インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
フランス―――
光と闇が混在する都市の片隅で、
常識を逸脱した戦いが繰り広げられていた。
石畳が砕け、空気が震え、衝撃だけで窓ガラスが軋む。
ジャンヌは旗を巻き付けた槍を構え、静かに間合いを測る。
対するアルは、紅蓮の龍の鎧――〈禁手〉を展開し、拳を構えていた。
「おらぁああああああああ!!」
『Boost!! Boost!! Boost!! Boost!!』
爆発的な加速。
踏み込み一つで地面が陥没し、アルの拳が空気を引き裂く。
「っ――!」
ジャンヌは槍を横薙ぎに振るう。
だが――
ガギィンッ!!
衝突した瞬間、空間そのものが歪む。
「まだまだぁ!!」
『Boost!!』
次の瞬間にはさらに威力が跳ね上がる。
拳、蹴り、肘――
一撃一撃が砲撃に匹敵する威力を持ち、連撃となって襲いかかる。
(速い……重い……そして増えていく)
ジャンヌの表情が僅かに曇る。
〈赤龍帝の籠手〉――
それは単なる強化ではない。
“時間経過で倍化し続ける”という、戦闘が長引くほど詰む能力。
そして今のアルは、その上位状態――〈禁手〉。
倍加は加速し、出力は跳ね上がり続ける。
(長引けば確実に不利……なら)
ジャンヌは地を蹴る。
一瞬で戦線離脱。
「逃がすかよ!!」
アルが追う。
その速度はもはや残像すら残さない。
だがジャンヌはあえて市街地を駆け抜け、人影のない廃区画へと誘導する。
瓦礫、崩れた建物、誰もいない戦場。
「……ここなら、気兼ねなくやれるわね」
「へっ、ようやく腹括ったか」
アルが笑う。
その瞬間――
ドンッ!!
踏み込みと同時に爆風が巻き起こる。
「もらったぁ!!」
ジャンヌの喉元を狙う一撃。
しかし――
キィンッ!!
槍が滑り込み、軌道を逸らす。
さらに――
「甘い」
突き。
紙一重でかわし、アルはそのまま懐へ潜り込む。
「距離もらったぁ!!」
伸びる手。
触れる。
「しまっ――」
ジャンヌの思考が一瞬遅れる。
「
パチンッ――
軽い音と共に、力が発動する。
空間に散る光。
衣服が弾け飛ぶ。
「よっしゃあああああ!!」
アルが勝ち誇る。
――その一瞬。
「
ゴッ――!!!
背後からの衝撃。
空気が爆ぜ、アルの身体が吹き飛ぶ。
数十メートル先の壁に叩きつけられ、瓦礫が崩れる。
「がっ……!?」
「油断しすぎよ」
ジャンヌが歩み寄る。
その姿は――既に元通り。
「な……なんでや!?」
「霊装だからよ」
淡々と告げる。
「私のそれは“再構成される存在”。壊したところで無意味」
アルの顔が歪む。
(効かない……!?)
「だがなぁ!!」
瓦礫を吹き飛ばし、再び立ち上がる。
「俺の鎧も同じや!!」
ドンッ!!
再加速。
「その槍じゃ抜けんやろ!!」
拳が振り下ろされる。
ジャンヌは受ける。
だが――
ギギギギ……!!
押される。
(出力差が開いてきている……!)
アルの攻撃は、もはや“物理”ではない。
純粋な暴力の塊。
ならば――
「……なら、これでどうかしら」
ジャンヌは静かに剣へ手をかける。
抜刀。
その瞬間――
空気が変わる。
「これは――憎悪によって磨かれた、我が魂の咆哮」
地面が焼ける。
空気が焦げる。
炎が――意思を持つかのように広がる。
「な……!?」
逃げ場はない。
気付いた時には既に遅い。
炎の檻。
完全包囲。
「『
振り下ろし。
炎が収束し――
轟ッ!!!!!
爆ぜる。
空間そのものを焼き尽くす業火。
だが――
「……まったく」
別の声が割り込む。
『Divide!!』
炎が――裂ける。
「兄貴……!」
アルの前に立つ影。
銀髪の青年――エド。
「だから言っただろ。油断するなってな」
炎の中で、彼は無傷だった。
「その力……」
ジャンヌの目が細まる。
エドの背後に展開される光翼。
白き龍の紋章。
「ようやく理解したか」
静かに、しかし確実に。
力が解放される。
『Vanishing Dragon Balance Break――』
空気が軋む。
「〈白龍皇の光翼〉」
赤と白。
対極の存在。
「これで対等だな」
二つの龍が、同時に咆哮する。
――戦場の格が、さらに一段階引き上げられた。