仮面ライダーインテグラ   作:虎ノ門ブチアナ

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#94 圧倒

 十二月十日、正午十二時三十五分。

 鹿児島県鹿児島市桜島。

 

「こちら武蔵、上空からティアマトラフムを補足した。見えてると思うが全長は推定十五メートル…デカ過ぎるぞ!?」

 

 ライドサイクロンに乗って被害現場へ突撃するアイアスが様子を確認すると、その異質なラフムに動揺が隠し切れない。

 

「敵の情報は確認したわ。武蔵君、大怪我をしたのだから無茶しない様にね」

「あざっす、先生。俺は問題ねぇ」

「問題無い訳無いでしょ」

「いやそうは言うがな、ホントに無事なんだ。恐ろしい事にな」

 

 肺を貫かれた筈の大護が実際無事な事に違和感を覚える藤村だったが、彼の実父である武蔵博士からも彼の頑強さについては何も知らないと以前言われてしまった。

 

「ま、現状体に異常は無ぇから大丈夫っすよ先生」

 

 そう言って大護は不敵に笑うと、地上に着陸してライドサイクロンを走らせる。

 

「分かったわ、武蔵君……それではライダーに今後の指示をするわ。ウイニングはカタルシスで周辺ラフムを人間に戻し避難誘導、バーンはボルテックス、アイアスはパラディオンでティアマトの護衛に付いているバミューダと交戦、霹靂は新進気鋭の”ゴズテンノウ”でティアマトを狙って頂戴」

「了解!」

 

 ティアマトの元へ向かっている四人のライダーが声を合わせると、それぞれの最大戦力を持ち出す。

 

《W・E-tridge》

《Palladion》

《Voltex》

 

《Gozu Tennou》

 

 霹靂の扱う新たなイートリッジ、ゴズテンノウ。その形状は通常のイートリッジとは全く異なり、牛型の小型端末から可変して、ブートトリガーと一体化した様な形となった。

 

 

「ティアマト、ライダーが来ました」

 

 一方のラフム側もライダーを補足し、先んじて目視したアガルタが臨戦態勢を取る。

 と、続いてライダーの動向に気付いたシャングリラが目を丸くした。

 

「サンダーの持っているイートリッジ、未確認のモノです」

 

 こちらの全く知り得ないアイテムにシャングリラは動揺するが、ティアマトは落ち着き払っていた。

 

「仮面ライダー霹靂…彼の持つイートリッジは神の性質を持っている。恐らく僕を狙うから、シャングリラとアガルタは決して霹靂と交戦しない様に。勝てないよ」

 

 はっ、と返すと二体はティアマトの左右に立って護衛する。

 

 

《True Power・Further Change・Winning…”Catharsis”》

《ネームド・Palladion・アクセプト・エキスパンション》

《Change・Burn・Voltex》

 

 ウイニング、バーン、アイアスに続いて霹靂も強化変身を敢行する。

 

「力貸せよ…!」

 

 念じる様に霹靂が呟くと、ゴズテンノウイートリッジから付随するグリップのトリガーを引く。

 

《Change…God・Tame・Node》

 

 重々しいサウンドと共に天からの雷が霹靂に力を与える。

 全身が金色と橙色に輝き、雷と蜘蛛、そして牛、平安武士の意匠を持った明らかに強力であろう姿と化す。

 

「コイツが神の性質…!」

 

 

「…あれらが、仮面ライダー」

 

 勇壮な戦士の姿を前に、ティアマトは感嘆する。

 全く狼狽える素振りを見せないティアマトに新たな力を得た霹靂はおい、と低い声色で言葉を掛けた。

 

「お前が何を考えてんのか知らねぇが、お前のせいで色んな人が傷付いてるのは分かってんのか?」

「ああ、重々承知している。分かっているからこそ止まる訳にはいかないんだ……霹靂、気に食わないのなら立ち向かうと良い」

 

 ティアマトの高圧的な発言に触発され、霹靂は先陣を切って跳躍する。

 

「正義を貫きライドする仮面の戦士……」

 

 雷が如く一直線に飛び込んだ霹靂が手刀を見舞う。

 対するティアマトは難なく左腕で防御する。

 

 が、その腕は斬り落とされていた。

 

「その名をまさしく、仮面ライダー…凄天霹靂(セイテンヘキレキ)!!」

 

 高らかに名乗ったその戦士、凄天霹靂はティアマトに一撃を加え、着地する。

 

「しまった、油断したな」

「ティアマト!」

 

 手傷を負ったティアマトにアガルタとシャングリラが動揺しながら駆け寄るが、二体をライダーが阻む。

 

 アガルタ対アイアス、シャングリラ対バーンの構図が組み上がり、ティアマトを守る者はいなくなった。

 

