モフモフ幻想郷   作:アシスト

30 / 56
俺氏、先生になる。

 

 

 

『食欲の秋』

 

 

「この言葉の起源はいくつか存在するが、一般的なのは『実りの秋』と呼ばれるほど、秋には美味しい野菜や果物、魚が多く取れることにある」

 

 

ふむふむ。

 

 

「冬眠する動物は秋の間に食糧を集めるが、それは大昔の人間も同じだった。今でこそ人間は冬眠などしないが、寒い冬を越えるため、沢山の栄養を身体に蓄えようとする本能は、未だ人間に残っている」

 

 

ほほう。

 

 

「そしてその本能は『食欲』を増加させる。その上、秋には美味しいものが沢山ある。それらが組合わさって『食欲の秋』と言う言葉が誕生した……そんな一説がある」

 

 

いやー。慧音先生の授業は為になるなぁ。

 

 

「よし、座学はここまでだ。今からはナナスケ先生によるお料理の授業だぞ!」

 

『やったー!』

 

『きゅー!』

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

『寺子屋で料理実習を行いたいのだが、もしよければ手伝ってもらえないだろうか?』

 

 

 

そう慧音さんのお願いされたのが3日前。

 

即答で了承し、あれよこれよと準備していたら、あっという間に当日である。

 

 

「ほらみんな、ナナスケ先生に挨拶を」

 

『ナナスケせんせーよろしくおねがいします!』

 

 

しかし。まぁ。なんというか。その。

先生と呼ばれると背中がむず痒いな。

 

 

「「「きゅー!」」」

 

 

授業にはもちろん、すくすくたちにも手伝ってもらう。

 

ヘルプはすくすく咲夜とすくすくようむ、すくすくアリスの3匹。何故かすくすくチルノもついてきたが、味見役と言うことで。

 

ただ、人の手も借りたかったので、それは慧音とそのご友人にお願いすることに。

 

 

「よろしく頼むよ。ナナスケせんせい♪」

 

 

ニヤニヤの妹紅さんである。

うおおぁぁぁ背中が痒いよぉぉ。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

さて、先生になったとはいえやることは単純。みんなでレッツ・クッキングだ。

 

今日作るのはクッキーである。生地を作り、いろんな形のクッキーを作ろう。この日のために、すくすくにとりがいろんな型を作ってくれたのだ。

 

 

「みてみてけいねせんせー!」

 

「おお、綺麗にできたな。もしかして、すくすくの形か?」

 

「うん! すくすくかわいいもん!」

 

「きゅー!」

 

「ナナスケせんせー! ヒソウテンソクつくった! カッコいいだろー!」

 

 

おお、これが噂の。超カッコいい。

良いセンスだ少年。

 

 

「だろー! もっとたくさんつくるんだ!」

 

 

いやー…やっぱ子供は元気だなぁ。そうでなきゃね。

 

すくすくが子供たちから人気なのは言うまでもないが、俺もそれなりに好かれている。

 

寺子屋へはよくパンのお裾分けに行くしね。自然と仲良くなった。

 

 

「きゅー!」

 

「もふもふー! つめたーい!」

 

「わたしもさわりたいよー」

 

「こっちのモフモフもかわいー!」

 

「きゅー?」

 

 

 

でもやっぱり、すくすくの人気には勝てないね。見学してたすくすくチルノと緑色のすくすくがモフモフされている。

 

緑色のモフモフの正体はすくすく大ちゃん。寺子屋に来る途中に保護した。モフモフなサイドテールが特徴的なおとなしいすくすくだ。

 

2匹とも、子供たちのハートを鷲掴みである。

 

 

「お、すくすくに嫉妬かナナスケせんせい。じゃあ私がモフモフしてやろう」

 

 

……妹紅さん。俺の髪をモフモフしないでください。くせ毛が余計に乱れるッス。すくすくたちをモフモフしてやってください。

 

 

「私は昔飽きるほどモフッたからね。それに、子供たちの邪魔をしちゃいけないだろ?」

 

 

「きゅー!」

 

「きゃー! もふもふー!」

 

 

「な!」

 

 

だからって俺をモフらんでも…。

まぁ、いっか。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

さて。オーブンに入れたら、後は焼き上がるのを待つだけである。

 

オーブンも持ち運びできるものを持参した。すくすくにとり製である。

 

 

……すくすくにとりが過労で倒れないか心配である。

 

 

「きゅー」

 

 

焼く前にオーブンを開け、中からモフモフが出てきたときには、子供たちから謎の歓声が上がった。

 

すくすくもこたんですよ、妹紅さん。

 

 

「おおー! 私じゃないか! ひさしぶりだなー! 元気だったか?」

 

「きゅー!」

 

「おお、相変わらずだなー!」

 

 

まさかの知り合い。

不老不死は伊達じゃないようだ。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

焼き上がったらみんなで食べる。いつもなら食べたら終わりだか、慧音さん曰く『感想文を書くまでが授業』らしい。

 

クッキーは子供たちにも好評だった。やはり『初めて自分たちでつくった料理』は美味しく感じるのだろう。

 

 

『きゅー』

 

 

すくすくたちもお疲れ様である。今日は温泉でゆっくり疲れを取ってね。

 

 

慧音さんも、本日はありがとうございます。おかげで貴重な経験ができました。

 

 

「いや、元は私が頼んだことだ。こちらこそありがとう。また機会があったらお願いしても良いかな?」

 

 

ええ、喜んで。

 

 

「おいおいナナスケ。私にお礼の言葉はないのかー?」

 

 

……俺今日妹紅さんにモフられてばっかりだしなぁ。

 

まぁでも、手伝っていただいたことに関してはありがとうございます。

 

 

「素直じゃないなぁ、可愛いやつめ」

 

 

そう言って、また俺の髪をモフモフしてくる妹紅さん。だからやめてー。

 

 

『きゅー…!』

 

 

すくすくたちは羨ましそうな目で俺を見てくるし。

 

お前たち……俺はモフられも嬉しくないんだぞ……。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。