あと10分ほどで閉店となる頃。
俺はとても嫌な予感がしていた。
「ん? どうしたのナナスケ。珍しく難しい顔をしてる」
「きゅー?」
時間ギリギリまですくすくと戯れていたばんきさんにそう言われた。すくすくたちも不思議そうに首をかしげている。
うむむ……これは…… 万が一ってこともあるかもな……。
ごめんなさいばんきさん。今日はもう閉店にします。少し行きたい場所があるので。
「別にいいけど……行きたい場所ってどこ? と言うか、どうしたのホントに? 」
……実は今日ですね。
阿求さんが、来てないんですよ。
――――――
と言うわけで、成り行きでばんきさんも一緒に、稗田家の門をくぐりました。
「ゴホゴホッ……ありがとうございます……御見舞いに来ていただいて……」
「きゅー!」
「ああ……モフモフで冷たい……気持ちいいです……」
悪い予感的中である。
布団に横たわる風邪引き阿求さん。すくすくチルノを連れてきて良かった。しばらくおでこに乗っててね。
今まで阿求さんは、多少の体調不良ならマスクと冷えピタを装着してでも
そこまでして来てくれていた人が来ないのだから、よっぽどのことだろうと思ったが、案の定である。
「うぅ……くやしいです……私の皆勤賞が……」
「小学生か。 諦めて寝てなよ」
「くぅ……もふもふぅ……」
「きゅー」
ばんきさんに諭されて尚、身体を起こしてすくすくうどんげをモフモフする阿求さん。モフモフしてもらう為に連れてきたわけじゃないんだけどなぁ。
まぁ、ここは俺もばんきさんと同意見だ。今まで無理してきたツケがきたのだろうし。今はモフモフより体調の回復を優先させてください。
ばんきさんとすくすくは、阿求さんを見守っててください。俺は使用人さんに頼んで、調理場を借ります。
「いってらー」
「ヘックシュンッ!……何から何まですみません……もふもふ……」
「きゅー!」
……ばんきさん。阿求さんを寝かせといてください。
――――――
喫茶店ではスイーツとかランチしか作ってないが、それ以外の料理が作れないわけではない。
病人食の定番と言えばお粥だろう。材料は持って来てるし、お屋敷の調理場もなかなか立派だ。流石稗田のお屋敷、これなら作るのに時間はかからないだろう。
「きゅー」
作っている途中で、ズボンの裾を引っ張られる感触が。
引っ張っていたのは、赤い十字模様の入った青色の帽子を身に付けた銀色のモフモフ。
すくすくえーりん、ナイスタイミングの登場だ。手に持ってるのは薬かな。なんか……すごい色をしている。
「きゅーっ!」
えっ。お粥にこの薬をいれろと?
……モフモフを信じよう。
――――――
ただいま戻りましたー。お粥ですよー。
「コホッ、ありがとうございます!」
「…………」
あれ。なんだか阿求さん。
さっきより元気になってません?
「モフモフしてたら良くなってきました。 やはりすくすくさんは偉大ですね!」
「「きゅー!!」」
際ですか。
阿求さんのモフリストとしての成長は留まることを知らないようだ。まぁ元気そうならいっか。
「…………」
あれ。どしたんですかばんきさん。顔が赤いですよ。もしかして、阿求さんの風邪が?
「そうですねぇ。 蛮奇さんの病気は、私と同じものかもしれませんね!」
「!? ちょ、おまっ、阿求! さっきと言ってること違う!」
「ふふふ」
……なんだかすごく仲良くなってらっしゃる。 これが女同士の友情ってやつか。男が入る隙間はなさそうだ。
まぁ、ともかく、お粥をどうぞ。モフモフで元気になったとは言え、阿求さんはまだまだ病人です。栄養とって、たくさん寝て、しっかり治してくださいね。
キツそうなら食べさせましょうか?
病人は無理しちゃいけませんよ。
「あっ! それなら是非」
「私がやるからお前は寝てろォ!!」
ドゴォンと、腹に一発鈍い痛み。
ばんきさん……本気の腹パンは死ぬって……と言うか、何故ゆえ腹パン………ガクッ。
次回、ばんきっき回 。