あ け お め 。
かれこれ5分前ぐらいに新年が始まりました。めでたい。
すくすくたちは殆ど眠っている。年が明ける瞬間まで起きていようとがんばっていたモフモフもいたが、眠気には勝てなかった模様。
俺も寝正月にしようかなぁ。すくすくを見てたら眠くなってきた。
「きゅーっ!!」グイグイ
あ、でも一匹だけ元気に起きてるモフモフがいた。
すくすく早苗である。尻尾をフリフリしてすごい引っ張ってくる。初詣に行きたいのかな。
そう思っていると、戸締まりしたはずの玄関からガチャリと音が聞こえた。
いつもの赤マントではなく、赤いマフラーを身に付けての登場。店内が暖かいせいか、ほのかに頬も赤い。
「……初詣、行こ?」
――――――
「きゅー♪」
「きゅー♪」
「コイツが方向音痴なの忘れてたわ……でも……うん……」
すくすく早苗と、道中で遭遇した灰色のモフモフを両肩に乗せ、ばんきさんに手を引かれてやって来たのは、守矢神社である。
妖怪の山にある神社だが、初詣客でかなり賑わっている。中には、尻尾や羽が付いた人たちも混じっている。天狗さんかな。
「あやや! 明けましておめでとうございます! デートですか!?」パシャパシャ
ここで遭遇したのは文さんことパパラッチ。
斬っちゃえ灰モフ。
「きゅー!」スパーン
「あ、ああやややややぁ――っ!? 私のフェイバリットカメラぁー!?」
綺麗にカメラを真っ二つ。
灰モフの鉈さばきは一級品なのだ。
まったく。ばんきさんはその手のネタが嫌いだというのを知らないのかパパラッチめ。 被害を受けるのは俺の方なんだぞ。
「……いや……デートでも間違いじゃ……でも新聞に載るのは恥ずいな……」
? どうしましたばんきさん。
「な、なんでもない。 お参りしよ、お参り」
ばんきさんに手を引かれ、新年初泣きしている文さんの横を通り過ぎる。
たどり着いたのは、賽銭箱と大きな鈴がある守矢神社の真正面。ここが一番お客さんが集中してるな。
「あ! 明けましておめでとうございますナナスケさん! ろくろ首さんも! デートですか!?」
さっそくデジャウ。でも悪意は感じない。灰モフ、鉈を構えちゃダメだぞ。
文さんと同じことを聞いてきたのは、小さめの木箱を抱えた早苗ちゃん。妙に顔が赤く見える。
「忙しいけど、私今とっても楽しい気分なんです! そうだ! お2人もこちらを引いていってください! 奇跡のおみくじです!」
そう言って、早苗ちゃんは持っていた木箱を俺たちの前に差し出す。おみくじだったのねそれ。
でも、奇跡のおみくじとは?
「誰が引いても大吉が出るおみくじです! 新年からハッピーな気持ちになれますよ! 」
「……それ、大吉しか入ってないんじゃ」
「 奇 跡 で す !」
奇跡なら仕方ない。
ばんきさん、取り敢えず引いてみましょう。
木箱から適当に引き、くじを開く俺たち。
先ず目に飛び込んできたのは、デカデカと手書きで書かれたような大吉の2文字。奇跡ってすごい。
仕事運、金運など。大吉だけあって良いことが書かれている。でも恋愛運に『ラブラブビッグバン』って書いてあるのだけ、良い事なのか悪い事なのかわからない。ビッグバンて。
ばんきさんはどうでした?
「大吉。……えっとね、近いうちにビッグバンが起こるかも、だって」
終末じゃないですか。
大吉の内容じゃないですよ。
「……にぶちん」ベシッ
「きゅー!」ベシッ
背中を叩かれた。灰モフにも。何故ゆえ。
背中の痛みを我慢していると、肩に乗ってたすくすく早苗が、早苗ちゃんの頭に飛び乗る。
「……もしかして、お手伝いしてくれるんですか?」
「きゅー!」
「やったぁ!ありがとうございますモフモフさん!」
「「「きゅーっ!」」」
「わわわっ! 増えました! って、神奈子様に諏訪子様ではありませんか! 今年はモフモフの姿で信仰を集めるのれすね!」
それただのすくすくです早苗ちゃん。
と言うかこの娘、酔っぱらってない?
「ごめんねー。早苗ったらコップ1杯でテンション上がっちゃってさー」
「あの
あ、神様お二人。お久しぶりです。
今日は珍しく威圧感がありますね。
「堅苦しいのは苦手だが、たまには威厳ある姿を見せないとな。集まるものと集まらん」
「それじゃ私たちはこの辺で。デートの邪魔しちゃ悪いからね!」
だからデートではわわわわっ。
ちょ、ばんきさん、何で無言でひっぱるのー……
「……初々しいな。実に」
「青春だねぇ」