――― GSチャット ―――
@( 罪)
>ここ数ヶ月、君と全然会わないけど
>どこで何してるの?
@ナナスケは砕けない
>幻想郷で喫茶店経営してる
@( 罪)
>妄想乙
@ナナスケは砕けない
>マジマジ
>お前が夢の中で紫さんに会えたのも
>俺が頼んだからだし
@( 罪)
>あれは俺の愛がゆかりんに
>届いたからに決まってるだろ!
>もしマジならもう一回会いたいですって
>お伝え願いますでしょうかお願いします
@ナナスケは砕けない
>承った
――――――
って言ってましたよ、紫さん。
「あらまた? 想ってくれるのは嬉しいけれど、私も暇って訳じゃないからねぇ」
「毎日12時過ぎに起床している御方が何を言っておられるのですか」
「何か言ったかしら藍」
「いえ何も」
「モフモフの私がいる! にゃー!」
「きゅー!」
八雲一家ご来店。
先日に引き続き、外の席にご案内する。
紫さんとはそこそこチャットのやりとりをしてるし、藍さんもたまに喫茶店へ和菓子を買いにくるが、一家揃っての来店は初めてである。
ふむ。しかし。あれだな。
何度見てもすっごいボリュームだ。
……ちょっと我慢できないので、埋もれさせて頂こう。
モフ――ン
「……ナナスケ殿。せめて一言断りを入れてから……と言うか、暑くないか?」
暑さも忘れさせてくれるこのモフモフ感。
黄金色の9本の尻尾。その気持ち良さはブラックホール級。人をダメにするソファの比ではない。凄まじい吸引力である。
「きゅー」「むきゅー」
「きゅきゅー」
既にすくすくたちも、このブラックホールから抜け出せなくなっている。これが傾国の美女の魅力か……モフモフ……。
「ナナスケさんとモフモフが藍様の尻尾に絡まってます! とても気持ち良さそうです…!」ウズウズ
「……橙も絡まるかい?」
「ナナスケ。尻尾に夢中なるのは良いけれど、職務怠慢は良くないわよ」
職務怠慢とは失敬な。
今日の俺の仕事は接客のみなのですよ。
実はこの前、見てしまったのだ。裏庭ですくすく達が、かき氷大会をしている所を。
すくすくにとり製のかき氷機を懸命に回してかき氷を作るすくすく達の姿には、とても癒された。
と言うわけで、本日のメニューは1つだけ。
『すくすくの気まぐれかき氷』である!
――――――
「にがあまいです! おいしいです!」
「橙。口元に小豆が…」
味付けはすくすくの気分次第。今日のすくすくは宇治金時の気分だったようだ。渋いのである。
すくすくの愛情が籠ったかき氷は、お客様からの評価も高い。悔しいが、俺が作るよりすくすくの作るかき氷の方が美味しいのだ。
同じ作り方ですくすくの方が美味しいのだから、愛情の差なのだろう。俺ももっと愛情を鍛えないとな、うん。
「貴方は愛情の前に表情筋を鍛えなさいな。喜怒哀楽をもっと表に出さないと、女の子にモテないわよ?」
余計なお世話です。
――――――
「ナナスケ殿。まだ尻尾に違和感があるのだが、すくすくが絡まっていないだろうか?」
八雲一家の帰り際、藍さんがそう言うので、失礼ながらも尻尾を探ってゆくと、2匹のすくすくが発掘された。
「きゅー」
一匹は本人に負けないほどのモフモフ尻尾を持った九尾のすくすくらん。発掘早々、すくすくちぇんの元へ駆けていった。
「きゅー!」
もう一匹は、アゲハ蝶の羽を着けた青色のすくすく。
ザ・サマーって感じのモフモフである。でも何故藍さんの尻尾に絡まっていたのだろうか?
「サマーだからよ」
「サマーだからでしょう」
「サマーだからですよ!」
「きゅー!」
……サマーだからかぁ。
ここまでで『夏』の物語は終了です。
次話から時間が飛んで『秋』が始まります。
また、リアルの都合で1週間ほど更新が止まってしまうと思いますが、なるべく早く更新できるよう尽力します!