本作品は、私が書いている他作品とは
まっっったく関係ないです。
[ひろってあげてください]
バイトから帰ってきたら、そう書かれた段ボールが部屋に置かれていた。
なんだこれ。
誰だ俺の部屋にペットを捨てたのは。
中に入っている動物が暴れているのか、段ボールが独りでにカタカタ揺れている。
身に覚えはないとはいえ無視できないので、段ボールを上から覗きこんでみると。
「きゅー」
中には、丸くてモフモフして( ・ω・)な顔をした生物が。
……んん??
*ーーーーー*
これだ。みつけた。
流石グーグル先生だ。
どうやらコイツは「すくすく」と呼ばれる東方projectの二次創作によって作られた生物のようだ。
うむ。
なるほど。
ちょっと意味わかんない。
東方projectは知っている。
詳しくはないが、存在は知ってる。
でもあれ、ゲーム。ここ、現実。
俺が混乱していると、お腹が空いたのかすくすくがきゅーきゅー鳴いてきたので、試しに朝ごはん用の菓子パンを与えてみる。あんぱんである。
もきゅもきゅと、あんパンを頬張る姿は中々に愛らしい。
半分ぐらい食べたところでお腹が満たされたのか、俺の膝の上で眠ってしまった。
モフモフしている。
とってもかわいい。
現実にいるはずない生き物が、どうして家にいたのか。この寝顔を見ていると、もうどうでもよくなってきた。
今日はバイトで疲れたし、俺も寝てしまおう。
そう思ってふとんを敷く。すくすくは座布団に置いておく。
起こさないように優しくね。
*ーーーーー*
「きゅー!」
すくすくのモフモフした短い手(足?)で頬をつつかれて起床。
時計を見ると朝 7時。
おなかがすいたのね。
用意しておいたパンを半分に切って、すくすくにあげる。焼きそばパンである。
モフモフがモグモグとパンを食べている姿を見て可愛いと思いながら、このすくすくについて観察してみる。
手のひらに乗る程度の大きさ。モフモフの体と尻尾。立派な角。
東方projectに出てくる『上白沢慧音』の姿を模した標準的なすくすく……らしいが。
なぜ別次元の生き物が現実に、しかも俺の家に捨てられたように置かれていたのか。
頭を悩ませていると、またすくすくがきゅー、と鳴く。
遊んでほしいのかきゅーきゅー鳴きながら頬擦りしてくる。その前に口回りについたソースを拭きなさい。ズボンがベトベトに……あ、もう手遅れっぽい。
遊んであげたいが、今日も今日とてバイトがある。とは言え、すくすく一匹残して家を出るのは如何なものか。
悩んだ結果、今日は休むことにする。すくすくについていろいろ調べる時間がほしい。
そうと決まれば連絡を入れよう。
すくすくの口を拭きながら。
―――GSチャット―――
@ナナスケ
>今日おやすみ頂きたいのですが。
@バイトリーダーたっきー
>別にいいけど、どうしたの?
>風邪?
@ナナスケ
>そんなところです
>あ、幻覚が見え始めました
>丸くてモフモフしてます
@バイトリーダーたっきー
>薬飲んで寝てろ
――――――
許可も出たので、さっそくいろいろ調べてみよう。
まずは知能。話しかければ「きゅー」と返してくれる程度には、こちらの言葉は理解してるようだ。
転がした鉛筆を取ってくるように指示すると、きゅー!の鳴き声と共に走りだし、鉛筆を口に咥えて持ってきてくれた。
かなりの知能だ。
ご褒美にモフろう。
モフられる(撫でられる)のが好きなのか、モフると目を細めて気持ち良さそうにする。尻尾をさわっても同じような反応だ。
逆に角を触ろうとすると嫌がる。
きゅー!!って言われる。威嚇かな。
そもそも、コイツは本当にすくすくなのだろうか。
俺が知らないだけで、すくすくに似た別の生き物の可能性もまだある。
そう言うのに詳しい友人がいるので、さっそく聞いてみよう。
―――GSチャット―――
@ナナスケ
>いまひま?
@ナナスケ
>おーい
@ナナスケ
>返事しろハゲ
@モナカらいおん
>ハゲって言う方がハゲなんですぅー
@ナナスケ
>そうゆうのいいから
@モナカらいおん
>えー(・3・)
@ナナスケ
>こんなのが家にいたんだけど
>何か知らない?
ナナスケ さんが
画像を送信しました!
@モナカらいおん
>画像確認したよー
>明朝体だね
@ナナスケ
>段ボールの字なんか聞いてねぇよ
>隣のモフモフの方だよ
@モナカらいおん
>……モフモフ?
@ナナスケ
>モフモフしてるだろ
>やらんぞ
@モナカらいおん
>いや、モフモフて
>どれの事言ってるのさ
@ナナスケ
>どれって。
>このモフモフが目に入らぬか
>ついでに角と尻尾も
@モナカらいおん
>……もしかして寝ぼけてる?
>そんなのどこにも映ってないよ
――――――
え?
「ごめんなさいね。この子、素質のある者にしか見えないの」
は?
「聞きたいことは向こうで教えて上げる。それじゃ、行きましょう」
ちょ待
「安心しなさい」
幻想郷は、全てを受け入れるのよ。