「きゅー!」
新年を迎えても、喫茶店は通常営業である。今日も1日かんばるぞい。
まぁ年明け早々だし、お客さんは少ないと思うけどね。こればっかりは仕方ないが、開店しなきゃお客さんは入らないのだ。
すくすくたちも、いつまでも正月ボケしてちゃいけないぞ。
「きゅー?」
むっ? どうしたすくすくチルノ。
俺の背中に何か付いてる?
すくすくチルノ以外のモフモフも、首をかしげながら俺の背中を不思議そうに眺めている。特に何か付いてるような違和感はないけど……。
「あけおめだぜー。お年玉を貰いに来たぜ」
あっ、魔理沙さん良いところに。お年玉あげる前に、ちょっと俺の背中見てもらえません?
「 背中? ……おっ、扉が付いてるな」
何それこわい。
「きゅー」ガチャ
「おおっ、扉からモフモフが出てきたぞ」
何それかわいい。
「……このモフモフがお年玉代わりでもいいんだぜ?」
「きゅー?」
それはダメ。
――――――
「きゅー!」
俺の背中から出てきた黄色いモフモフ。今は魔理沙さんにモフモフされながらみかんを食べている。
魔理沙さん曰く、比較的最近異変を起こした人物のすくすくらしい。すくすく舞とすくすく里乃と仲良さげである。
背中の扉もこのモフモフの能力なんだとか。不思議な能力だなぁ。
それはさておき。はいこれお年玉。
無駄遣いしちゃダメだぞー。
「サンキュー!ここを待ち合わせ場所にした甲斐があったぜ」
待ち合わせ?
「まあな。お年玉をもう2つか3つ用意しておいた方が良いぜ。こんな時期でも、参拝客がほとんどいないらしいからな」
「お邪魔するわ」
「きゅー」
「おっ、噂をすれば。こっちだぜ霊夢ー」
暖かそうなモフモフを抱いてを来店してきたのは、博麗神社の素敵な巫女さん。早苗さんのときも思ったが、どうして幻想郷の巫女さんは真冬でもヘソ出しファッションなのか。
モフモフはミニチュアお賽銭箱を抱えてきゅー!と鳴いている。間違いなく、霊夢さんのすくすくだ。
「霊夢、どうしたんだそのモフモフ」
「今朝、お賽銭箱開けたらいたのよ」
「きゅー!」
「ほぅ。で、肝心のお賽銭は?」
「……ナナスケさん、ツケでお願いします」
「きゅぅー……」
死んだ魚のような目をする霊夢さんと、しょんぼり顔のすくすく霊夢。
博麗神社はなかなかの経営難のようだ。お年玉と甘いもの持ってくるから、ちょっと待っててね。
――――――
「あー……あったかくて甘いぜー……」
「ほんとねー……ナナスケさんおかわりー……」
『きゅー!』
すくすくたちがついてくれた餅入りのぜんざい。気に入って貰えてすくすくたちも嬉しそうである。
こたつで伸び伸びとダラダラしている霊夢さんと魔理沙さん。
魔理沙さんはともかく、霊夢さんの帰る気ゼロのだらけっぷりを見るに、本当に参拝客が来ないんだろうなぁ博麗神社。
「……ん、ナナスケさん。そこに何かいるわ」
「きゅ!」
そう思っていると、霊夢さんはそう言って、こたつ机の隅を指先す。すくすく霊夢も『何かいる!』と言わんばかりに短い手でその場所を指している。
しかし、俺には何もないように見える。霊夢さん、もしかして霊的なもの見てます?
「違うわよ。私だって何も見えないけど、私の勘が『何かいる』って言ってるわ。行きなさいモフモフ」
「きゅー!」
霊夢さんに言われるがままに、すくすく霊夢は何もない場所に向かって体当たり。
そのまま勢い良くこたつ机から落下……することはなく、ポフーンと何かモフモフにぶつかる音が響いた。
「「「きゅーっ!?」」」
何もなかった筈の場所から現れたのは、3匹のモフモフ。
光のすくすく三妖精だ。どうやらこたつの上のみかんをこっそり盗もうとしていたようだ。
そんなことしなくても、ほら。
みんなで分け合うんだぞ。
「「「きゅー!」」」
3匹が協力してみかんの皮を剥いているのを応援しながら眺めていると、霊夢さんが思い出したように口を開く。
「そうだナナスケさん。次の立春の日、
「おお、そりゃ良いな。ナナスケなら酒の肴も期待できそうだ」
宴会かぁ……そう言えば、まだ1度も参加したことなかったっけ。
『きゅー…!』
宴会と聞いて、すくすくたちの目が輝く。『楽しそー!』『行ってみたいねー!』的な感じですくすく同士きゅーきゅー鳴き合っている。
……ふむ。近いうちにお願いしておくか。
モフモフ幻想郷も残すところ後2話となりましたが、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。