インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
IS学園―――一年一組
「はーい、皆さん。静かにして下さい!」
山田先生の明るい声で、いつものようにショートホームルームが始まる。
だが今日は、教室の空気がどこか違っていた。
「今日はですね、皆さんにお知らせがあります!」
ざわめきが広がる中、山田先生は少しだけ間を置き――にこりと笑う。
「今日から皆さんと一緒に勉強する転校生を紹介します!
シャルル・デュノア君と、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです!」
教室の扉が開き、二人の転校生が姿を現す。
一人は中性的な雰囲気を纏った少年――シャルル。
もう一人は鋭い視線を持つ銀髪の少女――ラウラ。
ざわめきは一気に大きくなった。
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## ◇
## リオネス家
「どうやら、無事に転校生が来たようね」
バルコニーで紅茶を傾けながら、ジャンヌが呟く。
その背後には、静かに控えるエドの姿があった。
「らしいな。フランスであれだけ派手にやっておいて、よく通したもんだ」
エドの言葉には呆れが混じっている。
「うちの力を舐めてはダメよ」
ジャンヌは当然と言わんばかりに微笑んだ。
フランスで起きた“災害級の騒動”。
その裏でジャンヌは、一部情報の提供と引き換えに、シャルル・デュノアの出国許可を強引に取り付けていたのだ。
「さて……次の一手を打ちましょうか」
モニターに映る一年一組の様子を眺めながら、ジャンヌは楽しげに目を細める。
ラウラに叩かれている十秋の姿を確認すると、モニターを消した。
「戦争の準備を始めましょう」
その笑みは、まるで新しい玩具を手に入れた子供のようだった。
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## ◇
## IS学園―――生徒会室
「……ふぅ」
書類の山に囲まれながら、更識楯無は淡々と処理を進めていた。
授業免除の身である彼女は、日中の大半をここで過ごしている。
「一組に転校生、ね」
手に取った報告書に目を通す。
「フランスとドイツ……」
数日前の情報が脳裏をよぎる。
フランスで発生した異常な規模の事件――。
(どう考えても、リオネス家が関わってるわよね)
そして、もう一つ。
「ドイツは……現役軍人、兼……ん?」
ラウラの資料に目を走らせた瞬間、楯無の目が止まる。
「これは……一筋縄じゃいかなさそうね」
ラウラ・ボーデヴィッヒ
IS戦術教官――織斑千冬
その文字が、はっきりと記されていた。
「千冬の教え子、か……」
軽く息を吐いた、その時。
ピロッ♪
端末に通知音が鳴る。
「……リオネス?」
送り主を見た瞬間、楯無の表情がわずかに引き締まる。
「嫌な予感しかしないんだけど」
メールを開いた瞬間――
「これは……」
内容を読んだ楯無は、思わず言葉を失った。
扱いを誤れば、甚大な被害を生む情報。
そして添えられていた注意書き。
――“その日まで手を出すな”
「……つまり、彼に処理させるつもりね」
指定された日付を確認する。
「トーナメント当日、か……」
楯無は小さく息を吐いた。
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## ◇
## IS学園―――屋上
『元気にしているかい? イチカ』
屋上で寝転んでいた一夏の耳に、ジャンヌの声が届く。
プライベート・チャンネルだ。
一夏は目を閉じたまま答える。
「何ですか、いきなり」
『相変わらず教室に行ってないでしょうから、ちょっとした情報をね』
「どうせ碌でもない話だろ」
一夏は投げやりに返す。
『近いうちにね、大浴場が週二回解放されるそうよ』
「……風呂なら家でいいだろ」
一夏は〈暴食〉の能力で瞬間転移が可能だ。
わざわざ学園の風呂を使う理由はない。
『そうはいかないのよ……今回は』
その一言で、一夏の眉がわずかに動く。
「どういう意味だ」
『一年一組に転校生が二人来たのよ』
「……それがどうした」
嫌な予感が、確信に変わる。
『その子たちと一緒にお風呂、入ってきてね』
「…………は?」
思考が、止まった。
『そういうことだから、よろしく♪』
「おい待て――」
通信は一方的に切られた。
「……あの女」
深いため息が漏れる。
「無茶振りにも程があるだろ……」
しばらく空を見上げた後、一夏はゆっくりと起き上がった。
「……あいつに聞くか」
脳裏に浮かぶのは一人の女。
更識楯無。
「どうせ、何か知ってるだろ」
そう呟くと、一夏は屋上を後にし、生徒会室へと向かった。