インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
フランスの夜空は、もはや静寂を保ってはいなかった。
紅蓮と蒼白、そして黒が交錯し、都市そのものが戦場へと変貌している。
エドは砕けた腕を無理やり再生させながら、一歩後退した。
(なんだ……今のは)
目の前に立つ一夏。
だが先ほどまでとは“質”が違う。
空気が重い。
存在そのものが圧力となり、空間を軋ませている。
「……てめぇ、本気ってやつか」
一夏は答えない。
ただ、静かに一歩踏み出した。
その瞬間――地面が沈んだ。
「っ!!」
衝撃ではない。
“存在”に押し潰される感覚。
「兄貴……これ、やべぇぞ……」
アルですら、本能で理解していた。
今まで戦っていた相手とは、まるで別物だと。
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### 七つの大罪 ―― 本格解放
一夏の体から、黒と金の魔力が溢れ出す。
額に浮かぶ紋章が、より濃く、禍々しく脈動する。
「制限は外した。ここから先は――加減なしだ」
空気が裂ける。
瞬間、一夏の姿が消える。
「どこだ――ッ!?」
エドが叫んだ刹那、背後。
「遅い」
「がっ――!!」
見えない一撃。
白龍皇の鎧ごと、エドは地面に叩き込まれる。
衝撃が波紋のように広がり、周囲の建物がまとめて崩壊した。
「兄貴ぃぃ!!」
アルが飛び込む。
『Boost!!』
紅蓮の拳が振り抜かれる――が。
「軽いな」
片手で止められた。
「な……っ!?」
倍化されたはずの力。
それを、真正面から受け止められるという異常。
そのまま一夏は、アルの腹部に拳を叩き込む。
「――ッッ!!!」
空気が消し飛び、アルの体が一直線に吹き飛ぶ。
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### 均衡の始まり
圧倒的優勢。
だが――
エドは、ゆっくりと立ち上がった。
「……調子に乗るなよ」
『Divide』
一夏の身体を覆っていた魔力が――削がれる。
「……ほう」
一夏が僅かに目を細める。
「まだやれるか」
「やるしかねぇだろ」
さらに。
『Divide Divide』
連続発動。
一夏の“闘級”が、段階的に削り取られていく。
アルも立ち上がる。
「さっきの一撃……効いたわ……でもな」
『Boost』
『Boost』
『Boost』
力が膨れ上がる。
削られる力と、増幅される力。
場は再び――拮抗へと傾く。
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### 二天龍、限界突破 ―― 共鳴
エドとアルの視線が交差する。
言葉はない。
だが、同時に理解していた。
「やるぞ」
「おうよ」
二人の龍の力が――“共鳴”する。
白と赤が混ざり合い、異質な光となる。
『Divide Boost』
『Boost Divide』
相反する力が、融合する。
「「――共鳴強化」」
次の瞬間。
二人の姿が変わる。
白龍と赤龍の特徴を併せ持つ、異形の龍鎧。
力は単純な足し算ではない。
“掛け算”で増幅されていた。
「……面白い」
一夏の口元が、わずかに吊り上がる。
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### 三つ巴の再燃
「行くぞォ!!」
アルが突撃。
今度は、一夏も反応が遅れる。
「っ!」
拳が直撃。
だが同時に――
「遅い」
カウンター。
しかしエドが割り込む。
『Divide』
一夏の反撃が“半減”される。
「チッ……」
完全に読み合いになっていた。
アルが前衛で圧をかけ、エドが削る。
一夏は圧倒的だが、削られ続ければいずれ崩れる。
完全な――戦術戦。
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### ジャンヌ、再介入
「――やっぱり、そうなるわよね」
その声が割り込む。
三者が一瞬、動きを止めた。
瓦礫の上。
旗を杖に、ジャンヌが立っていた。
傷は癒えきっていない。
だが、その瞳は死んでいなかった。
「まだ立つのかよ……」
アルが呆れる。
「当然よ。これは――私が始めた戦いなんだから」
ジャンヌは静かに旗を構える。
その背後に、光が集まる。
「イチカ。一人で背負わせるつもりはないわ」
「……無茶するな」
「無茶じゃないわよ」
微笑む。
「これは、“選択”よ」
魔力が爆発する。
ジャンヌの霊装が、さらに変質する。
より神聖に、より重く。
「さあ――もう一度」
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### 臨界点
一夏。
ジャンヌ。
エドとアル。
三方向からの圧。
空間が耐えきれず、ひび割れる。
「面白ぇ……!」
「ここからが本番だ」
「――ええ、そうね」
誰も退かない。
力も、意志も、限界を越えて。
戦いは――まだ終わらない。