インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

34 / 42
EX-6

(おいおい……まじかよ!!)

 

エドの背筋に、はっきりとした“恐怖”が走った。

 

目の前の男――イチカ・リオネス。

それはもはや、人の枠に収まる存在ではなかった。

 

七つの大罪の神器。

それだけでも規格外だというのに――

 

「力そのものまで持ってやがるのかよ……!」

 

呟きは、半ば呆然としたものだった。

 

---

 

「……さて」

 

イチカは短く息を吐くと、アルを閉じ込めていた〈完全なる立方体〉を解除した。

 

直後、〈魔剣ロストヴェイン〉を顕現させる。

 

「来い」

 

低く呟くと同時に、分身が一体――実像として切り出される。

 

その分身はすぐさま別の神器を展開。

 

「〈完全なる立方体〉」

 

空間が歪み、再構築される。

 

今度は――

 

本体のイチカ、エド、アル。

 

三者すべてを閉じ込める形で、完全な隔離空間が構築された。

 

「準備は整った」

 

ロストヴェインを肩に担ぎ、イチカは静かに言う。

 

「始めるぞ」

 

---

 

「ふざけんなぁ!!」

 

アルが吠える。

 

『Boost!!』

 

爆発的な加速。

紅蓮の龍が一直線に突っ込む。

 

「さっきは不覚を取ったが、今度は――」

 

言い切る前に。

 

「遅い」

 

イチカが消えた。

 

次の瞬間には――アルの懐。

 

「――がっ!?」

 

拳がめり込む。

 

空気が弾け、内臓を揺らす衝撃。

 

さらに追撃。

 

蹴りが叩き込まれ、アルの身体はそのまま壁面へと激突した。

 

「ぐっ……!!」

 

「アル!!」

 

エドが叫ぶ。

 

だが、止まらない。

 

---

 

〈覇龍〉という限界突破形態。

それを発動してなお――

 

イチカは、その“さらに上”にいた。

 

しかも。

 

(ロストヴェインで分身して……力は分散してるはずだろ……!?)

 

それでもなお、圧倒している。

 

常識が通用しない。

 

---

 

「イチカ……やっぱり、封印を解いたのね」

 

外から戦況を見ていたジャンヌが、小さく呟く。

 

その瞳には、驚愕と――確信。

 

「魔人化状態……闘級は……」

 

一瞬、言葉が詰まる。

 

「……120万オーバー」

 

もはや、数値の意味を成していない。

 

「このままじゃ……本当に、地形ごと消し飛ぶわね」

 

乾いた笑みが零れる。

 

---

 

「チッ……!」

 

エドは歯を食いしばる。

 

(やべぇ……時間がねぇ)

 

〈覇龍〉の維持時間。

 

それが、限界に近づいていた。

 

アルも同様だ。

 

「くっそ……!」

 

どれだけ強化しても、届かない。

 

圧倒的な差。

 

---

 

そして――

 

限界は訪れる。

 

バキン、と音を立てるように。

 

二人の〈覇龍〉が強制解除された。

 

龍の鎧が砕け、消失する。

 

「……はは、マジかよ……」

 

エドはその場に崩れ落ちた。

 

アルも同様に、膝をつく。

 

もう、動けない。

 

完全な――敗北だった。

 

---

 

「終わりだな」

 

イチカが歩み寄る。

 

ロストヴェインを振り上げる。

 

「さっさと止めを刺しな」

 

エドが吐き捨てる。

 

「あぁ――」

 

振り下ろされる、その刃。

 

だが――

 

「ルーラー権限、執行」

 

静かな声。

 

その瞬間。

 

ロストヴェインが、霧のように消失した。

 

「……!?」

 

同時に。

 

イチカの魔力が――“消えた”。

 

「お嬢……どういうつもりだ?」

 

振り向く。

 

そこには、静かに立つジャンヌの姿。

 

「止めは待って」

 

「必要ない。ここで潰すべきだ」

 

「ダメよ」

 

きっぱりと。

 

「今、死なせるには惜しい人材だから」

 

---

 

ジャンヌはゆっくりと歩み寄る。

 

霊装はすでに解除されている。

 

戦う意思はない。

 

エドの前にしゃがみ込み――

 

手を差し出した。

 

「私の弟になりなさい」

 

「……は?」

 

予想外。

 

あまりにも突飛な提案。

 

「ふざけんなァ!!」

 

怒声が響く。

 

だが、その視線が――わずかに揺れた。

 

次の瞬間。

 

エドの意識が途切れる。

 

「……気絶、か」

 

イチカが呟く。

 

「話し合いにならなそうだったから、強制的にね」

 

ジャンヌは肩をすくめる。

 

「最初から素直に頷くとは思ってないわ」

 

---

 

遠くで、サイレンが鳴り始めていた。

 

「そろそろ限界ね」

 

ジャンヌが空を見上げる。

 

「これだけ暴れたもの。結界も、足止めも持たないわ」

 

「……だろうな」

 

イチカも同意する。

 

---

 

「そういえばイチカ、転移使えたわよね?」

 

「使えるが……今は封じられてる」

 

「あ、そうだった」

 

軽く舌を出す。

 

「解除するわ。ルーラー権限、解放」

 

縛りが解ける。

 

魔力が戻る。

 

「これでいい?」

 

「あぁ」

 

---

 

イチカはエドを担ぐ。

 

ジャンヌはアルを抱える。

 

「帰るわよ」

 

「了解」

 

次の瞬間。

 

空間が歪み――

 

四人の姿は、その場から消えた。

 

残されたのは、崩壊した街並みと――

 

戦いの痕跡だけだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。