「これで一対一、お前を守るヤツはいねぇぞ」

「守る奴なんてまさか…君が一なら僕は百だ。彼らに守って貰わずとも構わない」

 

 凄天霹靂の煽りを嘲る様にティアマトは言葉を重ねる。そんな彼の態度が全く気に入らない凄天霹靂は能力を一段階解放させる。

 

《God・ThunderAttack》

 

「お前が奪って来た命の分だけ…キッチリとブン殴らせろ…!!」

 

――

 

「おトモダチ助けなくて平気?」

「俺はアイツを信じてる…お前は大人しく俺と戦え!」

 

 アイアスのバレットナックルがアガルタを狙い撃つが、全て触腕で弾かれてしまう。

 

「女の子の柔肌に銃弾はガチでダウトやろ」

「ふざけんなよ! お前がティアマトに加担している以上もう手は選べないんだよッ!」

 

 尚もアイアスがアガルタを追うが、透明な壁の様なモノに阻まれ、ぶつかってしまう。

 

「おや、前方不注意だね」

 

 その壁を形成したのはシャングリラであった。

 

「…シャングリラ!」

 

 それと同時に彼を追ってバーンが飛んで来る。

 近くの建物を蹴ってシャングリラへと距離を詰めると、炎と雷を放つ。

 

 バーンの攻撃によりシャングリラの発生させたフィールドは解除され、アイアスはアガルタへと射撃を試みる。

 が、またしても防がれてしまう。

 

「イカに豆鉄砲、そんなもん効かないよ!」

 

 アガルタの触腕がアイアスを地面へ叩き付ける。

 

「! 大護さん!?」

「よそ見している場合じゃないよ!」

 

 今度はアイアスの身を案じたバーンが、シャングリラの猛攻を受ける。

 彼の爪先からは神経毒が流れており、攻撃を食らった直後、バーンは立ち眩む。

 

「これ、は…! 神経毒かよ!?」

「ご名答、一般的なヘビ毒は出血毒だが僕のはスペシャル…そう言うタイプのガラガラヘビの性質を持つって訳さ」

 

 ハッ、とバーンが乾いた笑いを放つと、呼吸もままならない状態で立ち上がり、シャングリラへと炎の鉄拳をぶつける。が、彼の形成したフィールドにより防がれ、一歩届かなかった。

 その内、呼吸が絶えたバーンは意識を失い倒れてしまった。

 

「ラフムであろうとも神経に影響を与える毒は良く効くね。ああ、サンダーの様子を見る限り死にはしないよ」

 

 そう言ってふふ、と笑ったシャングリラはバーンに一蹴り与えると、今度はアイアスへと矛先を向ける。

 

「次は君だ、手加減はしないよ」

 

 先程の攻撃で大きな痛手を負ったアイアスだったが、何とか立ち上がる。

 

「人間を舐めるな……!」

 

 啖呵を切って走り出したアイアスだったが、アガルタの触腕に打たれ、転げる。

 

「そうそう、アタシ達のプライド、思想、決意…そーゆーのも舐めないでよね。アナタは何も守れず自分の弱さに悔いた後、ティアマトの手でラフムにしてもらうんだから…これからの世界を守る為にね」

「お前らの作る傲慢な世界なんか、誰が守ってやるもんかッ!」

 

 なおも叫ぶアイアスを、シャングリラは後ろから執拗に痛め付ける。

 

「君はバカだな、本当に! 君に選ぶ権利があると思っているのかい?」

 

 この仕打ちに、流石のアイアスも機能が停止し始める。

 シャングリラは攻撃に並々ならぬ殺意を込めていた。

 

「くっ…!」

 

 焦燥、緊迫、死の直感。

 それは、今までアイアス―――大護が感じる事の無かったモノだった。

 

 首を絞められても、肺を突かれても、どこかで自分は”大丈夫”だと思っていた。

 死の近くにいながら、死を知覚する事は無かった。

 だが、今、初めて大護は”自らの死”に触れた。

 

 恐怖、葛藤、悔恨。

 それは、ラフムとなる誰しもが感じるモノだった。

 それを、彼は知らなかった。

 

 自らの無知を恥じる間も無く、シャングリラによる殺意のこもった最後の一撃が襲う。

 

 多くの感情が入り混じる中、大護は思わず目を瞑った。死に向き合えなかった。

 

《Catharsis・Zeugma》

「!」

 

 刹那、ウイニングカタルシスの風がシャングリラ、アガルタを裂き、アイアスから引き離す。

 

「大護さん!!」

「かえ、で…」

 

 ティアマトが生み出したラフムを全て人間に戻し、避難を完了させたカタルシスが救援に入る。

 それと同時にアイアスが耐久限界を迎え、装着状態のまま機能を停止する。

 残されたバッテリーを用いて大量の蒸気を噴出しながらアイアスが自動的に退避する。

 

