インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
「っち! 新手か……」
エドは舌打ちする。
(あの女……やはり令呪持ちか)
通常のサーヴァントとは異なる、異常な仕様。
二十八画という規格外のストック。
時間停止を伴う強制転移。
(厄介どころじゃねぇな)
だが―――
「別にカスが一人増えた所で―――」
言い終わる前に。
世界が“ズレた”。
「―――は?」
次の瞬間、エドの顔面が鷲掴みにされる。
「遅ぇ」
地面へ叩きつけられる。
衝撃でクレーターが生まれる。
(がっ!? 見えなかった!?)
初動が存在しなかった。
認識の外から叩き込まれた一撃。
「兄貴!!」
アルが飛び出す。
紅蓮の鎧が唸る。
『Boost!!』
だが―――
「…………」
イチカは何も言わず、ただ距離を取る。
攻めない。
逃げる。
「ちょこまかっと!!」
アルは苛立つ。
だが、それは違和感だった。
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### ■ ジャンヌ視点
(……おかしい)
回復を終えつつあるジャンヌは、戦況を見て眉をひそめる。
(イチカが“押されている”?)
あり得ない。
「セバス、〈バロールの魔眼〉は?」
「こちらに」
耳飾りを装着。
視界が数値へと変換される。
(白龍皇……闘級6万。赤龍帝……5万)
予想通りの怪物。
だが―――
(イチカ……6万?)
一瞬、思考が止まる。
(そんなはずがない)
そして、理解する。
(分身……!)
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### ■ 正体
「俺たち二人を相手して互角か。底が知れるな」
エドが言う。
その瞬間。
「それ、俺じゃねぇよ」
声が“背後”からした。
「!?」
振り返る。
そこにいたのは―――
“もう一人のイチカ”。
そして、前にいる個体が霧散する。
(実像分身……!)
ジャンヌは確信する。
〈魔剣ロストヴェイン〉。
闘級を分割し、実体として分身を生成する反則能力。
つまり―――
「今までのは“半分”だ」
本体が前に出る。
「ここからが本番だ」
闘級、完全解放。
―――12万。
空気が軋む。
重力すら歪む圧。
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### ■ 第二ラウンド
「さあ、第二ラウンドだ」
イチカが構える。
アルが笑う。
「上等やぁ!!」
『Boost!! Boost!! Boost!!』
限界倍化。
それに応じるように―――
エドの翼が輝く。
『Divide!! Divide!!』
だが今回は違う。
二人の魔力が“同期”する。
「行くぞ、アル」
「ああ、兄貴」
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### ■ 共鳴強化
紅と白が重なる。
龍の咆哮が重なる。
『Boost!!』『Divide!!』
倍化と半減が“同時循環”する。
「これが……俺たちの切り札だ」
エドが低く言う。
「共鳴強化―――」
アルが拳を握る。
「“ニ天龍同調(ツイン・ドラグ・レゾナンス)”や!!」
闘級が跳ね上がる。
赤龍帝―――単体火力の極致。
白龍皇―――干渉と削減の極致。
それが融合する。
(闘級……8万、いや9万超え!?)
ジャンヌが息を呑む。
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### ■ 激突
アルが消える。
次の瞬間、イチカの目前。
拳。
だが―――
イチカは動かない。
受ける。
衝撃。
地面が割れる。
「ほう……」
耐える。
だが―――
『Divide!!』
同時にエドの半減が叩き込まれる。
防御ごと削る。
「効いてるやろ!!」
アルが追撃。
だが。
「いいや」
イチカが笑う。
「“軽い”な」
次の瞬間。
拳が返る。
アルの腹に直撃。
吹き飛ぶ。
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### ■ 七つの大罪
「面白ぇ……本当に面白ぇよ、お前ら」
イチカの周囲に“気配”が浮かぶ。
重く、濃く、歪んだ力。
「見せてやる」
一歩踏み出す。
「これが―――俺の“全部”だ」
七つの気配が渦巻く。
傲慢。
憤怒。
強欲。
怠惰。
嫉妬。
暴食。
色欲。
それぞれが独立し、同時に存在する。
「同時展開……だと……!?」
エドが目を見開く。
通常は一つ。
それが常識。
だが、イチカは違う。
「制限なんて、最初からねぇんだよ」
圧が爆発する。
闘級が“跳ねる”。
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### ■ 圧倒
アルが再突撃。
だが―――
動きが“見える”。
「遅ぇ」
片手で止める。
「なっ……!?」
倍化された拳が止まる。
そのまま―――
握り潰す勢いで締め上げる。
「ぐあっ!!」
そこへ。
『Divide!!』
エドの干渉。
だが。
「無駄だ」
逆に“奪う”。
強欲。
エドの魔力が削がれる。
「なに……!?」
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### ■ 三極戦
三人がぶつかる。
純粋な殴り合いではない。
能力の奪い合い。
干渉の上書き。
倍化、半減、強奪、増幅。
空間そのものが耐えきれず崩壊していく。
ジャンヌはただ見ていた。
(これが……イチカの本気……)
理解する。
自分が呼んだのは―――
“災害”だと。
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### ■ 続戦へ
「はは……最高や……!」
アルが血を吐きながら笑う。
「まだ行けるで、兄貴!!」
「当然だ」
エドも構える。
イチカは―――
ただ静かに立つ。
「来いよ」
その一言。
夜が震えた。