インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

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EX-3

ジャンヌは、ここまで予想外の転生者を前に思わず、笑みを浮かべてしまう。

勝てない。

その一言しか思い湧かない。

 

(勝てる訳がないじゃない……)

 

倍化と半減の能力を有する二体の龍を前にし、ジャンヌは今出来ることを考える。

 

(試作品である装備は赤龍帝の〈洋服崩壊(ドレス・ブレイク)〉で全て破壊されてしまったし、あるのは外野に待機しているセバスの元にある装備しかない……)

 

赤龍帝だけであれば、まだ勝てる見込みがあった。

しかし、白龍皇の登場にそれは打ち砕かれる。

 

(撤退するしかない!!)

 

今ある戦力では、この二人に勝てる確率など、たかが知れている。

ジャンヌは撤退を決意し、大きく後退するが。

 

「逃がすと思うか?」

 

「っ!」

 

目の前に迫るエドにジャンヌは悔やむ。

飛行能力を有する彼らからは逃げることは、出来なかった。

 

「がっ!!」

 

首を掴まれ、そのまま建物に思いっ切り押さえつけられる。

いくら身体強化で肉体を強化してあっても、転生特典をフルに使える彼らの一撃は相当堪えた。

 

「ふん!!」

 

すかさず、エドはジャンヌの腹めがけ蹴りを繰り出す。

幾つもの建物を突き抜ける。

 

(やばい……これは、確実に何本か逝った……)

 

血を吐き、ジャンヌはぐったりとし、その場から一歩も動くことも出来なかった。

 

「まだ、生きているか」

 

エドはそんなジャンヌを前にし、近くにあった木材を掴む。

 

「わりぃーな。恨むなら、俺たちの平和を壊した自身を恨みな」

 

エドは木材の先端を心臓めがけ振り下ろす。

途切れかける意思にジャンヌは走馬灯が流れる。

 

 

 

 

私の家族は屑だった。

父親なんて知らないし、母親は毎度毎度違う男と一緒にいる。

暴力沙汰なんて当たり前だった。

気に入らないことがあれば、直ぐに私に当たる。

そんな毎日を生きてきて、唯一私が心を休める場所が図書館だった。

家から数分の所にある図書館で私は閉館までそこである本を読み過ごす。

私はいつものようにある本を手に取る。

 

百年戦争を終わらせた英雄の物語。

 

この本は私の一番の好きな物語だった。

ごく普通の村娘がだった彼女が神託を受け、戦場に行き、戦争を終わらす物語。

私はそんな彼女に憧れた。

 

「私はそんな貴女になれたらな……」

 

中学を卒業と同時に、私は家を出た。

居場所ない場所に居たくない私は、友達の家を点々とし、バイトで金を貯め、ボロイアパートを借り、その日を生きて来た……。

しかし、私の身体は……限界だった。

 

過労死。

 

無理なバイトの掛け持ちが原因だった。

私はバイト先で倒れ、病院に運び込まれたが、手遅れであり、私は短い人生を終える。

そんな時だった。

 

「ようこそ、お嬢ちゃん」

 

神を名乗る何かに私はであったのだ。

そして、私は転生してくれると言うので私は〈物語(ストーリー)〉と呼ばれる能力を作り、転生した。

どっかの名家に生まれ、私は前よりは不自由のない生活を送れると思っていた……その時までは。

五歳を迎えた時、私はこの家の秘密を知ってしまったのだ。

元々精神年齢が高かったのが原因だったため、私は一般教育はすぐに終わり、周りからよく褒められ、それが私の唯一の生きがいだった。

そして、次に教え込まれたのが……毒の使用法、あるいは耐性。

私は頭が真っ白になった。

普通では有り得ない教育に私は疑問を持ち、父に問い出す。

 

「うちの家系は代々、暗殺の家系なのだよ」

 

そして、私の平凡の日常はその日から終わりを告げる。

ナイフ、銃火器、あらゆる格闘技を叩き込まれ、ある時は毒を服用してもがき苦しみ、地獄の日々を過ごしてきた。

それから、数年。

私は―――クーデターを起こした。

壁に串刺しされる私の父を前に私は笑っていたのだ。

数年かけて自身に付与していた能力の定着が確認され、私はすぐさま実行に移したのだ。

父も流石の予想を越える力を持つ我が子に手も足も出ず、私は初めて人を殺した。

 

「今から私がこの家の家長よ。私の言う事には、全て従いなさい」

 

広場に全ての使用人、父の部下を集め、私は宣言した。

もちろん、反発する者も現れ、私は徹底的に、そして一方的に心を折る。

経った十歳ぐらいの少女に一方的に遊ばれてる大人たち。

 

「その程度なのね」

 

父の右腕である部下を椅子にし、私は呟く。

その光景を目にした者たちは、全てを諦め、降参した。

そして、私は総てを手に入れ、新たに組織を設立する。

悪だけを殺す組織を。

拠点を日本に移し、私の最も欲しかった夢をかなえる。

 

“家族が欲しい”

 

前世今世共に叶わなかった夢を私は実行し、各国から孤児から訳ありを引き取り、私の弟、妹として向か入れた。

沢山の弟妹に囲まれ、私は裕福な時間を過ごす。

だから―――私はここでは立ち止まる訳にはいかない!!

 

 

 

 

迫りくる木材にジャンヌは残っていた力を振り絞り、手をつき出す。

木材は手を貫通し、重心がズレる。

 

「っち! まだそんな力が残っていたか」

 

「ごほっ。まだ、死に行く訳に……いかないのよ」

 

「だが、そんな状態ではどの道長くない」

 

エドの言う通り、両腕はもう使えず、右脚はあり得ない方向に曲がり、内臓のいくつかは潰れている。

だが、ジャンヌはそんな中―――笑っていた。

 

「ルーラー、ジャンヌ・リオネスが全令呪をもって命じる!!」

 

「な! させるか!!」

 

エドも予想外の行動に慌てて止めに入るが。

 

「今ここに姿を現しなさい―――イチカ!!」

 

ジャンヌの背後に羽根の令呪が浮かび上がり、二十八画あった令呪が消費される。

 

「ぐっ!!?」

 

「兄貴!!」

 

エドはその場に行きなり現れた者に腹を蹴り飛ばされ、建物を何件もぶっ壊す。

 

「派手にやったな……」

 

「へへへ……ちょっと無理をしちゃった」

 

「馬鹿たれが……」

 

ジャンヌは笑みを浮かべる。

そんな姿を見て、イチカは呆れ顔をした。

 

「霊槍シャスティフォル。第八形態〈花粒園(パレン・ガーデン)〉」

 

とりあえず治癒が必要だったため、イチカは霊槍シャスティフォルを出す。

即効性はないが、ないよりはまし程度の治療を始める。

 

「令呪が回復したら、後は自分でやれ」

 

ジャンヌはその言葉に頷く。

そして、イチカは目の前の敵に目を向ける。

 

「新手の登場かよ……つうか、なんだこの出鱈目な威力は」

 

エドは血をぬぐい、こっちに来る奴に目を向ける。

 

「てめぇ……何者だ」

 

「〈七つの大罪(セブン・デッドリー・シン)〉 イチカ・リオネスだ」

 

ニ天龍(エドとアル)〉の前に〈七つの大罪(イチカ)〉が現れる。


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