「霹靂…? 変身は解くなと言った筈だが…」
ゴズテンノウからの指示を破り変身を解除した雷電に、彼女は何かを閃いたのだと勘繰り、叱責する事無く流す。
「先程の電話で考えが思い付いたか。良いだろう、さっさと私を倒してみろ!」
雷電の作戦が定まっている内にとゴズテンノウが臨戦態勢を取る。一方の雷電も彼女の闘争心に応える様に身構えた。
ゴズテンノウの闘気に触発されたのか、雷電の体から粒子が放出される。
「いくぜ…俺の―――変身」
《Thunder》
雷電は変身を解除する際、手に取っていたサンダーイートリッジを起動させ、自らラフムへと変貌する。
今まで自発的にラフムになろうとしなかった雷電が見せた行動にゴズテンノウはおぉ、と感嘆する。
楓と話した事で雷電の心は透き通り、今では本当に自分がやるべき事、否、やりたかった事がハッキリと見えていた。
かつて家族を助けられなかった自分から変身し、まだ生きている妹を助けられる力を手に入れる事こそが、彼にとっての理想であった事にようやく気が付いたのだ。
戦いに勝利する事では無く、誰かを救う事…それが雷電が思う”変身した自分の姿”だった。
ゴズテンノウラフムに勝利する事では無い、その先にある理想に辿り着くと言う雷電の願いに力は応える。ラフムへと変貌させる素であるマルドゥック構成素は、サンダーの力を示す黄色い粒子を変容させ、青みがかった、輝きの増した粒子となる。
雷電の成長を表す様に輝き続ける粒子は、彼に適合する新たなカタチを構築していく。
ラフムに変貌する時はおろか、ライダーに変身する時にさえ感じた事の無かった、安らかで心の奮い立つエネルギーに包まれながら、雷電はふと気付いた。
(俺は…父ちゃんと母ちゃんを殺し、響を傷付けた雷の力が怖かったんだ…だが、もう怖くは無い。前に霧島先輩が俺から得た雷の力で復活した様に、この力を使えば響を助けられる、何かそんな気がする)
今まで拒絶し、暴走させていた自身の性質を雷電がようやく認めた事で、彼の変貌するサンダーラフムの姿は今までの巨大な異形から更に変化を起こし、人のシルエットを踏襲した、蜘蛛の形状に似た頭部を持った”適合態”となった。
「ほう、人型を保ったままラフムとなったか…」
「もう俺は俺自身の力を恐れねぇ、コイツを利用してお前を倒す―――いや、響を助けるんだッ!!」
啖呵を切ってゴズテンノウへ迫るサンダーラフムのスピードは、霹靂として戦っていた時よりも速く感じた。
実際はサンダーボルテックスの方が速度は勝るのだが、今までの決意に満ちた動きから一変して、自由度の高い機動をする様になった為、動きが捉えづらくなっているのだ。
「動きが良くなったか、霹靂! しかしそれだけでは……」
ゴズテンノウが訓練場全体に
帯電性の高いラフムであっても神の力を持った電流は身に
「私は倒せないッ!」
一転して今度はゴズテンノウが攻める。一気にサンダーとの距離を縮め、その雷光の如き素早さで彼目掛けて拳を突き立てる。が、その瞬間、サンダーは帯状の雷を発生させ眩い閃光でゴズテンノウの目をくらませる。
無駄だと言わんばかりにゴズテンノウは先程と同様に全方位へ雷を放ってサンダーを補足しようとした。
しかし、彼女はその刹那、驚くべき光景を目の当たりにした。
「残念だが、今の俺には雷は効かねぇ」
サンダーがゴズテンノウの放った雷を操作し、瞬く間に放電させていったのだ。
「私の雷を…操っただと!?」
「前に公共電波を操作して周波数を変えるなんて仕事をした事があったんだが、あん時の応用だ。今の俺なら全て雷の力を意のままに出来るぜ」
サンダーラフムは手の平に抱えていたゴズテンノウの雷を放電仕切ると、変貌後に格納していたサンダーイートリッジを再び取り出し、起動させる。
《Thunder》
「変身」
《Change・Thunder・Voltex》
自らの性質を完全に掌握した状態から仮面ライダー霹靂・サンダーボルテックスへと変身する。
