インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
フランス―――夜。
破壊された街区の中心で、戦いは既に“均衡”を越えていた。
「はぁ……っ、はぁ……っ……」
ジャンヌ・リオネスは膝をつきかけながらも、無理やり身体を起こす。
視界は滲み、呼吸は乱れ、骨の軋む音が内側から響いていた。
対するは―――
紅蓮の龍、アル。
白銀の龍、エド。
二天龍。
「もう終わりやろ、姉ちゃん」
アルが拳を鳴らす。
『Boost!! Boost!!』
倍化は既に限界域。
「……いや、まだだ」
エドは冷静に告げる。
「こいつは“まだ切ってない”」
その視線の先。
ジャンヌは、確かに“何か”を隠している。
だが―――
「それでも、ここまでだ」
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### ■ 完全崩壊
ジャンヌが踏み込む。
最後の力を振り絞った突撃。
だが。
『Divide!!』
「っ―――!」
全てが半減される。
威力、速度、圧。
その一瞬の遅れを―――
アルが見逃すはずもない。
「終わりやぁあああ!!」
拳が直撃する。
腹部。
衝撃が貫通し、背後の建物ごと吹き飛ぶ。
「がっ……!!」
血が噴き出す。
意識が飛びかける。
だが終わらない。
「まだだ」
エドが追撃。
一瞬で距離を詰め―――
首を掴む。
「ぐっ……!」
そのまま地面へ叩きつける。
アスファルトが砕ける。
「これで終わりだ」
躊躇はない。
木材を拾い、振り上げる。
心臓を―――穿つために。
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### ■ 崩れない意志
(ここまで……?)
ジャンヌの視界が白く染まる。
身体は動かない。
痛みすら遠い。
だが―――
脳裏に浮かぶ。
弟妹たちの顔。
笑っていた日々。
「……ふざけないで」
声にならない声。
「こんな所で……終われるわけ、ないでしょうが……!!」
残った力を振り絞る。
腕を上げる。
木材が手を貫く。
だが軌道は逸れる。
「ちっ……!」
エドが舌打ちする。
「往生際が悪いな」
「えぇ……悪いわよ……」
ジャンヌは笑う。
血に濡れながら。
「私は―――“家長”だからね」
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### ■ 全令呪
背後に浮かび上がる―――令呪。
それは通常の三画ではない。
幾重にも重なる“契約の証”。
「なっ……!?」
エドの表情が変わる。
「まさか―――!」
「ルーラー、ジャンヌ・リオネスが全令呪をもって命じる」
空気が震える。
魔力が暴走する。
「やめろ!!」
エドが踏み込む。
だが―――間に合わない。
「今ここに姿を現しなさい―――」
ジャンヌの瞳が輝く。
「イチカ!!」
―――全消費。
二十八画。
すべて。
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### ■ 召喚
空間が歪む。
次の瞬間。
エドの視界が揺れる。
「―――っ!?」
腹部に衝撃。
見えなかった。
何も。
ただ、“殴られた”という結果だけが残る。
身体が吹き飛ぶ。
建物を何棟も貫通する。
「兄貴!!」
アルが叫ぶ。
その前に―――
一人の男が立っていた。
「派手にやったな……」
低い声。
静かな怒気。
ジャンヌの前に立つ背中。
「へへ……来てくれた」
「馬鹿が……」
振り返らずに吐き捨てる。
「死ぬ一歩手前じゃねぇか」
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### ■ 継戦開始
アルが構える。
「てめぇ……何者だ」
男はゆっくりと顔を上げる。
「〈七つの大罪〉―――イチカ・リオネスだ」
空気が変わる。
明確な“格”の差。
だが。
エドが瓦礫の中から立ち上がる。
「……なるほどな」
血を拭いながら笑う。
「こいつが“本命”か」
『Divide!!』
即座に能力発動。
だが―――
「遅ぇ」
イチカは消える。
次の瞬間、エドの背後。
「なっ―――!?」
蹴り。
今度はガードが間に合う。
だが―――
「軽いな」
「……!」
半減してもなお、重い。
“基礎値”が違いすぎる。
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### ■ 四者戦
「おもしれぇ……!」
アルが笑う。
『Boost!!』
倍化、倍化、倍化。
最大出力。
「まとめて相手したるわぁあああ!!」
突撃。
イチカは正面から受ける。
拳と拳がぶつかる。
衝撃波。
地面が裂ける。
「悪くねぇな」
押し負けない。
むしろ―――押している。
「なっ……!?」
アルが驚愕する。
その背後から―――
『Divide!!』
エドの援護。
イチカの力が半減。
だが。
「それで?」
止まらない。
そのまま踏み込み―――
肘打ち。
アルが吹き飛ぶ。
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### ■ 圧倒と戦術
「兄弟で連携か」
イチカが呟く。
「いいコンビだ」
「余裕だな……!」
エドが構える。
「だが、削れる」
半減と倍化。
長期戦なら勝機はある。
「そうかもな」
イチカは肩を鳴らす。
「なら―――試してみるか」
その瞬間。
空気が変わる。
圧が跳ね上がる。
「……おい」
エドの顔が歪む。
「まだ上があんのかよ」
イチカの瞳が細まる。
「遊びはここまでだ」
背後で、ジャンヌがかすかに笑った。
(来た……本気)