仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#92 準備

《New Winning》

《Neo Wind》

 

 金剛の指示を受けたウイニングは浮遊物を操作するラフムを眼前に呼び出したダブルイートリッジを分割、ニューウイニングとネオウインドを起動させる。

 ニューウイニングをロインクロスへ、ネオウインドをウェアラブレスへと装填、ブートトリガーを引いて強化変身を行う。

 

《True Power・Further Change・Winning…”Catharsis”》

 

 深緑の鎧を纏った最強の戦士が風の力で浮上しながら移動する。

 目標であるラフムを目視すると、ロインクロスとウェアラブレスの各スイッチを連打する。

 

「まずはアイツか!!」

 

《Catharsis・Break・Against》

 

 カタルシス最強最大の能力解放状態。これにより発生する風はラフムを構築するマルドゥック構成素全てを奪い、吸収する。これによりラフムは完全に人間に戻るのである。

 

「あれ…俺……今まで一体?」

「戻りましたか!? 良かった! 迎えが来るまでそこで待機お願いします!!」

 

 人間に戻った機動隊員は訳が分からないまま頷くと、訳が分からないままウイニングカタルシスを応援しながら見送る。

 

 ウイニングカタルシスが次の地点を確認し、急行する。

 そこはバディ研究室も位置する研究ブロックであり、未だ避難の遅れているエリアでもあった。

 

「ラフムは眼前…って、千歳さん!」

 

 破損した通路で千歳がふくらはぎを押さえて腰を下ろしていた。驚いたウイニングカタルシスが一旦足を止める。

 

「大丈夫ですか!?」

「霧島さん…私は良いのでラフムを追って下さい。あっちの方向だと上昇しようとしている可能性が高いです」

 

 気丈に振る舞う千歳だったが、押さえていたふくらはぎからは決して少なくない量の血を流している。

 

「…金剛さん、出血をしているケガ人を見つけたので現在のラフムを撃破後、一旦医療ブロックへ移動します」

 

 金剛へと報告し、了承を得ると、ウイニングカタルシスは自らのマフラーを千切って千歳の患部に巻き付ける。

 

「簡単な応急処置ですが、もう少しの辛抱です。すぐに助けます!」

 

 そう告げられ、千歳は何かを思い出したが、ウイニングカタルシスは既にラフムの元へと行ってしまった。彼に聞きたい事があった筈なのに―――。

 

 

「早急に倒す!!」

 

 再びのカタルシス・ブレイク・アゲインストで巨腕のラフムを撃破、人間へと戻すと、通路を引き返して千歳の元へ戻る。

 

「戻りました、医療ブロックへお連れします!」

「え…ラフムを倒して来たんですか? 早くないですか……」

「千歳さんを助けたかったし、少し張り切りました」

 

 ウイニングカタルシスがふふ、と笑い声を漏らすと、千歳を背負うと風の力による高速移動を始める。

 

「…そう言えば、霧島さん。私、なんだか昔もこうやって助けて貰った気がして……あの時は助けてくれた子が私よりも小さくて背負えなかったんですけど」

「昔もこんなケガを?」

「うーん…ええ、そうですね。あの時も足を痛めていた気がします。でも、不思議と痛くありませんでした」

「痛くなかった?」

 

 カタルシスが問うと、千歳は少し照れ臭そうに頷く。

 

「誰かから優しくされたのが嬉しくて、そう、痛い以上に嬉しかったんです」

 

 痛み以上の嬉しさ。カタルシス―――楓にもその意味が分かる気がした。

 人は人と共にあれば痛みを、苦しみを乗り越えられると、今までの戦いが教えてくれるのだ。

 

 そうした強い共感と共に、カタルシスは古い記憶が呼び覚まされた。

 あの日の悔しさと一緒に忘れていた過去を、思い出したのだ。 

 

「千歳さんって、茨城に住んでました?」

「…! はい、昔那珂市に住んでて、今の話もその時の事です」

 

 二人が(なにがし)かの思いにふけ、静寂が続く。

 

 

 

「……あの、霧島さんの下の名前って…確か……」

 

 千歳が言いかけた所で一行は大規模医療ブロックに到着する。

 

「千歳さん、足お大事にして下さい」

「え、あの…」

 

 口ごもる千歳にカタルシスは一度変身を解除すると、笑顔を向けた。

 

「千歳さんにお話ししたい事があります…ですが、まだ後で!」

 

 そう告げると、再びカタルシスへと変身した。

 

 また彼の背を見るばかり、千歳は少しだけ湧いた歯痒い気持ちを心の奥に沈めた。

 

――

 

 カタルシスによる二体のラフム撃破と時を同じくしてサンダーボルテックスは、目視不可能なレベルの高速機動を見せながら指定されていたラフム六体を殲滅し終わった。

 

「まだだ…まだ遅ぇ……」

 

 溢れ出る悔しさを口にしながら手を握ると、ゴズテンノウとの戦闘で得られたとてつもない力を秘めたイートリッジの事を思い出す。

 

「あれさえあれば…」

 

 未だ開発に至っていないアイテムの事を考えてもしょうがない、とサンダーボルテックスは気持ちを切り替えて金剛へと連絡する。

 

「こっちは片付きました」

「早いね! そしたら後は火島君に任せよう」

「了解ッス、でも…俺はまだ遅い」

 

 嘘付け~、と金剛に笑われる。が、雷電は本気だった。

 

「俺はもっと、もっと早く、強くなれる。ゴズテンノウのイートリッジがあれば」

「そうか、成程…現状が解決したら何とかするよ。神への挑戦は科学者の醍醐味だ」

「お願いします」

 