「お前の攻撃は通用しない、ボルテックスの行動制限は克服した、さあどう戦う?」
暴走の危険と隣り合わせであったサンダーボルテックスの力も今となってはただの強化形態となり、霹靂は余裕を見せつける。
彼の著しい成長を目撃したゴズテンノウは思わず笑みを溢した。
「フッ…私を倒すまでが戦いの勝利だぞ?」
「そんなの通過点でしかねーよ、今の俺にとってはな」
軽口を叩くと、サンダーボルテックスは光の様な速さでゴズテンノウの視界から消え、背後を取る。
「攻撃までの振りが長すぎるぞ―――!?」
振り返って攻撃しようとしたゴズテンノウだったが、既にサンダーボルテックスの姿は無かった。攻撃の振りの長さは彼女の行動を誘い出す為の囮だった。
そして、たった一瞬サンダーボルテックスの姿を見失ったのが彼の逆転を生んだ。
右側からの殴打、に見せかけた左側からの蹴撃。
振りの大きいキック、と思い回避した方向からの意表を突くパンチ。
それらのフェイントを高速で繰り出す事による翻弄。
時間的な制約から解放されたサンダーボルテックスは息つく暇の無い攻撃の応酬でゴズテンノウの能力を上回り、彼女を出し抜く程の強さを見せ付けていた。
「良いぞ、霹靂……!」
「後はお前を撃破させて貰うぜ、覚悟しろよッ!」
《Thunder…ImpactVoltex》
強化変身アイテム、ボルトリガーを介したサンダーの能力強化、最終段階。
ゴズテンノウを追い詰める程の力を見せていたサンダーボルテックスのスペックが更に上昇し、ゴズテンノウの身体能力を圧倒し、果てには彼女の雷の力を強制的に吸収し、自らの力とする。
(く…防御する為の余力が出ん…)
サンダーボルテックスは超強力な雷の力を溜め込んだ足で跳躍し、ゴズテンノウへ飛び蹴りを決める。
「くらええええッッ!!」
―――ゴズテンノウが、倒れた。
その巨躯を粒子に変え、変貌していた光流の姿が露わになる。
変身を解除した雷電は彼女の体を抱えると、腰に携えていたイートリッジホルダーからブランクイートリッジを取り出し、ゴズテンノウの粒子を採取する。
粒子はブランクイートリッジへ吸収されると、神々しい輝きを放つイートリッジへと変化した。が、所々から火花を散らす。
「やはり神の力は通常のイートリッジだと容量オーバーと言った所か…ゴズテンノウ、無事か?」
「ああ……」
呆けた顔を見せる光流は、一段と逞しく見える雷電を見て、再び辛い気持ちを抑え切れなくなった。
「改めて済まない、霹靂。私はお前の両親を殺害した、その罪は消えない…ここまでやって来たが本当に正しい事だったのか、今でも分からない。お前の様な強い奴に、けして消えない傷を与えて、人の命を奪って…やはり私は後悔で胸が張り裂けそうだ」
「だから俺は仇討ちをした。お前を超えて、勝って、力を奪った…そしてこれから妹も助ける。はぁ、これ以上お前を咎める理由が無いんだが?」
そう言うと雷電は訓練場を後にしようとする。
「おい…本当に良いのか? 殴るでも殺すでも、もっと仕返す権利がお前にはあるだろう!」
「過ぎた事をグチグチと…お前戦いは派手にやるのに繊細なんだな」
「なっ…」
「俺はなりたい俺に変身する。辛い過去を乗り越えて、家族を、仲間を守れる強い俺にな…その為にはお前を憎む事なんて出来ねーしするつもりもねぇ。それこそが理想の俺の姿だ」
雷電は振り向き様に微笑むと、光流にかつて言われた言葉を投げ掛ける。
「ただ、そうだな…確かに死んだ人は戻らねぇ。でも? だから? 今生きてる人間は一人でも多く助けるんだってさ……お前が人を傷付けて来たのを後悔するなら、それ以上の人間を助けてみせろよ、源光流!」
「―――!」
光流は衝撃を受け、その場に立ち尽くす。
「お前が罪を償える場所は用意するつもりだ。ま、似たモン同志頑張ろうぜ」
「……ああ、そうか…そうだとも、私に出来る事なら、やるまでだ」
光流の決意に雷電はかつての自分を思い出し、少し照れ臭くなった。