インフィニット・ストラトス ~七つの大罪をその身に宿した者~ 作:ぬっく~
日本――IS学園 一年一組
「はいっ。副担任の山田真耶です。みなさん、一年間よろしくお願いしますね」
教室に柔らかな空気が広がる。
だが――
(くだらねぇな)
一夏は窓の外を見ていた。
興味はない。
この場所にも。
この連中にも。
「では、順番に自己紹介をお願いします」
ありふれた流れ。
しかし、その空気は一人の存在で変わる。
「織斑十秋くん」
「はい」
教室の視線が集まる。
当然だ。
“二人目の男性IS操縦者”
「織斑十秋です。よろしくお願いします」
無難な内容。
だが、その裏にある“自信”は隠しきれていない。
(……薄いな)
一夏は一瞥だけくれて、すぐに視線を外す。
そして――
「イチカ・リオネスくん」
空気が、わずかに止まる。
一夏が立ち上がる。
「……っ! 一夏だと……!?」
最も強く反応したのは十秋だった。
目を見開く。
信じられないものを見るように。
だが――
「イチカ・リオネスだ」
淡々と。
「そこのガキと同じだ。以上」
沈黙。
一拍。
――爆発する。
「ガキだと……?」
椅子が鳴る。
十秋が立ち上がる。
「てめぇ、何様のつもりだ」
「ガキをガキと言って何が悪い」
視線すら向けない。
「クソガキ」
完全に見下し。
空気が凍る。
(わざとか)
誰もが察する。
明確な挑発。
「てめぇ!!」
十秋が一歩踏み出した瞬間――
「新学期早々騒がしいぞ、織斑」
空気が変わる。
教室の温度が、一気に下がる。
ドアの前。
立っていたのは――
織斑千冬。
「千冬姉……」
「ここでは“織斑先生”だ」
一蹴。
圧。
教室が静まり返る。
「山田くん、すまなかったな」
「い、いえっ」
自然に主導権を奪う。
そして。
「……ん?」
視線が動く。
一夏へ。
ほんの一瞬。
――止まる。
「……《小声》一夏……?」
誰にも聞こえないほどの声。
だが、その目は確かに“知っている”ものだった。
(なるほどな)
一夏は何も言わない。
ただ、視線を逸らす。
「ショートホームルームは終わりだ」
「なっ!?」
十秋の思惑が崩れる。
完全に。
「黙れ、織斑」
一言で封殺。
格の違い。
「……っ」
座るしかない。
「いいか、諸君」
千冬の声が教室を支配する。
「半月で基礎を叩き込む。その後は実戦だ」
逃げ場はない。
「返事をしろ」
「はいっ!!」
一斉。
統制された声。
だがその中で――
十秋だけが、違うものを見ていた。
(何で……あいつがここに……)
そして。
(殺したはずだろ……!)
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### ◇ 授業中
「……その前に、クラス代表を決める」
空気が変わる。
「織斑くんがいいと思います!」
当然の流れ。
称賛。
期待。
だが――
「納得できませんわ!!」
空気を切り裂く声。
立ち上がる。
金髪の少女。
(代表候補生か)
一夏は一瞬で見抜く。
「このセシリア・オルコットが代表になるべきですわ!」
誇り。
自信。
そして――傲慢。
(面倒くせぇな)
一夏は欠伸を噛み殺す。
「そこの貴方! 聞いていますの!?」
「あ?」
視線を向ける。
明らかな不機嫌。
「全く聞いていなかった」
沈黙。
次の瞬間。
「……っ!!」
セシリアの顔が真っ赤に染まる。
「プライドはありませんの!?」
「捨てた」
即答。
迷いなし。
その言葉の重みを――誰も理解できない。
「……決闘ですわ」
静かに。
だが確実に。
空気が張り詰める。
「容赦しねぇぞ」
一夏の声は低い。
本気だ。
そして。
「話はまとまったな」
千冬の一言で決定する。
・一戦目:セシリア vs 一夏
・二戦目:セシリア vs 十秋
「準備しておけ」
「はい」
「了解」
だが――
(なんでだ……)
十秋だけが理解できていなかった。
(なんで、あいつがここにいる……)
物語は。
完全に、想定を外れ始めていた。