モフモフ幻想郷   作:アシスト

44 / 56
俺氏、サボる。

 

 

 

「「きゅー!」」

 

 

片手にスコップ、胴体にすくすくアリス作マフラーを巻いて、準備万端のすくすくめーりんとすくすくあうん。

 

 

「ナナスケ、これが私の『終わったら温かいココアが飲みたい』の表情だ。 覚えとけ!」

 

 

昨日から泊まり込みでバイトに来てくれた、防寒着着用の無表情こころちゃん。

 

今日はみんなで一緒に、朝から雪かきである。

 

 

昨夜の吹雪は、それはもうすごかった。門番隊を避難させてなければ、今頃雪の下でモフモフに凍っていただろう。

 

今日は通常営業日。最低限、お客さんが通れる道は確保しなければ。よし、がんばるぞ皆

 

 

「『まかせろ!』の表情!」

 

「「きゅーっ!!」」

 

 

俺の合間と共に、各々スコップで雪を掻き分け始める。雪って結構重いから、ギックリ腰に注意しないとな。

 

そう意識しながら、ザクッと。スコップで雪をすくう。

 

 

「き、きゅー……」

 

 

発掘、雪まみれのモフモフ。

 

 

裏庭に急がねば。

 

 

 

――――――

 

 

 

裏庭にある温泉は、常時適温に保たれている。

理由は知らんが、今は好都合。

 

 

「きゅー……」

 

 

生き返るー…と言わんばかりに、気持ち良さそうな声で鳴くモフモフ。

 

見た目はお地蔵さん。いつから喫茶店の前にいたのだろうか。偶然とはいえ、発掘できてよかった。なむなみ。

 

 

「ナナスケナナスケ。 このモフモフは私に任せて、お前は存分に雪かきに専念すると良い」

 

 

……こころちゃん、雪かきサボりたいんでしょ。

 

 

「『何故バレた……!?』の表情」

 

 

口ではそう言いながらも、こころちゃんはポーカーフェイスを崩さない。

 

こころちゃんの表情筋は、俺以上に仕事をしたくないようだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

いろいろあったが、無事に雪かきは完了。

 

手伝ってくれたすくすくとこころちゃんにココアとホットケーキをご馳走した後、営業開始である。

 

 

「よっ。遊びに来たぜー」

 

 

開店して程なく、魔理沙さんが来店。

 

今日は一人ですか?

 

 

「いや、連れがいる。こっちだぜ香霖!」

 

「雪道を走るのは危ないよ魔理沙。 楽しみなのはわかるが、こうゆう時こそ心に余裕を持ち、風景を満喫しながら歩くことが」

 

「悪いなナナスケ。香霖は見ての通り面倒くさい奴なんだ。多目に見てくれ」

 

 

面倒くさい……のは知らないが、香霖さんが話の長い良い人なのは知ってるよ。

 

とりあえず、ここでは寒いので席に案内しよう。2名様入りまーす。

 

 

 

――――――

 

 

 

 

香霖堂には、喫茶店を始める前。家具や資材を買うために何度か訪れたことがある。その節は大変お世話になりました。

 

 

「構わないよ、ナナスケくんが元気そうで何よりだ。それにしても、あの頃に比べて……」

 

 

「きゅー?」「きゅ」「きゅー!」

「きゅー」「きゅーっ!」「きゅー」

「むきゅ?」「きゅー」「きゅー!」

 

 

「……随分増えたね」

 

「店名に偽りなしだぜ」

 

 

そうなんですよー。あの頃は10匹ぐらいだったのに、今ではもう喫茶店がモフモフ状態で。

 

警戒心が強いなんてどこで呟かれたデマなのか。すくすくたちは『遊んで遊んでー!』と言わんばかりに、いろんなお客さんの元へ向かっていくし。

 

現に魔理沙さんと霖之助さんにも、すくすくが数匹くっついて『きゅー』と鳴いている。なんとも和やかな光景だろう。

 

 

「香霖もたまにはモフモフに癒された方が良い。本ばっか読んでちゃ身体に悪いぜ」

 

「ふむ……ここには沢山いるが、すくすくは希少な存在だと文献で読んだことがある。戯れるのも貴重な経験になるかもしれないね」モフモフ

 

「きゅーっ!」

 

「もっと純粋に楽しめよ……ところでナナスケ」

 

 

どしたの魔理沙さん。もぐもぐ。

 

 

「当たり前のようにこたつに入ってみかん食べてるけど、仕事は?」

 

 

それに関しては心配ない。雪かきしたとはいえ、道が悪いせいでお客さんも少ないし。

 

なにより、今日は優秀なバイトがいる。

 

 

「こちら、ご注文の品だ! 熱々のうちに食べると良い!」

 

「きゅー!」

 

 

丁度良いタイミングで、こころちゃんとすくすくこころが料理を持ってきてくれた。

 

2人が注文したのは焼きたてあんパン。正確には、試行に試行を重ねたあんパンVer4.5である。

 

あんパンは常に進化し続ける。

ささ、召し上がってください。

 

 

「もぐ……ほう。以前より甘さは控えめになっているが、深い味わいになっているね。パンとアンコのバランスも絶妙だ。これは良い」

 

 

流石は霖之助さん。味の違いがわかる男だ。

お褒め頂き光栄であります。

 

 

「……私には前との違いがわからんぜ。美味しいけどな」

 

「『そんなことよりナナスケ働け』の表情」ジトー

 

「きゅー…」ジトー

 

 

よし。こころちゃんとすくすくの視線が痛いので、そろそろサボるのはやめにしよう。

 

非常に名残惜しいが、こたつから出よう。さらば、ぬくぬくでもふもふ…。

 

 

……ん? もふもふ?

 

 

「きゅー?」「きゅ!」

 

 

こたつの中を覗いてみると、初見のモフモフが2匹、親子のようにくつろいでいた。

 

すくすくこーりんと、朱鷺色のすくすく。

 

こたつから出てくると、2匹はこたつ机の上で黙々と本を読み始める。

 

 

……撫でたいけど、そっとしておこう。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。