 金剛は電波の先にいる金剛に頭を下げた。

 

――

 

「うおりゃあッ!!」

 

 楓、雷電を追う様にラフムを撃破するバーン。彼は元の身体能力が非常に高いものの、二人と異なり強化形態を有している訳では無い。それによるスペックの違いがラフム撃破数の開きを生んでいた。

 

「はぁっ、はあッ!」

 

 息を上げながら四体目のラフムを撃破する。残り二体…バーンは歯を噛み締める。

 

「火島君、大丈夫か? 以前のライダーの戦闘傾向から比較すると君は十分やってるよ」

 

 金剛からの連絡だった。彼はまるで勇太郎の心を見透かす様に言葉を掛ける。

 

「ご心配あざっす、金剛さん。でも俺は大丈夫です」

 

 バーンはそう言うと、サイクロンイートリッジをホルダーから取り出す。

 

《Cyclone》

《Ride・Cyclone》

 

 ライドサイクロンを呼び出し、バーンは次のラフムの元へ走る。

 

「長官、聞こえますか!?」

「火島君…ああ、聞こえるよ」

「今から基地ブッ壊すかもです!!」

「…マジすか」

 

 ライドシステムにより、サイクロンが瞬時にバーンの元へ転送される。

 バーンが搭乗すると、決して広くない通路を(かえり)みずにサイクロンフォームへ変身する。

 

《Form・Change・Cyclone》

 

「ブッ飛ばすぜぇえぇぇ!!」

 

 巨大な増加装甲を操りながらラフムのいる地点へと力づくで到達し、サイクロンフォームのミサイルを発射する。

 

「まずは一体!!」

「火島君! 火島君!?」

 

 長官からの連絡が入るが、脇目も振らずに次のラフムへ突き進む。

 

「お前が最後かァッ!!」

 

《Cyclone…Impact!!》

 

 見るからに頑強そうな筋肉隆々のラフムが立つ開けた通路へ出ると、バーンはサイクロンフォームの全砲門を展開する。

 サイクロンフォームの最大開放とバーン性質による、火力の大幅増強を加えたミサイル掃射の一撃で終わらせる。

 

「ラフム撃破完了ォ!!」

「火島君、今月の報酬は下げるね」

 

――

 

 今回バディ基地内で起こったラフムの騒動はライダーの活躍により鎮圧された。

 ラフムとして確認された十五名は以前ウインドに乗っ取られた楓により犠牲になり、蘇生した隊員らであった事から、インテグララフムが手に掛けた人物はラフムに変貌すると言う仮説が藤村兄妹により提出された。

 

 また、基地の破損は痛手となったものの、医療ブロックと研究ブロックの一部修繕のみを行い、他の施設への措置は見送りとなった。二日後に来たるティアマトの復活に備え、そちらに集中する意図があった。

 

――

 

「母ちゃん、俺…ラフムになっちまったけど、この力が誰かの為になるらしいから、頑張るよ」

 

 十二月七日、午後十八時二分。

 神奈川県、茅ケ崎市。

 

 ”エクストラ”としてバディに協力する運びになった恵介は母に再会し、自分の歩みを報告した。

 それを聞いた母、茜は恵介と、同行していた楓、二人の息子を抱き締めた。

 

「無茶すんじゃないよ!」

「はい、頑張ります」

「母ちゃんも元気でな」

 

――

 

 午後十七時五十三分。

 東京都板橋区、帝賀大学病院。

 

 そこに入院していた女性が目を覚ます。

 

「…あれ、体が軽い」

 

 もしかして、と女性が体を起こすと、ベッドの横には恋人が座っていた。

 

「おはよう」

「……勇魚くん」

 

 女性は、かつてペイルラフム―――淡路島勇魚がティアマトに与してでも救おうとした恋人であった。

 

「私、元気になってるみたいなんだけど、もしかして勇魚くんのお陰…?」

「いや、違う。治療に全力を尽くしてくれた先生、そして俺に協力してくれた仲間達のお陰だ」

 

 そう、と女性が返すと、少し複雑そうな顔を見せる。

 

「俺の力で君を治したかったのに…済まない」

「ううん、私がいなくてひとりぼっちになってないか心配だったから…仲間がいるって聞いて安心しちゃった」

 

 淡路島は瞳を潤ませながら笑うと、最後に恋人の手を握る。

 

「それじゃあ、俺は行く。仲間が待ってるんだ」

「行ってらっしゃい、勇魚くん。私も、待ってるから!」

 

――

 

 淡路島と時を同じくして、帝賀大学病院、集中治療室。

 

 雷電は妹である響の手術に立ち会っていた。

 

「それではお兄さん、お願いします」

 

 執刀医の指示に従い、雷電がサンダーラフムへと変貌、響の体に触れて彼女の身体に流れ続ける強力な電流を取り除く。そしてそれと同時に手術が本格的に開始される。

 雷電の今までの努力が実り、響の心臓が移植される事で回復が見込める事となった。

 大規模な術式ではあるが、そこには世界最先端の医療技術、医師達が結集していた。

 

 

 ―――結果、手術は成功した。

 

 ずっと妹の為に尽くして来た雷電はバディの面々との出会いに感謝すると共に、彼らの恩義に報いる決意を改めた。

 

 

――

 

 来たる十二月十日。

 

 勇太郎による各ライドツールの端末間操作共有の提案とバーン新フォームの策定。

 吹雪からの依頼を受け、ライドツールの増産。

 アイアスの量産と自衛隊、警察、及びライダーからの指名を受けた特別人員へのロインクロス・トループ譲渡。

 

 各々が準備を進め、ティアマト復活の日を迎える。

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