インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

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十話

IS学園―――一年一組。

 

「はーい。と言う訳で……一年一組代表はセシリア・オルコットさんに決定です!」

 

第三アリーナでの決闘から次の日。

ショートホームルームで、山田先生の明るい声が教室に響いた。

 

一夏は窓際の席で頬杖をつきながら、特に興味もなさそうに外を眺めている。

一方で、問題児―――織斑十秋は昨日の試合で医療室送りとなり、本日は欠席だ。

 

そして当の本人であるセシリアはというと。

 

「……」

 

腕を組みながら、どこか納得しきれていない様子で黙っていた。

 

(本来なら……わたくしが正面から勝ち取るべきでしたのに……)

 

だが現実は違う。

あの日、一夏との戦闘で彼女のIS《ブルー・ティアーズ》は致命的な損傷を受け、戦闘続行不可能となった。

 

どれだけ攻撃しても、全てが《全反撃》で跳ね返される。

さらに《魔剣ロストヴェイン》による能力干渉―――あれはもはや戦闘ではなく、一方的な蹂躙だった。

 

結果として。

 

『リオネス。お前が相手しろ』

 

織斑千冬の一言で、一夏が代理として出場。

そして十秋を叩き潰した。

 

「クラス代表はセシリア・オルコットで異存はないな?」

 

「はーい!」

 

不満はあれど、誰も異議を唱える者はいない。

あの場にいた全員が理解していたからだ。

 

―――実力差という“現実”を。

 

こうして、一年一組の代表は正式にセシリアへと決定した。

 

 

その後の授業は、これといって特筆すべきことはなかった。

 

ISの基本講義。

システム説明。

簡単な模擬操作。

 

そして―――実演。

 

「では、ここはリオネスとオルコット。前に出ろ」

 

「はい」

「了解だ」

 

二人は淡々と前に出る。

 

セシリアは正確無比な操作を見せ、

一夏は―――最低限の動きだけで全てをこなした。

 

(なんですの……あの余裕は……)

 

セシリアは内心で歯噛みする。

自分が全力でやっていることを、あの男は“作業”のようにこなしている。

 

圧倒的な差。

それを、嫌というほど思い知らされる時間だった。

 

 

そして放課後。

 

セシリアのクラス代表就任を祝うパーティーが、教室で開かれていた。

 

「オルコットさん、おめでとう!」

「流石代表候補生!」

 

女子たちが盛り上がる中―――

 

「あれ? 噂の二人目は何処ですか!?」

 

新聞部の生徒が騒ぎ出す。

 

「確かにいませんわね……」

 

セシリアも周囲を見渡すが、一夏の姿はどこにもない。

 

しかし誰も深く気にしなかった。

“あの男ならそういうこともある”と、無意識に納得してしまっていたのだ。

 

 

その頃―――。

 

IS学園・寮へと続く道。

 

静かな夜道を、一夏は一人歩いていた。

 

月明かりが地面を照らし、足音だけが響く。

 

「……いつまで付いてくるんだ?」

 

ふと立ち止まり、背後に声を投げる。

 

すると―――。

 

「……気付いていたか」

 

暗闇の中から現れたのは、織斑千冬だった。

 

「お前は……一夏なのか?」

 

その問いには、疑念と確信が入り混じっていた。

 

白く変色した髪。

首筋に残る傷跡。

そして、以前とは明らかに違う雰囲気。

 

それでも―――。

 

「あぁ。久しぶりだね、千冬姉」

 

一夏は、笑った。

 

「っ!!?」

 

その瞬間、千冬の背筋に冷たいものが走る。

 

それは笑顔のはずだった。

だが、そこにあるのは―――“何か別のもの”。

 

「う~ん……やっぱり、そっちの勘は鈍ってないんだな」

 

軽く手を振る一夏。

 

だが、その仕草の裏で。

彼の視線は、確実に“狩る側”のそれだった。

 

(もし今、近づいてきていたら―――)

 

《身体狩り》で全てを奪っていた。

 

そんな考えが、一瞬だけ脳裏をよぎる。

 

「なんで……そんなにも変わってしまったんだ、一夏ァ!!」

 

千冬の声は震えていた。

 

「ああ? 変わった、ねぇ……」

 

一夏は小さく笑う。

 

「それをアンタが言うのか?」

 

「っ……!」

 

言葉に詰まる千冬。

 

「私は……お前がいなくなって、初めて気付いたんだ」

 

震える声で続ける。

 

「自分が、どれだけ取り返しのつかないことをしたのか……」

 

「……」

 

「だから……もう一度―――」

 

一歩、踏み出す。

 

「やり直さないか? 一夏」

 

その言葉に。

 

一夏の思考が、一瞬だけ止まる。

 

「もう一度、私たち三人で―――」

 

「……もう、その口を開くな」

 

空気が凍った。

 

「っ……!」

 

千冬の身体が、びくりと震える。

 

一夏の瞳には―――

明確な“拒絶”と“怒り”が宿っていた。

 

「反省してるつもりだったが……勘違いだったみたいだな」

 

低く、冷たい声。

 

「織斑千冬。あんたは何も分かってない」

 

一歩、後ろへ下がる。

 

「俺が何故ここにいるのかも……何を失ったのかも」

 

―――全部、奪われた。

 

あの日。

あの時。

あの場所で。

 

「もう、アンタと話すことはない」

 

背を向ける一夏。

 

「ま、待ってくれ!! 一夏ぁ―――!!」

 

伸ばされた手は―――届かない。

 

そのまま、一夏の姿は闇の中へと消えていった。

 

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