釣りをしていた時期もあったが、食料の調達は基本的に人里で行っている。
一月以上も通えば、店のおじさんにも顔を覚えられる。喫茶店を経営している以上、一度に大量の食材を買うので、おじさんたちにとって俺は気前の良い客なのだ。
顔馴染みになったのは、店の人だけではない。
「おはようナナスケ! 今日は何がお買い得?」
おはようミッちゃん。
今日はきゅうりが安いって。
――――――
ミッちゃんこと、ミスティア・ローレライ。
人里の近くで八目鰻屋台を経営している夜雀さん。買い出し中に会うことが多く、飲食店を経営する者同士で話が合うのもあり、いつの間にか仲良くなっていた。
営業時間はうちと異なってるため、商売敵と言うわけではない。そもそも彼女の方は居酒屋だし、うちではお酒は取り扱ってないしね。
「すくすくは今日もモフモフねー。はい、これあげる!」
「きゅー!」ポリポリ
付き添いのすくすくにとりをモフモフしながら、さっき買っていたきゅうりをあげるミッちゃん。彼女も既にモフモフの虜である。
ミッちゃんはお客様として喫茶店にたまに来る。けど、俺はまだミッちゃんの居酒屋に行ったことがないのだ。
「……ね、ねぇ! よかったら今日屋台来ない? たくさんモフモフさせてくれるなら、貸しきりでもいいわよ!」
ここでミッちゃんからの嬉しいお誘い。
しかし、簡単に頷くことはできない。外食するとならば他のすくすくたちも連れていきたいが、全員を連れ出すのは数的に少し無理がある。
かと言って、一部のすくすくを連れて行ったとしても、連れていけなかったすくすくたちが拗ねてしまう。きっと3日間ぐらいショボン顔になってしまうだろう。
どうしたものかと悩んでいると、ミッちゃんが助け舟を出してくれた。
「むー……じゃあこうしましょ! 特別大サービスなんだから!」
――――――
「かんぱーい!」
『きゅー!!』
全すくすく揃い踏みである。
ミッちゃんは喫茶店の前まで屋台を運んできてくれたのだ。これなら全すくすくでワイワイできる。
しかしミッちゃんも飲んでいいの?
「良いの良いの、今日のお客様はナナスケだけだし! おつまみも大体作り終えたしね!」
目の前には枝豆やきゅうりの漬け物、八目鰻の蒲焼きなどのおつまみが大量に並んでいる。まぁ、一人で飲んでもつまらないし、細かいことはいいだろう。
「……それにしても、こんなにたくさんいたのね。すくすくって」
モグモグと、八目鰻やきゅうりを食べるすくすくたちを見てミッちゃんは言う。狭い屋台に全すくすくが揃うと、確かにいつもより多く見える。
でも半年後ぐらいには今の倍は増えてる気がする。そう思うとまだまだ少ない方なんだよなぁ。
「きゅー!」
お酒を飲みながらすくすくを眺める。
……あ、また2匹増えてる。
「「きゅー!」」
お酒大好き2本角、すくすくすいか。
お酒大好き1本角、すくすくゆうぎ。
2匹以外のすくすくも楽しそうに飲んでいる。すくすくはお酒に強いのだ。
「ほらナナスケ、 盃が空だよ! 夜はまだまだこれからなんだから! 」
お酒を飲みつつ、モフモフしつつ、ミッちゃんと飲み明かした一夜であった。たまにはこういう日も良いものだ。
後日、二日酔いをすくすくたちに看病してもらったのは別の話である。
――――――
「勇気出して誘って良かったぁ……ナナスケも楽しんでくれたかなぁ……」
ヒロインを増やしていくスタイル。