インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
数日後―――第三アリーナ
放課後。人気のないはずの第三アリーナに、二つの機影が対峙していた。
「一人で自主練なんて……まさか、あの噂を信じていらっしゃるの?」
セシリアが呆れたように言うと、鈴は肩をすくめる。
「そっちこそ。こんな時間に練習なんて……理由は同じでしょ?」
数日前、学園内で妙な噂が流れた。
―――『学年別トーナメントで優勝すれば、織斑十秋かイチカ・リオネスと交際できる』
もちろん事実無根だが、恋に敏感な少女たちにとっては十分すぎる火種だった。
「……結局、優勝狙いってことね」
「ええ。なら―――ここで白黒つけてもよろしいのでは?」
互いに主兵装を展開し、静かに構える。
「望むところよ!」
次の瞬間―――
轟音と共に、二人の間を超音速の砲弾が貫いた。
「なっ……!?」
「どなたですの!?」
回避した二人が振り向くと、そこには漆黒のISが佇んでいた。
「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」
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### ◇
「ドイツ第三世代型―――シュヴァルツェア・レーゲン」
ラウラは冷ややかに二人を見下ろす。
「代表候補生が二人がかりで量産機に負けるとは……随分と質が落ちたものだな」
その一言で、空気が変わった。
ブチッ―――
鈴とセシリアの中で、何かが切れる。
「アンタ……スクラップにされに来たの?」
「どちらから始めます?」
「二人同時で来い。くだらん種馬を奪い合う雌に、私が負けるものか」
「「上等ッ!!」」
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### ◇
その頃―――
「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦だって!」
噂を聞いた十秋とシャルルは急いで向かう。
到着した先で見たのは―――
「セシリア!! 鈴!!」
一方的に押し込まれる二人の姿だった。
「なんで二対一で……!」
「アイツの防御が異常なんだ。攻撃が全部止められる……!」
「AIC……!」
シャルルが呟く。
絶対防御領域―――攻撃そのものを無効化する領域。
「やめろラウラ!!」
十秋の叫びも届かない。
その時―――
氷柱がラウラの前に突き刺さった。
「おいたが過ぎたな」
振り返るラウラ。
そこに立っていたのは―――
「イチカ・リオネス……!」
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### ◇
「引け」
短く告げる一夏。
だがラウラは構えを解かない。
「貴様を倒せば箔がつく」
「……箔?」
十秋が眉をひそめる。
ラウラは口元を歪めた。
「知らないのか。リオネス・ファミリアには全員懸賞金がかけられている」
空気が凍る。
「イチカ・リオネス―――懸賞金、10億ドル」
「……は?」
十秋の声が裏返る。
「だが私にとってはどうでもいい。欲しいのは実績だけだ!」
ラウラが突撃する。
「―――来い」
一夏も迎撃に入る。
氷が生まれ、砕け、弾丸が空間を裂く。
その戦いが本格化しかけた瞬間―――
ガギィン!!
鋭い金属音。
「……教官!?」
現れたのは織斑千冬だった。
「ここは戦場ではない。続きはトーナメントでやれ」
「……了解」
ラウラは素直に引いた。
「リオネス、お前もだ」
「ああ」
「よし、解散だ」
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### ◇
保健室。
ベッドの上で鈴とセシリアが治療を受けていた。
「別に助けてくれなくてもよかったのに」
「勝っていましたわ」
「無理だろ……」
十秋は呆れながらも安堵する。
「それより―――懸賞金って本当か?」
「噂では……」
「私も詳しくは……」
「本当だよ」
シャルルがディスプレイを展開する。
そこにはリオネス・ファミリアの情報が表示されていた。
「使用人で1億ドル……!?」
「イチカが10億……」
そして―――
「ジャンヌ・リオネス……100億ドル!?」
桁が違った。
「何なんだよ……その一族」
「世界規模の対テロ組織だよ」
シャルルが静かに説明する。
その時―――
ドアが勢いよく開いた。
「織斑くん!! デュノアくん!!」
女子生徒たちが雪崩れ込んでくる。
「「私とペア組んで!!」」
「は?」
突然の展開に固まる十秋。
「トーナメントは二人一組なの!」
「だから―――!」
「悪い。俺はシャルルと組む」
一瞬の静寂。
「……まあ男同士ならいいか」
「逆にアリかも」
妙に納得されて女子たちは去っていく。
「なんだよこれ……」
「大変だね」
そして―――
学年別トーナメントが、静かに幕を開けようとしていた。