなおゴズテンノウ―――光流には及ばない。

 

「っ! これ以上戦うと、俺にも手が付けられねぇ!」

「構わん、来いッ!」

 

 サンダーボルテックスの素早い打撃を諸共せずに捌き切るゴズテンノウに、遂に霹靂の力は暴走し、その姿をサンダーラフムへと変貌させてしまう。

 

「これがお前の本気かッ!? 攻撃が単調で遅すぎる…その状態からでも頭を使え!!」

 

 ゴズテンノウはサンダーの強力な雷撃と殴打をかわし、彼の首元へ一撃を食らわせる。

 神の性質を持つ彼女の攻撃はサンダーの巨躯を一撃を沈めてしまった。

 意識を失ったサンダーは粒子化し、雷電が倒れたまま姿を現す。

 

「これで終わりか? そんなんじゃ私は倒せないぞ……早く私を、倒してくれッ!」

 

 ゴズテンノウが力むと、電流の刺激で無理矢理雷電を起こす。

 

「ごほッ!?」

「こんなもので私を倒せるか!? 家族の仇が取れるのか!?」

 

《Change・Thunder・Voltex》

 

 ゴズテンノウに焚き付けられ、霹靂が再びサンダーボルテックスへ変身し、怒りの雄叫びと共に突撃する。

 

「何も学んでいないのか、霹靂! お前の力がコントロール出来ないのは冷静さを欠いているからだ。他者の言葉に流されるな!」

「―――ッ!」

 

 何も言い返せないまま、霹靂はゴズテンノウへと電撃を浴びせるが、全く効いていない素振りを見せる。

 

「さっきよりも力が落ちているぞ」

「!! ……少し休憩させてくれ」

 

 怒りに身を任せて突貫しようとしていた霹靂が急に動きを止めて進言する。

 

「休憩? 疲れたのか?」

「いや、少し考え事をしたい」

 

 ほう、とゴズテンノウが呟くと、人間の姿へと戻る。

 

「分かった、しかし変身は解くな。その状態を維持しながら考え事をしろ。時間は十五分だ」

「ああ」

 

 霹靂―――雷電は少し力を抜いて、その場に座り込む。そしてライダーの装甲に内蔵された無線機からある人物に連絡を繋げた。

 

「もしもし? 暁君から連絡なんて珍しいね」

「…霧島先輩に聞きたい事があるんス」

 

 雷電が連絡を取った人物―――楓は物珍しい相談に首を傾げつつもどうしたの? と耳を傾けた。

 

「先輩は、家族を殺した仇と、戦ったんスよね…」

「うん……正直復讐ってスッキリしたよ」

 

 あの品行方正な楓からそんな言葉が出るとは思っても無かった。雷電は驚きの余り声が漏れる。

 

「僕なんて感情的に戦っちゃって、そのせいでウインドに付け込まれたんだ。でもそう言う強い感情があるから人って戦えるんじゃないかって思うかな」

「俺も、今家族の仇と戦ってるんス。それで、感情的になっちまって……でも勝てなくて」

「うん、実際感情的になっただけじゃ勝てやしないよ。僕だって復讐心だけでウインドに勝てた訳じゃないもん」

 

 楓がそう言うと、少し唸りながら今までの自分の戦いを思い返す。

 

「僕がウインドを倒せたのは仇を取りたいとかじゃなくて、ここでアイツを倒す事で自分の気持ちをに折り合いを付けたいって気持ちが強かったかな」

「気持ちに、折り合いを付ける?」

「例のラフムと戦ってるんでしょ、暁君? なら、あの人を倒す事よりも、倒す事でどうしたいか―――君自身がどう変身したいかを考えてみて」

 

 自分自身がどう変身したいか。雷電に突き付けられたその言葉は、彼の中で何度も反芻された。

 

「俺は……」

「…」

 

 幾度と無く、”変身”と言う言葉を繰り返してから、雷電は再び口を開いた。

 

「先輩は、変身…したんですか」

 

「僕は―――変身、したよ」

 

 張り切って楓は言い放った。

 

「自分がなりたいって思う自分を想像して、そうなる為にどうすれば良いのか考えてみて。そうすればきっと、暁君が本当にやるべき事が見えて来るハズだよ」

「俺は…そうだな…成程」

「何かアドバイスになったかな?」

 

 楓の問に雷電はハイ、と強く答える。

 

「なりたい自分に”変身”する為に、俺がやんなきゃなんねぇ事、ようやく分かったっス」

 

 先程までの会話で、雷電に起こった変化が楓にもひしひしと感じ取れた。

 

「…暁君がそう言ってくれて本当に嬉しいよ。そうだ、前に僕らが戦ってた事覚えてる? 今じゃ信じられないね」

「覚えてるっスよ勿論。あん時の先輩、怖かったんで忘れられねぇっス」

「心外だなぁ~、僕も必死だったんだよ!」

「はは……いや、あん時は本当にすみませんでした。あれ以来ずっと倒れてたって聞いたのに…俺、ずっと謝れてませんでした」

「良いんだ、僕は苦しそうだった君を助けたかっただけなんだから。今こうやってやるべき事を見つけて、それに僕に謝ってくれて感謝までしてくれてるんだから言う事ナシだよ」

 

 激闘を終えながらも、未だにまともに謝罪出来ていなかった楓から思い掛けない言葉を贈られ、雷電は言葉を失った。

 

「俺と戦ったせいでアンタは重傷を負った、その事を忘れないでくれよ」

「うん。でも君と戦えたお陰で、君が色々と考え直して勇太郎やバディの皆を助けてくれた事も忘れてないよ」

「…霧島先輩、本当にすみませんでした。今度また直接謝りに…いや、ありがとうって、伝えに行きます」

「うん、うん! ごめんなさいよりありがとうが欲しいの、良く分かってるじゃん」

 

 楓が笑っていると、気が済んだ雷電は唐突に電話を切った。それ以上の言葉よりも、これからの結果で楓に気持ちを伝えたかったからだ。

 雷電は先程諭されて気付いた様に、落ち着きながら自らの理想を思い描く。

 

「ゴズテンノウ、休憩はもう良い。再開しようぜ」

「―――どうやら何か考えがある様だな」

「ああ…今ならお前に勝てる気がするぜ」

 

 そう言うと雷電は変身を解除した。

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