インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

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十七話

数日後―――第三アリーナ

 

放課後。人気のないはずの第三アリーナに、二つの機影が対峙していた。

 

「一人で自主練なんて……まさか、あの噂を信じていらっしゃるの?」

 

セシリアが呆れたように言うと、鈴は肩をすくめる。

 

「そっちこそ。こんな時間に練習なんて……理由は同じでしょ?」

 

数日前、学園内で妙な噂が流れた。

 

―――『学年別トーナメントで優勝すれば、織斑十秋かイチカ・リオネスと交際できる』

 

もちろん事実無根だが、恋に敏感な少女たちにとっては十分すぎる火種だった。

 

「……結局、優勝狙いってことね」

 

「ええ。なら―――ここで白黒つけてもよろしいのでは?」

 

互いに主兵装を展開し、静かに構える。

 

「望むところよ!」

 

次の瞬間―――

 

轟音と共に、二人の間を超音速の砲弾が貫いた。

 

「なっ……!?」

 

「どなたですの!?」

 

回避した二人が振り向くと、そこには漆黒のISが佇んでいた。

 

「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

---

 

### ◇

 

「ドイツ第三世代型―――シュヴァルツェア・レーゲン」

 

ラウラは冷ややかに二人を見下ろす。

 

「代表候補生が二人がかりで量産機に負けるとは……随分と質が落ちたものだな」

 

その一言で、空気が変わった。

 

ブチッ―――

 

鈴とセシリアの中で、何かが切れる。

 

「アンタ……スクラップにされに来たの?」

 

「どちらから始めます?」

 

「二人同時で来い。くだらん種馬を奪い合う雌に、私が負けるものか」

 

「「上等ッ!!」」

 

---

 

### ◇

 

その頃―――

 

「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦だって!」

 

噂を聞いた十秋とシャルルは急いで向かう。

 

到着した先で見たのは―――

 

「セシリア!! 鈴!!」

 

一方的に押し込まれる二人の姿だった。

 

「なんで二対一で……!」

 

「アイツの防御が異常なんだ。攻撃が全部止められる……!」

 

「AIC……!」

 

シャルルが呟く。

 

絶対防御領域―――攻撃そのものを無効化する領域。

 

「やめろラウラ!!」

 

十秋の叫びも届かない。

 

その時―――

 

氷柱がラウラの前に突き刺さった。

 

「おいたが過ぎたな」

 

振り返るラウラ。

 

そこに立っていたのは―――

 

「イチカ・リオネス……!」

 

---

 

### ◇

 

「引け」

 

短く告げる一夏。

 

だがラウラは構えを解かない。

 

「貴様を倒せば箔がつく」

 

「……箔?」

 

十秋が眉をひそめる。

 

ラウラは口元を歪めた。

 

「知らないのか。リオネス・ファミリアには全員懸賞金がかけられている」

 

空気が凍る。

 

「イチカ・リオネス―――懸賞金、10億ドル」

 

「……は?」

 

十秋の声が裏返る。

 

「だが私にとってはどうでもいい。欲しいのは実績だけだ!」

 

ラウラが突撃する。

 

「―――来い」

 

一夏も迎撃に入る。

 

氷が生まれ、砕け、弾丸が空間を裂く。

 

その戦いが本格化しかけた瞬間―――

 

ガギィン!!

 

鋭い金属音。

 

「……教官!?」

 

現れたのは織斑千冬だった。

 

「ここは戦場ではない。続きはトーナメントでやれ」

 

「……了解」

 

ラウラは素直に引いた。

 

「リオネス、お前もだ」

 

「ああ」

 

「よし、解散だ」

 

---

 

### ◇

 

保健室。

 

ベッドの上で鈴とセシリアが治療を受けていた。

 

「別に助けてくれなくてもよかったのに」

 

「勝っていましたわ」

 

「無理だろ……」

 

十秋は呆れながらも安堵する。

 

「それより―――懸賞金って本当か?」

 

「噂では……」

 

「私も詳しくは……」

 

「本当だよ」

 

シャルルがディスプレイを展開する。

 

そこにはリオネス・ファミリアの情報が表示されていた。

 

「使用人で1億ドル……!?」

 

「イチカが10億……」

 

そして―――

 

「ジャンヌ・リオネス……100億ドル!?」

 

桁が違った。

 

「何なんだよ……その一族」

 

「世界規模の対テロ組織だよ」

 

シャルルが静かに説明する。

 

その時―――

 

ドアが勢いよく開いた。

 

「織斑くん!! デュノアくん!!」

 

女子生徒たちが雪崩れ込んでくる。

 

「「私とペア組んで!!」」

 

「は?」

 

突然の展開に固まる十秋。

 

「トーナメントは二人一組なの!」

 

「だから―――!」

 

「悪い。俺はシャルルと組む」

 

一瞬の静寂。

 

「……まあ男同士ならいいか」

 

「逆にアリかも」

 

妙に納得されて女子たちは去っていく。

 

「なんだよこれ……」

 

「大変だね」

 

そして―――

 

学年別トーナメントが、静かに幕を開けようとしていた。

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