インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~   作:ぬっく~

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六話

日本――リオネス家

 

「戻って早々で悪いわね」

 

「構わない」

 

バルコニー。

 

ゆったりとした時間。

 

――のはずだった。

 

背後では、崩壊した屋根と山が“逆再生”のように修復されている。

 

「俺を呼び戻したということは、仕事か」

 

「……そうね」

 

ジャンヌは空を見上げる。

 

「正確には、“始まり”かしら」

 

その時。

 

「お嬢様。例の者が動きました」

 

執事の一言。

 

――空気が変わる。

 

ジャンヌの口元が、歪む。

 

「……来たわね」

 

ゆっくりと立ち上がる。

 

その手に、旗が現れる。

 

広げる。

 

風が、鳴る。

 

「機は熟した」

 

振り返る。

 

その瞳は、もう“日常”のものではない。

 

「ここから先は――戦争よ」

 

一夏は、黙って見ている。

 

「イチカ。次の任務はIS学園」

 

一拍。

 

「織斑十秋が、ISを起動させたわ」

 

「……っ」

 

初めて。

 

明確に。

 

一夏の感情が揺れる。

 

「予定通り、政府はあれを入学させる」

 

「……殺すか」

 

即答。

 

だが。

 

「まだよ」

 

ジャンヌは首を振る。

 

「今殺しても意味がない」

 

ゆっくりと笑う。

 

「まずは“理解させる”の」

 

何を?

 

「自分が、何者でもないということを」

 

沈黙。

 

「伸びきった鼻を――折る」

 

それが今回の目的。

 

「準備は整っているわ」

 

「はっ」

 

執事が一礼する。

 

数年。

 

積み上げた布石。

 

「さあ」

 

ジャンヌは旗を掲げる。

 

「害虫駆除を始めましょう」

 

――その数日後。

 

“二人目の男性IS操縦者”の存在が、世界に報じられた。

 

物語は――

 

予定調和を、逸脱する。

 

---

 

### ◇ 織斑家

 

「――ふざけるなよ」

 

テレビを叩きつける勢いで睨む。

 

「何でだよ……!」

 

報道は一色。

 

“第二の男性IS操縦者”

 

「あり得ない……!」

 

計画は完璧だった。

 

一夏は消えた。

 

障害は排除した。

 

なのに――

 

「何で俺以外が……!」

 

呼吸が荒くなる。

 

だが。

 

「……落ち着け」

 

自分に言い聞かせる。

 

「問題ない」

 

手をかざす。

 

空間が歪む。

 

現れる――黄金の鍵。

 

〈王の財宝〉

 

「俺には、これがある」

 

震えが止まる。

 

「ISも専用機が来る」

 

「雑魚が一人増えたところで……」

 

笑う。

 

だがその笑いは――

 

どこか、ひび割れていた。

 

「俺は最強だ」

 

繰り返す。

 

まるで、自分に言い聞かせるように。

 

――その時点で。

 

すでに“綻び”は始まっていた。

 

---

 

### ◇ ????

 

「……はぁ」

 

楯無は岩に腰を下ろす。

 

視線の先。

 

――死体の山。

 

IS部隊。

 

武装組織。

 

すべて、壊滅。

 

「……本当に、とんでもないわね」

 

自分の手を見る。

 

震えていない。

 

(これが……祝福)

 

息を吐く。

 

「完全に、別物ね」

 

戦いではない。

 

“蹂躙”だった。

 

「……外れか」

 

目的のアジトではなかった。

 

携帯を取り出す。

 

一通のメール。

 

差出人――ジャンヌ・リオネス。

 

内容を読む。

 

「……へぇ」

 

口元が歪む。

 

「そう来るのね」

 

空を見上げる。

 

青い空。

 

だが、その先にあるのは――

 

戦場。

 

「了解よ」

 

呟く。

 

「始まるのね」

 

楯無は立ち上がる。

 

次の目的地は一つ。

 

――IS学園。

 

三つの視線が、交差する場所。

 

物語は、ここから本当に動き出す。

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