秋、始まります。
妖怪の山が紅く色付く季節。秋である。
お芋が美味しい季節。秋である。
「「きゅー!」」
ふんわりモフモフ。秋である。
すくすく秋姉妹。
秋の訪れと共に姿を現した、ほんのり甘い香りがするモフモフ。すくすくゆゆこがヨダレを垂らし噛み付こうとしているのを、すくすく妖夢が必死に止めている。
食欲の秋である。ほのぼの。
――――――
秋になって変化したのは、妖怪の山だけではない。
お店に並ぶ食材も秋の実りが多くなった。リンゴ、サツマイモ、栗、柿など、スイーツに使える食材も豊富だ。
こう並んでいるとみんな美味しそうに見えてしまうので、ついつい選ぶのに時間がかかってしまう。
「うむむ……どれにしようかな……なやむ……」
ここにも悩んでいる赤髪の女性が1人……って、ばんきさんじゃないですか。お久しぶりです。
ここ最近、お店にも来てくれてなかったし、買い出しにも付き合ってくれなかったし。
俺は寂しかったですよばんきさん。
「私は全然、寂しくなかったけどね」
俺は泣いちゃいますよばんきさん。
冗談はさておき、一人暮らしのばんきさんも、秋の幸を前に悩んでいるようなので、ここは秋のモフモフに頼るとしよう。
「きゅー」
すくすく穣子は豊穣のモフモフ。どの食材が一番美味しそうなのかを聞くには一番のすくすくである。
「…… きゅー!!」
すくすくが短い手足で指した方向にあるのは、サツマイモの詰め放題売り場。
よし、今日はすくすくみんなで焼きいもを作ろうか。すくすく咲夜が玄関前で落ち葉を集めていたので、それを使わせてもらおう。
「……ねぇ。私も行っていい? 久しぶりに、モフモフの私にも会いたいし」
もちろんウェルカム。
よかったら草の根の方々も呼びますか?
「…………」
すんごい睨まれた。何故ゆえ。
「きゅー…」
すくすくにはジト目を向けられた。何故ゆえ。
――――――
「ほぉー。店内、前よりお洒落になってる」
そうなんですよ。
今、めちゃめちゃお洒落なんですよ。
全ては紅葉のモフモフ、すくすく静葉が店内を秋っぽくコーディネートしてくれたおかげである。秋姉妹様々である。
すくすくゆうかりんが育てたお花も飾ってある。お花の美しさは幽香さんのお墨付き。流石本人のすくすくである。
さて、焼きいもでも下ごしらえは大切である。準備ができるまで、ばんきさんとすくすくたちは少し待っててくださいねー。
「ちょっとたんま。……これ」
そう言われ、ばんきさんに袋を手渡される。
中には真っ赤なリンゴがごろごろと入っていた。
「来る前に買っておいた。その……明日も来るから、それで美味しいもの作ってよ。私、楽しみにしてるから」
…………。
「……何よその顔。にやけてる。きもちわるい」
ばんきさんにチョップされた。
珍しく、痛くない攻撃だった。