やってしまった。
孤高を生きる妖怪。そんな座右の銘を掲げる私でも、退屈はつまらない。
久しぶりに影狼にでも会いに行こうかな、と思ったのが運の尽き。
なかなか見つからないから、頭と身体を分離させて探そうとしたのが悪かった。
離れすぎた……
動けぬ……うごご……。
こうなると私(頭) は何もできないので、私(身体)に見つけてもらうしかない。
助けを叫ぶにも、誰がしゃべる生首なんて助けるか。
私(頭)に出来るのはじっと待つこと。転がることも出来るが、気持ち悪くなるので却下。
私ー……早く見つけてー……。
…… お。足音が聞こえる。
向こうからかな。ダメもとで叫んでみようか?
ガサガサ
むむ?
「きゅー!」
ん?ちょ、何こいつ。
うわぁぁぁ……コロガサナイデー……
――――――
為す術なく転がされた。
許すまじモフモフ。
人間ももう少し早く助けろ。出かけたわ。女の子が悲鳴を上げたら速攻で助けろ。何故子猫を見るかのような目で眺めているんだ。まったく。
とは言え、助けて貰ったのに変わりはない。感謝のついでに身体を探してほしいと頼んだら、二つ返事で了承してくれた。
なかなか肝の据わった男。
名はナナスケと呼ぶらしい。
変わった名前だと言ったら「あだ名ですので」と返された。
舐めとんのか。本名を教えろ。
「それにばんきさんほどではない」とも言われた。それはぐうの音もでない。
身体探しの間、何故か私の頭はモフモフの上に置かれた。
なかなか心地よいモフモフ感。
さっきのは許してやろう。
聞くとこのモフモフ、すくすくと呼ばれる生物らしい。この子は私を模してるから、すくすくばんきっきと呼ぶのだとか。
え?なんで私のあだ名知ってるの?
――――――
そんなこんなしている内に、私の身体を発見。
「きゅー!」
が、身体も弄ばれていた様子。おのれモフモフ。
その顔はかわいいが、私の身体には似合わない。
と言うかあのもふもふ、影狼に似てない?おのれ影狼、すくすくの姿でも私をからかいやがって。
すくすく影狼を退かしてもらい、頭と身体をドッキングしてもらう。ブッピガン。
私は孤高を生きる妖怪。借りは作らない。
何か礼をしたいと言ったら、霧の湖を目指していることを話してくれた。
いやアンタ、湖のある方向から歩いてきたよね。
それを伝えると、少し考える素振りを見せて
「……まぁ、そんなこともある」だって。
モフモフたちから白い目で見られてた。
この人間、大丈夫だろうか。
霧の湖と言えば姫のいる所だ。
明日案内してあげよう。
――――――
この人間、大丈夫ではなかった。
目を離したらどっか行く。
見てらんないレベルの方向音痴っぷり。
モフモフも不安でキューキュー鳴いていた。可哀想に。
仕方ないので強行手段。手をつなぐ。
こうでもしないと真っ直ぐ歩いてくれないのだから質が悪い。お前は子どもか。
「きゅー!」
私のモフモフも同意見の様子。
さすが私。
ナナスケを人里に送った後、帰路の途中で思い出したことがある。影狼たちと連絡を取れる手段があることを。
最近、妖怪の賢者が「すまーほ」なる機器を幻想郷中に配布している。
当然、私も貰った。最初からこれを使って連絡を取ればよかった。
……あれ、メッセージが届いてる。
――― GSチャット・くさのねグループ―――
@いまいずみん
>ばんきっきィ……
>私、見ちゃったよ……
@ばんきっき
>え?
>なにを?
@いまいずみん
>ばんきっきが男と手を繋いで
>森のなかを歩いてるところ
@ばんきっき
>!?
@いまいずみん
>しかも楽しそうだったわ!
>もしかして、今夜はおせきはん!?
@ばんきっき
>違うわ!
@プリンセス・ワカサギ
>かげろーちゃん!
>その話、もっと詳しく!
@ばんきっき
>やめろォー!
――――――
まったくもう。
今日は災難な1日だ。
独自設定用語
『すまーほ』
紫が幻想郷で流行らせたGSチャット専用端末。菫子のスマホを元に、にとりに徹夜で作らせた。