インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

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EXー2

フランス―――

 

光と闇が混在する都市の片隅で、

常識を逸脱した戦いが繰り広げられていた。

 

石畳が砕け、空気が震え、衝撃だけで窓ガラスが軋む。

 

ジャンヌは旗を巻き付けた槍を構え、静かに間合いを測る。

対するアルは、紅蓮の龍の鎧――〈禁手〉を展開し、拳を構えていた。

 

「おらぁああああああああ!!」

 

『Boost!! Boost!! Boost!! Boost!!』

 

爆発的な加速。

 

踏み込み一つで地面が陥没し、アルの拳が空気を引き裂く。

 

「っ――!」

 

ジャンヌは槍を横薙ぎに振るう。

 

だが――

 

ガギィンッ!!

 

衝突した瞬間、空間そのものが歪む。

 

「まだまだぁ!!」

 

『Boost!!』

 

次の瞬間にはさらに威力が跳ね上がる。

 

拳、蹴り、肘――

一撃一撃が砲撃に匹敵する威力を持ち、連撃となって襲いかかる。

 

(速い……重い……そして増えていく)

 

ジャンヌの表情が僅かに曇る。

 

〈赤龍帝の籠手〉――

それは単なる強化ではない。

 

“時間経過で倍化し続ける”という、戦闘が長引くほど詰む能力。

 

そして今のアルは、その上位状態――〈禁手〉。

 

倍加は加速し、出力は跳ね上がり続ける。

 

(長引けば確実に不利……なら)

 

ジャンヌは地を蹴る。

 

一瞬で戦線離脱。

 

「逃がすかよ!!」

 

アルが追う。

 

その速度はもはや残像すら残さない。

 

だがジャンヌはあえて市街地を駆け抜け、人影のない廃区画へと誘導する。

 

瓦礫、崩れた建物、誰もいない戦場。

 

「……ここなら、気兼ねなくやれるわね」

 

「へっ、ようやく腹括ったか」

 

アルが笑う。

 

その瞬間――

 

ドンッ!!

 

踏み込みと同時に爆風が巻き起こる。

 

「もらったぁ!!」

 

ジャンヌの喉元を狙う一撃。

 

しかし――

 

キィンッ!!

 

槍が滑り込み、軌道を逸らす。

 

さらに――

 

「甘い」

 

突き。

 

紙一重でかわし、アルはそのまま懐へ潜り込む。

 

「距離もらったぁ!!」

 

伸びる手。

 

触れる。

 

「しまっ――」

 

ジャンヌの思考が一瞬遅れる。

 

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!!」

 

パチンッ――

 

軽い音と共に、力が発動する。

 

空間に散る光。

 

衣服が弾け飛ぶ。

 

「よっしゃあああああ!!」

 

アルが勝ち誇る。

 

――その一瞬。

 

鉄山靠(てつざんこう)

 

ゴッ――!!!

 

背後からの衝撃。

 

空気が爆ぜ、アルの身体が吹き飛ぶ。

 

数十メートル先の壁に叩きつけられ、瓦礫が崩れる。

 

「がっ……!?」

 

「油断しすぎよ」

 

ジャンヌが歩み寄る。

 

その姿は――既に元通り。

 

「な……なんでや!?」

 

「霊装だからよ」

 

淡々と告げる。

 

「私のそれは“再構成される存在”。壊したところで無意味」

 

アルの顔が歪む。

 

(効かない……!?)

 

「だがなぁ!!」

 

瓦礫を吹き飛ばし、再び立ち上がる。

 

「俺の鎧も同じや!!」

 

ドンッ!!

 

再加速。

 

「その槍じゃ抜けんやろ!!」

 

拳が振り下ろされる。

 

ジャンヌは受ける。

 

だが――

 

ギギギギ……!!

 

押される。

 

(出力差が開いてきている……!)

 

アルの攻撃は、もはや“物理”ではない。

 

純粋な暴力の塊。

 

ならば――

 

「……なら、これでどうかしら」

 

ジャンヌは静かに剣へ手をかける。

 

抜刀。

 

その瞬間――

 

空気が変わる。

 

「これは――憎悪によって磨かれた、我が魂の咆哮」

 

地面が焼ける。

 

空気が焦げる。

 

炎が――意思を持つかのように広がる。

 

「な……!?」

 

逃げ場はない。

 

気付いた時には既に遅い。

 

炎の檻。

 

完全包囲。

 

「『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!」

 

振り下ろし。

 

炎が収束し――

 

轟ッ!!!!!

 

爆ぜる。

 

空間そのものを焼き尽くす業火。

 

だが――

 

「……まったく」

 

別の声が割り込む。

 

『Divide!!』

 

炎が――裂ける。

 

「兄貴……!」

 

アルの前に立つ影。

 

銀髪の青年――エド。

 

「だから言っただろ。油断するなってな」

 

炎の中で、彼は無傷だった。

 

「その力……」

 

ジャンヌの目が細まる。

 

エドの背後に展開される光翼。

 

白き龍の紋章。

 

「ようやく理解したか」

 

静かに、しかし確実に。

 

力が解放される。

 

『Vanishing Dragon Balance Break――』

 

空気が軋む。

 

「〈白龍皇の光翼〉」

 

赤と白。

 

対極の存在。

 

「これで対等だな」

 

二つの龍が、同時に咆哮する。

 

――戦場の格が、さらに一段階引き上げられた。

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