モフモフ幻想郷   作:アシスト

55 / 56
俺たち、宴会へ。

 

 

 

――― GSチャット ―――

 

 

@七生透

>そんなわけで、すくすくたちの方を

>よろしくお願いします。

 

@ゆかりん(14)

>よろしくお願いされたわ。

>でも、貴方は良いの?

 

@七生透

>俺は大丈夫です。

>1人じゃありませんから。

 

 

――――――

 

 

 

時が経つのは早いもので、あっという間に立春を迎えた。

 

立春とは、暦上で春が始まる日。また、冬の寒さが和らぎ始める日のことである。

 

和らぎ始めると言うことはつまり、今はまだとても寒く、春にはほど遠い気候だと言うことだ。

 

 

「き、きゅー……!」

 

 

そんな中、すくすくリリーが寒さに負けずにやってきました。春告精も大変である。暖かい店内にお入りー。

 

 

 

――――――

 

 

 

そんなわけで、今日はみんな大好き宴会の日。水ようかんの準備も万端である。

 

今日の宴会は博麗神社にて行われる。博麗神社には、俺が幻想入りして間もない頃、1度だけ紫さんにスキマで連れていってもらったことがある。人里からだとかなり距離があるらしい。

 

 

つまり、俺は博麗神社までの道のりを知らないのだ。

 

ここまで言えば、わかりますよね?

 

 

「……うん。一緒に行こ」

 

 

お願いします。

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「そう言えばさ。チャットの名前、あれって本名なの?」

 

「きゅー?」

 

 

 

博麗神社への道中、黄色いモフモフを頭に乗せたばんきさんがそう聞いてきた。

 

そうですよー。七生 透、俺の本名です。

ナナスケは中学時代からのあだ名ですので。

 

 

「……そうなんだ」

 

「きゅー!」

 

 

俺が答えると、ばんきさんは少しだけ顔を赤くして、何か考えるように黙り込む。

 

対して黄色いモフモフは、そうなのかー!と言わんばかりに元気よく鳴いてくれた。

 

言わずともがな、すくすくルーミアである。頭のリボンを取ったらどうなるのか、気になるところである。

 

 

「……ねぇ」

 

 

ん?

 

 

「私はアンタをあだ名で呼んでて、アンタは私のことを名前で呼んでるよね」

 

 

まぁ、そうですね。

 

 

「……私も、名前で呼んで良い?」

 

 

……。

 

 

繋いでいた手は、不思議と指が絡まっていった。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

「いらっしゃいナナスケさん! 素敵なお賽銭箱はあっちよ! 覚えといてね!」

 

 

博麗神社に到着して早々、霊夢さんがグイグイくる。参拝しにきたわけではないけど、小銭を用意しておこう。

 

俺とばんきさんが到着した頃には、多くの人妖の方々が揃っていた。思っていた以上に長い道のりだったから、その分時間もかかったみたいだ。

 

紅魔館、守矢神社、命蓮寺、永遠亭の方々などなど。宴会参加者に知らない人はいなさそう。と言うか常連さんしかいない。幻想郷は広いようで狭いなぁ。

 

 

「ばんきちゃーん! こっちー!」

 

 

遠くの方でばんきさんを呼びながら手を振る影が2つ。草の根の方々だ。

 

名残惜しいが仕方なく、繋いでいた手を離したところで、ばんきさんが呟く。

 

 

「……また、後でね」

 

 

うん。また後で。

 

 

 

 

「霊夢ー。ナナスケたちも来たし、そろそろ乾杯しようぜー」

 

「そうね、面子も大体揃ってるし。じゃあ乾杯の音頭を私から」

 

「まだダメよ霊夢」

 

 

霊夢さんがビールジョッキを片手に立ち上がろうとしたところで、スキマから現れた紫さんに止められる。

 

 

「何でよ紫」

 

「だって、まだ半分も揃ってないもの」

 

「……?」

 

 

そんな馬鹿な……と言いたげな顔で宴会場を見渡す霊夢さんを他所に、紫さんはパチンと指を鳴らす。

 

その瞬間、宴会場の上空に巨大なスキマが開かれた。

 

 

 

「きゅー」

 

『きゅーっ!』

 

 

 

すくすく紫を先頭にスキマから出てきたのは、100を超えるモフモフの大群。

 

俺が紫さんに頼んでおいたのだ。すくすくたちも宴会に参加させてほしいって。

 

全員を引き連れて博麗神社まで歩くのは少し無理があったからね。こうやって連れてきてもらったのだ。ありがとうございます紫さん。

 

 

 

「きゅー」「きゅー!」

「きゅ?」「きゅー」「きゅーっ!」

 

「宴会でもモフモフできるなんてっ……!」モフモフ

 

「ホントに好きだね阿求は」ナデナデ

 

「きゅー♪」

 

 

幸せそうにモフモフ四天王をモフモフする阿求さんと、それを眺めながら自分のすくすくを撫でる小鈴ちゃん。

 

 

 

「「きゅ!」」

 

「ふっ。このレミリア・スカーレットが飲み比べでモフモフに負けるとでも?」

 

「お嬢様。そのすくすく、鬼です」

 

「えっ」

 

 

すくすく萃香とすくすく勇儀に死亡フラグを建てるレミちゃん。

 

 

 

「どの子もとっても『良いモフ』ですね。」

 

「ええ。私も永く生きてきたけれど、今日が一番の『良いモフ』だわ」

 

「この『良いモフ』との出会いに感謝を。ありがとうナナスケさん。……おやおや、おめでとうございます」

 

「きゅー!」

 

 

何故かモフモフソムリエの3人に頭を下げられる俺。でもさとりさん、勝手に心を読まないでください。照れる。

 

 

 

単純な数だけなら倍以上に増えた宴会場は、まだ始まってもないのにとても賑やか。

 

すくすくリバーWithHとすくすく二楽坊、さらには本家の方々の演奏が交わり、宴会というよりお祭りに近い状態に。

 

 

「おおう……宴会がモフモフに乗っ取られそうだぜ……」

 

「きゅー?」

 

「……まぁ、これはこれでありね。ナナスケさん、どうせだから私の代わり音頭よろしく」

 

「きゅー!」

 

 

モフモフまみれの霊夢さんに重大な役を任される。

 

そういう役をやったことは殆どないが、無理言ってすくすくを連れてきた責任もある。ここは潔く引き受けよう。

 

 

えー、本日もお日柄良く……

 

 

「きゅー」

 

 

音頭の出だしを話始めたところで、1匹のすくすくに遮られる。

 

ベレー帽のような緑色の帽子を被り、眼鏡を掛けたモフモフ。ビールジョッキを片手に持ち、早く飲みたそうにきゅー、と鳴いている。

 

 

……このすくすくを待たせちゃいけないね。

うん、シンプルに行こう。

 

 

 

乾杯!

 

 

『乾杯!』

 

 

『きゅーっ!』

 

 

 

 

 

 

――― モフモフ幻想郷 おしまい ―――

 

 

 

 

 

 

 

 





以上をもって『モフモフ幻想郷』本編の完結です。ここまで読んで下さった読者の皆様方、本当にありがとうございました!

私の活動報告ページにあとがきを書いたので、興味のある方はどうぞ。ではまた会える日まで。




あ、1話だけ超ラブコメなおまけを書きます。
クリスマスの裏側の話です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。