「ここに小町は来ていませんか?」
そう言って来店したのは、緑髪の閻魔様。
まさかご本人がやってくるとは……。
部下探しの為とはいえ、閻魔様本人が動いても大丈夫なのだろうか。
「きゅー…」
すくすく小町が俺の足元に隠れながら震えている。
大丈夫、閻魔様が探してるのはモフモフの小町さんじゃないから。
隠れてないで、ほら。
ご挨拶ご挨拶。
「き、きゅー…」
「……いえ、私が探しているのはすくすくの小町では」
「! きゅー!!」
ズキュ―――ン!
怒られないとわかった瞬間に元気になるすくすく小町と、目を見開いたまま固まる閻魔様。
今の銃声はきっと、モフモフに心を撃ち抜かれた音。
「ま、まぁその、小町は今度厳しく叱ることにしましょう。私も今日は休日ですし、1日ぐらい羽を伸ばしても罰は当たりませんよね。うん、 閻魔の私が言うのだから間違いありません。だからですね?」
「きゅー?」
「……モフモフとカフェオレをお願いします」
オーダー入りました。いえーい。
――――――
でも、閻魔様がカフェオレとは意外ですね。白黒つけるって能力じゃありませんでしたっけ?
「の、能力と好みは関係ありません。 苦いものは苦手なんです」
ごもっともである。
ミルク多めにしておいて良かった。
「きゅーっ」
「……モフモフ………うちの
ブツブツとつぶやきながらすくすく小町をモフり続ける閻魔様。 モフモフがお気に召して何よりである。
オフと言うこともあり、閻魔様は服装こそいつもの服だが、帽子は外している。こうして見ると普通の女の子なんだなぁ。
閻魔様が喫茶店まで小町さんを捜しにきたのは、きっと小町さんが出入りしていることを知っているからだろう。
現に、小町さんはたまにやってくる。『サボりじゃないさ。 ちょっと長めの休憩だよ』とか言いながら。
今度来たらチャットでお伝えしよう。
そうだ。閻魔様初来店だし、少しサービスを出そう。
「きゅー!」
すくすく咲夜手作りのモンブランである。
短い手で器用に作るんですよこれが。
「もぐ……やはり、甘いものは白ですね」
「「きゅー!」」
フフっとにやけながらモンブランを食す閻魔様。やっぱり普通の女の子にしか見えない。
すくすくも美味しそうに食べている。俺も後で作ってもらおう、モンブラン。
……あれ。モフモフの鳴き声が1匹多い。
「あら、私のすくすくですね。丁度良い、モフモフの小町が怠けないよう、ちゃんと見ておいてくださいね」
「きゅー!」
「きゅー!?」ガーン
ショックを受けるすくすく小町。
閻魔様からは逃れられないらしい。
――――――
「ふぅ、ごちそうさまでした。ナナスケさん、そろそろお会計を」
かしこまりましたー。それにしても良い食べっぷりだった。モンブランも綺麗に完食してくれましたし、是非また来てください。
あ、頬にクリーム付いてますよ。
お手拭きどうぞ。
「ああ、これはどうも……」
パシャ! パシャパシャ!!
「え?」
突然響くシャッター音。
発音元は、喫茶店の窓から覗く2台のカメラ。
「『意外とお子ちゃま!? 頬にクリームの閻魔大王! 』 見出しは決まりですね。 これは売れますよぉー!」
「きゅー!」
前回の反省を生かし、すぐさまこの場を後にするパパラッチ烏天狗、文さん。
「……パ、パパラッチは黒ぉぉおお!!」
ドカーンと扉から出ていく閻魔様。
お会計まだなんですけど……。
「きゅー」
なお、すくすく文は逃げることなく、そのままうちに住み着いた。
赤い帽子に付いてる白いモフモフが気になるのか、ペシペシと叩いている。
烏だけど猫っぽい。
最後のシーンのすくすく文。
分かりにくかったら私のツイッターに絵が載ってるので、よかったらどうぞ。あんな感じです。