「アイアスの緊急離脱システムか…良かった」

(大護さん、震えていた…恐らくアイアスも戦える状態じゃないし下がってくれて助かった)

 

 傷が癒えたバミューダの二体はカタルシスへと身構える。

 

「藤村さん、他の皆の状況は?」

「……」

「藤村さん!!」

「ごっ、ごめんなさい…私が指示を考えている間に…他の三人がやられてしまって」

「え?」

 

 珍しく藤村が狼狽している。

 現在確認した大護の他、勇太郎、新たな力を行使した雷電までもがやられている状況に楓もと聞き返す。

 

「せめて空自の増援が到着するまでは…持ち堪えて…!」

 

 かなり厳しい状況になっている事が藤村の声色から伝わる。

 カタルシスは静かにはい、と返すと、ボロボロのバーンにインテグララフムの性質を利用した解毒措置をし、安全な場所へ移動させると、ティアマトの方へと飛び立つ。

 

「待て、ウイニング!!」

 

 敵を沈めんとバミューダが襲い掛かる。が、カタルシスは天から雷を放ち、二体を焼き焦がす。

 

「やはり…彼らに雷は有効打か。とにかく構ってられない!」

 

 カタルシスは速度を上げると、ティアマトを発見し、五段階目の能力解放を行う。

 

《Catharsis・Sigma》

 

 背後からの攻撃で不意打ちを受けたティアマトはよろけながらカタルシスを目視する。

 

「来たか、ウイニング…!」

 

 ウイニングが着地すると、霹靂を探す。

 

「暁君! 無事なの!?」

「霹靂ならそこだ」

 

 ティアマトが指差した方向を見ると、変身解除された雷電が血塗れで横たわっていた。

 

「―――」

「人だったのならばラフムにしたのだけれど、僕らに抵抗するラフムならば命の保証はしない」

 

 冷たくそう言い放つティアマトに、カタルシスは怒りが爆発しそうになったが、まずは雷電の治療を行う。

 

「それがインテグララフムの力か、素晴らしいね」

「他人事みたいだな、ティアマト」

 

 溜息をついたカタルシスは雷電を避難させると、ティアマトへと鋭い視線を向ける。

 

「ところでティアマト、暁君…霹靂のベルトはどうした?」

「あぁ、そう言えば無くなっていたな…あぁ、そうか。そうかシー・ディーが持っていったのかな」

「シー・ディー? 話に聞いた長官達を助けた人…?」

「そう、彼さ。彼は僕らにラフムの力を与えられる上、その力は万能に近い。今の状況だって彼の思うままだろう」

 

 何? とカタルシスが問うと、真実を理解していないであろう彼にティアマトは笑う。

 

「はは、そんな事はいい…今は君と僕、どちらが勝ち、どちらの願う世界が実現するかだろう」

「ティアマト…僕は負けない! 背負って来た思いは僕にもある!!」

 

 カタルシスが叫ぶと、ティアマトへ立ち向かう。

 その姿を見てティアマトはほくそ笑む。

 

(―――勝った)

 

 

 

 その時だった。

 

 両者の間に割って入る様に、長官が現れたのだ。

 

神々(ディンギル)

 

 長官がそう呟いた瞬間、一条の光がティアマトを焼き尽くす。

 

「ッギャアアアア!!」

 

 

 ティアマトの断末魔がこだまする中、長官はカタルシスを抱えると瞬間移動した。

 そこは、別働していたエクストラの展開していた避難エリアだった。近くにいた恵介と(ながれ)は一瞬驚いたが、長官の顔を見るなり彼に状況を託さんと自分の仕事に集中する。

 

「!? 何が起こって…!?」

「事情は後で説明する。とにかく君達はここにいるんだ」

「ですが長官!」

「動くな、二度は言わない」

 

 初めて感じた長官の怒りにカタルシスは気圧され、変身を解除する。

 

「あの、長官」

「なんだい?」

「あのまま、戦っていたら…」

「君は死んでいた。実は、アプス様からそう聞いていたんだ」

 

 言葉が詰まる。

 全く知らされていなかった事象に、楓は困惑していた。

 

「あの場で勝負が決まる事は分かっていた。人類はラフムに勝てない事も分かっていた。それでも、戦い続ける事が良かったと思って皆に内緒で抗い続けた。でも、ダメそうだったから一つ賭けをする事にした」

 

 そう言うと長官は立ち上がる。

 

「賭け…? え、長官はどこへ…」

「弟と決着を付けに行く。それじゃあ、この賭けに勝つか負けるかは―――君が決めてくれ」

 

 楓が瞬きすると、長官の姿は既に無かった。

 

 嫌な予感と共に額から零れる汗を楓は拭った。

 

「……長官」

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